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【Yocco 診療所】#5|貧血治療 Vol.④|鉄欠乏性貧血の改善方法・実践編|漢方の選び方と養生の実践

こんにちは!
Yocco診療所シリーズ、引き続き貧血治療について書いていきます。よ〜〜〜やく実践編です!

これまでの内容はこちら。続き物なので、まだの方は是非お読みください。↓


今回の目次です✏️


◆ 背景


(前回は私の貧血の履歴と、鉄剤の成分について書きました。その記事の続きです)
再び鉄欠乏性貧血の治療をスタートすることになったとき、今度は鉄剤の摂取ではなく、何か別の改善方法はないか模索しました。理由はこれまでの記事でも書きましたが、ひとつは鉄剤にも一般の薬と同じように様々な化学物質や添加物が入っているので出来れば避けたいということ、そしてもうひとつは飲んで止めての繰り返しで、どうも根本的な解決になっていないような気がしたからです。さらに、私は鉄剤による副作用はあまり出なかったのですが、吐き気や鉄の急な過剰摂取による副作用が出るケースが実際にはとても多いことから、鉄剤の摂取ではない別の方法があっていいはず、と思っていました。そこでまず、漢方はどうだろうと思い調べてみました。

その後、偶然にも私にとても合った漢方薬局に出会うことが出来ました(後半でご紹介します)。

長年「1日1食+気が向いたら間食」という食生活を送っていた私。知らず知らずに貧血症状が強くなっていった経緯、鉄剤で治療したときの様子など、私の貧血の履歴は前回の記事をお読みいただければと思います。



◆ 現代医療と漢方医学の貧血原因の見解の違い


実践内容を書く前に、私がこれまで貧血治療のために診察を受けた病院(クリニック)と、今通っている漢方薬局の見解の違いがとても面白く、興味深いものだったので、書き留めておきたいと思います。


これまでの記事で書いてきたように、私はいわゆる一般の病院で、血液検査や内臓検査を行い、最終的に鉄欠乏性貧血だろうということで、鉄錠剤を飲んで治療することになりました。検査結果を元に医師と色々と話し、私の貧血の原因は「長年の栄養不足によるもの」という見解を得ました。これについてはこれまでの記事で書いた通り「出ていく鉄量に対して摂取が足りていない」というロジックから導き出されたものになります。鉄錠剤の処方を貰ったとき、私は正直に「鉄剤は添加物など色々入っているので、漢方での治療はどうでしょう?」と聞いてみたところ「漢方はダメ。漢方といっても色々入っているし、それにここまでヘモグロビンもフェリチンも低いと漢方では間に合わない」ということでした。貧血治療で出会った3つの病院に行くたびに「あのぉ〜〜〜漢方と食事改善で治すのはどうでしょう?」と聞いてみたのですが、医師は全員同じ上記の回答でした。現代医療の視点から「鉄欠乏性貧血を治療する」ことを考えると、これは当然の見解だと私も思います。

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一方、今通っている漢方薬局では、私の今の状態は「消化管、特に胃の筋肉が弱っていると考えられる」という見解でした。胃は平滑筋という筋肉で出来ているのですが、その筋力が長年に渡り十分に使われていなかったため、弱っている(筋力がなくなっている)状態と捉える、ということでした。なのでその筋肉を徐々に鍛えていくことで、弱った胃や他の消化管を元気な状態(本来の状態)に戻していくと良いと教えて貰いました。そうすることにより、貧血(血流)状態も自ずと変化し改善へと向かい、体全体も本来の力を発揮する状態へ戻っていくというわけです。
「胃の筋肉」ー この見解には私も本当に目から鱗でした。そして同時に、内蔵たちが筋肉をわっしわっしと動かしている様子がビジュアル的にとてもよくイメージ出来ました。


胃の蠕動運動は、この平滑筋があるからこそ行われます。腸も同じです。筋肉というのは使わないとどんどんなくなります。これは私自身、長年アスリートをしていたので、めちゃくちゃ身をもって体感があります。筋肉は使えば増え、使わなければ減ります。適切に鍛えれば、そのまま正直に筋肉量は増えて強くなります。今回のケースで言えば、胃を始めとした消化管の筋肉を鍛えていくことで、自ずと消化吸収の機能が戻り、それと共に血流や貧血も改善されていくということになります(そして実際には、貧血うんぬんよりも、体全体が変わるというか、底上げされて源泉からパワーが湧いて出てくるような変化が感じられて、本当に驚いています)。初めて薬局を訪れ、最初の漢方相談でこの見解を聞いた時「筋肉を鍛えるとならば、これはまさに my field!もってこいだ!」といった感じで、私自身とってもワクワクしたのを覚えています(笑)。


漢方医学の世界は広く深く、当然知らないことだらけ、知らないことがほとんどなので、私の言葉だけでは全く表現しきれていないように感じますが、今の私の状態についての見解は、大まかに言うと以上のようなものでした。

これを踏まえて、さあ実践です!



