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厨二の最前線「デッドマウントデスプレイ」

現在放映中のアニメの中で、ちょっと気になってるのがひとつ。
それが「デッドマウントデスプレイ」だ。
注目ポイントは、原作が成田良悟であること。
成田さんといえば、「デュラララ」や「バッカーノ」など、群像劇の良作で知られる作家である。
今回もまた群像劇だろうな~と思って見たら、案の定そうだった。
「デュラララ」は池袋が舞台だったが、今回は新宿が舞台。
で、主人公は異世界から転生してきたネクロマンサーらしい。
「デュラララ」はデュラハン、「バッカーノ」は不死者が主人公だったことを思うと、成田さんは本当に人外を主人公に据えるのが好きなんだね。

「デュラララ」は主人公に顔がない設定。顔がないのに、なぜか可愛く感じてしまうのが不思議
「バッカーノ」には明確な主人公が設定されず、時系列もシャッフルされていて難解だが面白い!

彼の作品は群像劇スタイルゆえ、とにかく登場人物が多い。
だからボーっと見てると確実についていけなくなるので、とりあえず初見は登場人物の顔と名前を徹底して頭に叩き込むことに集中すべし。
できれば、メモをとりながら見た方がいいほどだ。
初見で登場人物の概要を大まかに掴んだら、2回目の視聴で次はストーリーを吟味すべし。
多分、1回見ただけで全部把握できるほどヌルい脚本を成田さんは作らないからね。
「そんなのメンドくさい」という人は、見る資格がないので離脱をお勧めします。
そもそも群像劇というのは複雑でナンボのものであり、あちこちに分散していた事象が物語の進行と共に徐々に集約されていき、最後には点と点が全部繋がり、ようやくひとつの大きな塊となるという脚本の巧妙さこそが醍醐味じゃないか。
だから、最初のうちは物語の全容が見えてこなくて当然。
「デッドマウントデスプレイ」はまだ脚本が「分散」の段階でしかなく、「集約」はずっと先が長そうだな。
おそらく「デュラララ」並みに長くなりそうな予感。
私は、ある程度の忍耐を覚悟して、今後も視聴継続の予定である。

「デッドマウントデスプレイ」ヒロインのミサキ。まさか水瀬いのりが猟奇的な役をやるとは

ラノベにおける群像劇の古典といえば、1998年に出た「ブギーポップは笑わない」が挙げられるだろう。
これは、今に至るラノベの潮流を決定づけた、エポックメイキング的作品とされている。
この作品が後にあらゆる作家に影響を与えたとされ、たとえばそういう作家が時雨沢恵一(キノの旅)や奈須きのこ(Fate)や西尾維新(化物語)だったりするわけよ。
成田良悟もまた、そういう「ブギーポップ」の系譜にいる作家のひとりである。

「ブギーポップは笑わない」上遠野浩平

「ブギーポップ」は今まで2度もアニメ化された有名な作品ゆえ、見てる人は多いと思う。
しかし、もしも見てない人がいるならば、やっぱり押さえておくべき古典として見ておいた方がいいだろう。
いわゆる「厨二」の原点で、セカイ系の原点でもあるかもしれない。
ラノベ界では「ブギーポップ以前、ブギーポップ以降」という区切りがあるそうだ。
おそらく成田良悟は、当時流行っていた「ブギーポップ」と「池袋ウェストゲートパーク」をMIXするアイデアで「デュラララ」を書いたんだと思うよ。
彼は作家性で勝負するシンガーソングライター型ではなく、サンプリングを得意とするDJ型なのかもしれない。
で、今度は「デュラララ」を叩き台にして、そこに今流行の異世界物の要素をサンプリングして「デッドマウントデスプレイ」を作った感じだ。
流行に敏感な人なんだろう。
今回は池袋から新宿に舞台を移したせいか、猟奇性は格段にアップしている。

胴体真っ二つに切断されるヒロイン

成田良悟は奈須きのこと仲が良いとされており、なるほど「デッドマウントデスプレイ」はTYPE-MOONの「空の境界」や「月姫」の世界観に少し似てるわ。

「空の境界」奈須きのこ

奈須きのこも成田良悟も「ブギーポップ」上遠野浩平の影響下にあるとして、ならば上遠野先生は誰の作品に影響を受けているのか。
それは、荒木飛呂彦先生らしい。
そうか。
ルーツのルーツまで辿っていけば、最後は「ジョジョ」に行き着くのか。

さすがは少年ジャンプ、侮れませんな・・

誰しもが通る道だと思うけど、たとえば中学生の時に初めて洋楽にハマって、その好きなバンドの音楽性が一体誰の影響を受けてるかを調べていくのって楽しくなかった?
そういうルーツのルーツまで辿っていき、みんな意外と60~70年代音楽にまで到達したりしてさ。
こういうのが、私にとってオタク道の第一歩だったと思う。
だから今でもアニメを見てると、ついつい作家のルーツを考えてしまうね。
「デッドマウントデスプレイ」ではヒロイン・ミサキが吸血鬼化をしたのを見て、これは「BLOOD」シリーズの影響も少し感じたわ。

「BLOOD」主人公の小夜
この作品は押井、神山、黄瀬ら「攻殻」スタッフが絡んだ名作
「BLOOD-C」主人公の小夜
なぜかCLAMPが絡み、劇場版では「xxxHOLiC」の四月一日君が出てきて小夜をサポートした

「BLOOD」を見たクエンティンタランティーノが感銘を受け、小夜のキャラを「キルビル」で栗山千明が演じた役の原型にしたのは有名な話。
やっぱ制服着た女子高生が猟奇的に人を殺す姿って、なんかクルよね。
で、「BLOOD」シリーズ最新作「BLOOD-C」では小夜がメガネ女子になってて、これがきっと「デッドマウントデスプレイ」ヒロインの元ネタだと思う。
メガネ+制服+吸血鬼という三要素が同一だもん。
とにかく、成田良悟はサンプリングが上手いDJ型の作家であり、きっと色々な作品からおいしいところをピックアップしてるんだよ。
こういうのは、パクリではない。
サンプリングである。
おいしいとこ取りという意味では、「デッドマウントデスプレイ」は令和における厨二の集大成ワールド、および最新バージョンといえるのかもね。
見て損はない作品だが、ただ物語の全体像が見えるまでまだまだ先が遠そうなので、そこまで視聴者がついてこれるかといえば、それはきついだろうなぁ・・。

厨二ワールドは、どうしても構図が似てきちゃうよね・・


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