◆ 鉄欠乏性貧血の改善・「養生」実践編

1) 食事の回数を増やす

まず最初に始めたのは、朝食を少しでもいいから取ることでした。これは漢方相談に行く前から取り組み初めてみたことなのですが、私の体にはバッチリ合って非常に効果がありました。

十数年の間、1日1夕食(プラス間食)という生活だったので、最初朝食を摂り始めた頃は体も「!?」と驚いた感じで、負荷も掛かっていたような気がします。ただそれも暫く続けていくと、体がそのリズムにだんだんと順応してきます。始めてから3週間くらい経つと、朝食を食べることが(作ることも含めて)確実に楽になってきました。

その後食事の回数は、朝食にプラスして、昼食も何かしら少し食べる方向へと変化していきました。お腹の減り具合は関係なく、少量でいいので何かしら食べものを摂取して、それにより胃をしっかり動かして鍛える!そんなイメージです。

ちなみに食事内容はこのときから和食にしました。食事内容については後述します。



2) すごーく良く噛む

消化管の筋肉を鍛える上で、食事と関連してとーーーっても大事なことがあります。それは「ゆっくりよく噛む」ということです。これは漢方の先生に教わり意識して実践していることのひとつなのですが、やってみて、本当にこれはいい、ものすごく大切、と体感しています。ものすごく。

胃や腸の消化管を鍛える、といっても、腹筋のように実際にそこの筋肉を自力でトレーニング出来るわけではありません。というのは、筋肉は「随意筋」と「不随意筋」に分かれています。随意筋は、いわゆるジムでトレーニングして鍛えられるような、自分の意志で動かせる筋肉です。一方、付随意筋は、心臓や内臓など自分の意志では動かせない筋肉です。筋肉は下の図のように分類されます。

画像:健康長寿ネットより


では、消化管の中で、唯一自分の意志で動かし鍛えられるのは何かというと、「噛む」という行為です。食べ物が口から消化管を通って体内へ入っていく様子をイメージしてみましょう。

消化吸収の最初のステージは「口腔」です。ここで「よく噛む」ことにより、食べ物が十分に細かくなり、さらに唾液によって分解され、胃、そして腸へと運ばれていきます。胃の筋肉は、その前段階で食べ物がより細かく分解されていれば、過剰な負荷が掛からずに動くことが出来ます。逆に、胃の筋肉がとても脆弱な状態で、そこに大きな固形物がドーンと入ってきてしまうと、それを分解することは、胃にとって非常にハードな行為となります。めいっぱい筋肉の収縮と弛緩を繰り返し、延々と蠕動運動を続けなければいけなくなるわけですね。これは筋トレで言うオーバーウエイト、過負荷、もしくはオーバートレーニングという状態です。ベンチプレスでシャフトが挙げきれず、胸に落ちてきて潰れてしまうのを思わず想像してしまいます(笑)。スクワットでもいいです、デッドリフトでもいいです(笑)。クシャっと潰れます。ああ重い、ああ危ない😆💦。


この様子を消化吸収の生理学的観点から説明すると、まず口腔内で咀嚼によって食べ物を細かくします。そしてさらに、唾液の中に含まれる消化酵素であるアミラーゼで、食べ物に含まれている糖質(炭水化物)を分解します。この消化吸収の最初のステージで固形物を出来るだけ細かくし、分解が出来ていれば出来ているほど、その後の胃と腸に過度な負担が掛かることなく栄養が体内へ吸収されていきます。(少し脇道にそれますが、消化吸収と分解については、こちらの動画(ネコかん【ネコヲの解剖生理学】実況!消化吸収耐久レース)がとても面白いです。ぜひ食事でもしながら楽しんで観てみてください(笑))

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筋肉というのは、一夜にして成らず、と言うくらい、日々淡々と鍛え上げていく種類のものです。なので、この「噛む」という行為は、体が通常の元気な状態の時ももちろん意識的に行えたら良いと思うのですが、胃腸が弱っている治療の段階では特に重要だと感じています。

ゆっくりよく噛むのは、最初は慣れていないので、意識し続けないと難しく、すぐに飲み込んでしまうし、さらに体が結構な運動をしている感覚もありました。でもこれも続けていくと少しずつ慣れ、体が自然に覚えていきます。また、よく噛むことで、食事の量も自然とコントロールされていき(腹八分)、満腹⇄空腹という激しい動きと欲求がなくなり、さらに食べて疲れることもなくなり、ふと気が付けば何もかもが「丁度いい、楽な感じ」に落ち着きます。この変化にある日気が付いたときは、とても驚きました。新しい感覚です。

ゆっくりと優しく確実に胃や腸の筋肉を鍛えていくイメージで、今日も咀嚼をがんばっています。



3) 夕食時間と就寝時間を変える

その他に変えたことは、夕食時間と就寝時間です。

漢方の先生からは「寝る前3〜4時間は何も食べないようにする」というアドバイスを貰いました。

私はそれまで、就寝時間は0時を過ぎるのはごく普通で、深夜2〜3時に寝るなんてこともザラにありました。夕食時間も気ままで、だいたい20〜21時くらいが通常。

そこで、この「3〜4時間前」というアドバイスに加えて、23時までの就寝を実践してみることにしました。これは、中医学に「子午流注(しごるちゅう)」という時間と体内時計と内蔵の働きが深く関係しているという概念があるのですが、何か良さそうと思い取り入れることにしました。人体の活動は太陽の動きと相関して出来ているので、夜間の睡眠により回復する、というダイナミズムを表しています。「子午流注」と検索すると色々出てきますので、よければ調べてみてください。


23時までに就寝となると、夕食は20時よりも前に終えることになります。なので今は、夕方出来るだけ早めに夕食を摂るようにしています。

ちなみに私の体は、昔からいつでも寝れるタイプで、夜の睡眠が浅くなったり、眠れない、ということはこれまでほぼありません。なので就寝を早めに変えることは負担ではありませんでした。23時までの就寝を実践してみて感じるのは、翌朝の便通が良くなること、そしてそれは「血を造る、疲労を回復する」のにとても効果があるように思います。この23時就寝は、厳密に毎日実行出来ているわけではなく、0時を過ぎることも時々あります。でも、特に今は治療に集中する時期と捉えているので、出来る限り意識して続けています。


23時の就寝は、ライフスタイルにより実行が難しいという方多いと思いますが、この「寝る前3〜4時間は食べない」という部分は、治療の観点からもぜひ実践したほうが良いと思います。睡眠とそれに関わる食事のタイミングを適切にとることは、胃や腸への過剰な負荷を避けるのと同時に、日中にその働きを最大限に発揮させるという意味でとても大きいです。人体の「休ませる、動く」というダイナミズムを促すということです。元気な状態の時はさておき、特に治療を目的とした段階ではポイントになると思います。



4) 食事の内容を考える

食事内容について、漢方の先生からのアドバイスは「油と、お菓子と、お酒、そして冷たいものを避ける」ということでした。(章末に詳細が書かれている漢方薬局のコラムをリンクしておきます。ぜひご一読ください)

この4つ、私の場合はこのようになります。
・油:今回食事を和食切り替えたことで非常に減った。揚げ物は注意する。
・お酒:アルコールアレルギーが多少あるのも手伝ってもともと飲まない。
・冷たいもの:これまで意識していなかったが、意識すれば避るのは難しくない。

そしてもうひとつの「お菓子」について。これを書いている今、「漢方薬+食事睡眠の改善」を実践し始めて約3ヶ月経ちました。ここまで既に様々な変化を体感していますが、この「お菓子」が、私にとって一番興味深く、そして最も驚いた大変化でした。

貧血の際に起こる症状のひとつに、甘いものを食べたくなる、というがあります。体内の鉄分不足によって引き起こされると言われているこの症状は、生理学的側面からも明確な理由があります。(ここでは簡単に解説:エネルギー生成(ATP生産)は細胞内で行われる → ATP生産には2つの代謝系統がある。酸素を使わない代謝(好気的代謝、解糖系)と酸素を使う代謝(嫌気的代謝、ミトコンドリア系) →  貧血はヘモグロビン不足の状態、即ち体内細胞に酸素が十分に送られていない状態である → そうなると体内の細胞の酸素不足により、体はATP生産を酸素を使わない好気的代謝(解糖系)で行おうとする → ATP生産量は嫌気的代謝より好気的代謝の方が圧倒的に少ない(グルコース1分子あたり:好気的代謝2ATP生産 > 嫌気的代謝36ATP生産)→ 好気的代謝はATPがすぐなくなる → そのためエネルギー源として絶えず糖(グルコース)が必要となる → 甘いものを頻繁に欲する状態になる)

変化というのは初めてそれを感じると、これまで「普通」と感じていた感覚が、実は普通でなかったと気付くことがあります。私にとってはこの甘い物への欲求がまさにそれでした。自分では「私は単にスイーツ好きの傾向がある」くらいの認識だったので、日常的に甘い物を「おいしいおいしい」と食べていました。でも実際は「欲する」という言葉がぴったりなほど、体が甘い物を強く欲求してたように思います。


「漢方薬+食事睡眠の改善」を始めて暫くしたある時、甘い物を食べたいと全く感じていない自分に気が付きました。甘い物が意識にも上がらなくなっていたので、気が付いたときはその差に正直とても驚きました。こんなにも変化していたんだと。なので例え今、甘い物への欲求が強くて葛藤していたとしても、貧血改善のアプローチを実践していく事で、意思と戦うことなく自然と体の欲求が変化し、自ら心地の良い場所に落ち着いていきます。ミラクルと感じるようなそんなことが実際に起こり得るので、このことを心の片隅に置きながら、ぜひ改善方法を実践して頂けたら嬉しいです。

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さて、上記の4つのアドバイス項目に加えて、自分なりに食事の内容を少し工夫してみました。

まず「血虚・気虚」に良いと言われている食材を中心に摂ってみることにしました。どのような物かというと、黒や赤の食材です。赤みの多い魚やお肉、黒豆、黒ごま、黒キクラゲ、ひじき、ニンジン、葉っぱものなどを摂るようにしてみました。自分が血虚と気虚に当てはまっているというのは、以前通った鍼灸医院で教えてもらっていました。この概念は、鍼灸や中医学で登場する「五臓六腑」からきています。このあたりのことは私は詳しくないのですが、少し調べてみてわかったのは、「五臓六腑」と言っても様々な考え方や解釈があるということでした。いずれにしても、鉄欠乏性貧血というのはシンプルに血の量が足りていない状態なので、特に診断を仰がなくても、基本的には血虚に属する状態と思っていいのではないかと思います。血虚タイプの人に合う食材については調べると色々出てきますが、食は個々の好みもあるので、あくまでも参考ということで、血虚について紹介しました。

上記のような食材を、油を避けながら食べようとすると、結果的に自然と和食になります。ただ揚げ物については、和食でも多いので意識して減らしています。そしてこのような食事を続けていくと、これまで食べていた油の多い洋食への欲求が減っていく、というよりかむしろ、お米と和食を摂るほうが体への負担が明らかに少なく、実際にそのほうが体が楽と感じる、そんなことが起きてきました。和食の方が心地よく楽ちん、という感じです。私はもともと幼少の頃からかなりの洋食寄りの人だったので、この変化もまた驚きました。このような嗜好の変化は、あくまでも私の体に現れたものなので、個体差は多いにあると思います。その体の好みがどのように現れるかわかりませんが、「食事のタイミング・食べ方・内容」を変えて継続してみると、程なくしてその個体自身が自ら心地良く感じる方向へと向かい始め、その結果「欲求の変化」という形で意識に現れる。そういうことが確実に起こると思います。

これらの食材を取り入れながら和食の食生活を始めてみると、最初は慣れていないので買い物だけでも時間が掛かりました。でもそれも最初だけです。あっという間に習慣となり、そうなると作るのも食べるのも格段に楽になりました。

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こうして食事と睡眠を変えることで始まった漢方による貧血治療の実践。漢方の世界では「養生」と言う言葉が存在することも、今回初めて知りました。「養生」ー生を養う。今の私の中では、ゆっくりと体を回復させつつ、食事や睡眠の変化に体が自ら反応し、体がそのベクトルを本来の活動的で元気な状態へ向かわせていこうとする、そんな動きのイメージです。

「養生」については、私の言葉だけでは到底表現しきれず、足りない部分が沢山あるので、こちらのコラムを添付します。今診てもらっている甲府にある「漢方坂本」の薬剤師・坂本先生のコラムです。ぜひ読んでみて下さい。貧血のみならず、全ての体に当てはまる内容です。様々な病気や症状と呼ばれるものや、病気と言えないまでも何かしらの不調を感じる状態から、体が本来兼ね備えている力強く心地の良い状態へ向かわせたい、そんなときにとても大きな手助けとなると思います。




漢方薬局「漢方坂本」のホームページはこちらです ↓。
ここで紹介する以外のコラムも、ぜひぜひ読んでみてください。
広くて深くて、そして静かな漢方の世界がきれいな写真と共にいっぱい感じられます😊。


「生活改善」って言っちゃうと、なんか「ダメなものを正す」みたいなイメージで、「わかってるよ」みたいに億劫になる人もいるかもしれませんが、いやいや養生はもっと能動的なとても楽しいもの。何せこれが治療となるのですから!ぜひ体験して貰いたいなって思います。



◆ 漢方薬について


私が貧血治療を再スタートさせたとき、なぜ漢方を試そうと思ったのか、そしてどのように漢方薬局を探したのかを書きたいと思います。

1) 日本の自然療法

現代医療ではなくて何か他の治療方法を考えた時、現在日本にある様々な伝統医療(民間医療)の中で一番身近なものは、やはり漢方医療になります。ちなみに漢方というのは、中国の伝統医学と思いきやそうではなく、古来中国から伝わったものが、日本で長い間改良と発展を重ね生まれた、日本の伝統医学だそうです。

でも漢方は、日本にない薬草がいっぱい必要という印象(勝手なイメージ。実際にはそうでもなかった)があったので「日本の薬草などを使った治療法ってないのかな?」と思って調べてみました。すると「自然療法」という東城百合子さんという方が体系立てた療法があることを知りました。日本に生息している野草、野菜や玄米、こんにゃく、ビワの葉などを使った治療です。

さっそく何冊か書籍を購入し、自分でも色々試してみました。実際にいくつか簡単なものをやってみて、とても良い感覚はあったのですが、しかしこれがいざ目的に叶った療法を実践しようとするとなかなか大変。野草ひとつ見つけるのに、山や森に入ったこともありました(笑)。本を片手に山に入ったのですが、お目当ての野草の群生場所もわからなければ、目の前にある草も何の種類かさっぱりわからない…。公園や道端でそれっぽい薬草を見つけれたけど、人や犬の散歩道のため、これ綺麗かな?飲んで大丈夫かな?と躊躇したり。

野草を見つけるのが大変なので、だったら育てればいいんだと思い、畑がある地に越したのですが、これはこれで育てるまで果てしなく時間がかかる…(笑)。もっと困ったのは、そもそも貧血なので畑作業を行うにも直ぐフラフラになり、力が全く出ない…(笑)。野草を育てるアイディアは悪くなかった(と今でも思っている)のですが、とは言え誰でも簡単に実践できる方法ではないこと、あとは効果としては少し弱い感じもしました(もちろん場合によってはすごく効果を発揮すると思う)。漢方の方が始めやすいことがわかったので、自然療法は一旦やめて、方向転換することにしました。ただこの自然療法は、家庭で簡単に出来るものも沢山あり、得れるものもいっぱいあると思います。例えば解熱、解毒、咳のときなど。興味のある方はぜひ調べて試してみてください。



2) 「生薬」と「漢方」と「漢方薬」の違い

漢方で治療してみようと思い色々調べていくと、わからないことがたくさん出てきました。生薬、漢方、漢方薬、市販されている漢方、調剤薬局、漢方薬局、漢方医院などなど。一体何が違うのだろうと。

素人なりに少し整理してみたいと思います。

まず「生薬(しょうやく)」というのは、概ね「薬効を示す自然界に存在する植物や動物、鉱物など」という意味合いで使われているようです。つまり、自然界にあるもので、人間が「これは薬として効き目があるぞ」と長い歴史の中で発見してきたものです。

生薬↑
画像:チアジョブ登販より
刻み生薬↑
画像:ピノキオ薬局ブログより
症状に合わせて配合された生薬のブレンド↑


生薬をある割合で組み合わせたものが「漢方薬」や「漢方」と呼ばれています。

ここでひとつ触れておきたいのが、「漢方」と「漢方薬」の違いです。これは明確に定義されたものがないというか、世間では曖昧に使われている場合が多く、そのため違いがとてもわかりにくくなっているように思います。法律的に何を「薬」として認めているのかという制度的なことと、加えて「漢方」のイメージを打ち出したい企業の販売戦略というケースも多いので、余計にわかりにくいのかもしれません。こちらの坂本薬局のコラム読むと理解が少し進むと思います。↓


漢方を調べていくと、国の制度による表示ルールや、薬として認められている or いない、医師の処方箋がいる or いらない、薬剤師が販売できる or できない、国から認められている生薬 or 認められていない生薬、健康保険適用外 or 適用内などなど、何がなんだかわからなくなります。なので複雑なことは一旦脇に置き、ここではこれまで通り「それが何で構成されているのか」という視点から漢方を見ていきたいと思います。



3) 漢方薬の種類 「エキス製剤」

<市販の漢方:一般用漢方製剤>
まず、ドラッグストアなどで市販され、「漢方」と銘打っている薬の成分を見てみましょう。

「漢方」と書かれているので、天然寄りでなんかいい感じ、という印象を持つ人も多いと思います。成分を見てみると、有効成分は生薬ですが、薬によっては沢山の添加物が入っています。これは現代医療の薬と同様に、錠剤や顆粒状など飲みやすい形状にし、吸収、保存、味を良くするなどの理由で添加物が使用されています。ツムラとクラシエの市販の葛根湯の成分表を例に見てみましょう。

例)ツムラの市販の葛根湯 
ツムラ漢方葛根湯エキス顆粒A
(全体の質量7.5g-葛根湯エキス5.2g=添加物2.3g)
例)クラシエの市販の葛根湯
葛根湯エキス顆粒Aクラシエ [10包]
(全体の質量6.0g-葛根湯エキス5.2g=添加物0.8g)


このように、これらは「生薬のみを組み合わせた漢方薬」ではなく、「生薬と添加物を加工したもの」ということがわかります。では、具体的にどうやって作られているのかと言うと、「まず生薬を細かくする → 水と熱で抽出する → 溶液部分を濃縮させる → 乾燥させる」ことによってその生薬のエキスを取り出します。そして、このエキスに添加物を混ぜて加工整形し製剤していきます。これを「エキス剤」と呼びます。

これが、私たちが自分でドラッグストアやネットで購入出来る漢方です。一般に手に入れられるので「一般用漢方製剤」に分類されます。こちらに製造過程がわかりやすく説明されています↓


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<病院、調剤薬局の漢方:医療用漢方製剤>

これに対し、病院やクリニックや調剤薬局で処方される漢方は「医療用漢方製剤」と呼ばれます。医療用漢方製剤もまた、このエキス剤を使って製剤されます。では一般用漢方製剤と何が違うのかというと、主には「成分量」です。医療用は一般用よりも濃度が濃く(生薬の割合が多く)作られているか、もしくは濃度は同じでも1日あたりの服用量が一般用より多めに設定されています。これは安全性を考慮して、一般用は成分の過剰摂取にならないようにしているためです。

「医療用漢方製剤」は、さらに医師の処方箋が必要な「処方箋医薬品」と、それ以外の「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」という分類に分かれるそうですが、処方箋の有無に関わらず、これらはどれも病院や調剤薬局で受け取るものになります。例えば見た目はこんな感じのもの ↓。見たことがある、飲んだことがあるという方も多いのではないでしょうか。

医療用漢方製剤の例


医療用漢方製剤には、これまでの記事で度々登場した「添付文書」が存在するので、同じようにpmdaの添付文書検索サイトで調べられます(例:「葛根湯」と入力すると各製薬会社が作っている葛根湯薬が出てきます)。またこちらの日本漢方生薬製剤協会のサイトでは、「医療用漢方製剤」の添付文書の情報が一覧にまとめられています。参考までに。


下記の画像は、ツムラとクラシエの「医療用」の葛根湯の成分表です。1日あたりの服用量が先ほどの「一般用」と比べて多くなっています。添加物の違い(クラシエ)も見られます。

例)ツムラの医療用の葛根湯の添付文書
”ツムラ葛根湯エキス顆粒(医療用)”
(全体の質量7.5g-葛根湯エキス3.75g=添加物3.75g)
例)クラシエの医療用の葛根湯の添付文書
”クラシエ葛根湯エキス細粒”
(全体の質量7.5g-葛根湯エキス5.2g=添加物2.3g)


このように、制度上の分類が色々ありますが、メーカーが同じであれば、医療用も一般用も製造方法は基本的に同じです。違いは、先ほど述べたように、医療用を飲む場合は、一般用と比べて生薬の摂取量が多くなるということです(同時に添加物の摂取も増える)。そしてここでのポイントは、一般用であっても医療用であっても、いずれも生薬のエキスを取り出して、添加物を加え加工・製剤された「エキス剤」の漢方薬ということです。

では次に、エキス剤を使わないその他の漢方薬を見ていきましょう。



4) 漢方薬の種類「煎じ薬・散剤・丸剤」

漢方薬の種類は、形状の違いで示す場合が多く、主に「煎じ薬・散剤・丸剤」に分けられます。(既に説明済みのエキス剤はここでは除きます。その他、液体状の「湯液」もありますが、エキス剤に類似しているのでここでは割愛します)

煎じ薬:生薬を煎じたもの
散剤:いくつか(もしくは単数)の生薬を粉末にしたもの
丸剤:粉末状の生薬を結合剤(主に蜂蜜、澱粉、米粉など)で固めて丸くしたもの

言葉だけではイメージしずらいので、まずは見た目の違いから。

画像:本草閣のサイトより


・煎じ薬
は、こんな感じで生薬を水から煎じて飲みます。


・散剤は乾燥した生薬を粉にしたもの。↓ 昔はこれで!? 今はさすがに!?

薬研(やげん)と呼ぶそうです


・丸剤
は文字通り丸い薬。黒豆みたい。丸剤はこのような感じで作られるそうです→(みどり薬局の自家製丸剤)

画像:北里大学東洋医学総合研究所より


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漢方薬局や漢方医院など漢方の医療機関を調べると「煎じ薬をおすすめしています」「煎じ薬は取り扱っておりません」「丸剤もあります」のように、どのような形状の薬を取り扱っているか説明をしている所が多いです。

初めて漢方薬について調べた時、これらの言葉が出てきても「で、違いは何だろう?」とさっぱり意味がわかりませんでした。丸剤は見た目も錠剤みたいだし、持ち運びやすく簡単に飲める、というくらいはわかりました(笑)。それ以外は、加える熱による効果の違い、水への溶け出し方の違い、体内で吸収される速さの違い、熱に弱いもの強いもの、煎じ出る時間の違いなどなど、沢山の要素が関係しているようで、こうなると素人では到底わからない学問だと思いました。ただ、共通して説明がなされていたことは「効果の違い」。そして効果が一番出やすいのが「煎じ薬」だということがわかりました。特定の処方には、丸剤や散剤の方が効果が出やすい場合もあるらしいのですが、ほとんどの場合は、煎じ薬が最も効果が出やすいとのこと。確かに、生薬をしっかり煮出した液体が、一番体内で吸収されやすそうというのは想像出来ます。

そして私も現在この「煎じ薬」を飲み続け、大きな効果を感じています。(丸剤、散剤は服用の経験なし)

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さて、これらの分類は、あくまでも形状の違いなので、市販されている漢方薬にも「・・・散」「・・・丸」というように形状が表記されています。成分による分類ではないので、例えば丸剤と言っても、ハチミツなどの天然の結合剤以外に防腐剤としてカルメロースNa、パラベンなどが仕様されていたり、散剤と言っても、色々な種類の添加物が入っている場合があります。漢方薬局で製剤されている自家製丸剤の場合でも、結合剤や添加剤として何を使用するかはそれぞれです。自家製散剤は、生薬の粉末のみで作っている所、添加物を混ぜている所と、こちらも薬局、医院によって様々です。


こうして見てみると、まず成分の面でエキス剤とそれ以外の漢方で大きく分けられ、さらに形状の違いによってもいくつかの選択肢があるというのがわかります。


これらの知識を頭の片隅に置きながら、自分に合った漢方薬局や漢方医院を探してみましょう!



5) 漢方薬局、漢方医院を探す

自分に合った漢方薬局、医院というのは、人それぞれと思います。「何か良さそう」と感じた所、ピンと来た所を見つけたら、まず電話など連絡をしてみて、可能ならば実際訪問してみて、そしてそこで感じた感覚が安心できたり心地良ければ、もう「それがそれ」だと思います。
本当にそうだと思うのですが、じゃあここまでの内容はいったい!?(😆笑)。

元も子も無くなってしまうので、ここからは私が漢方専門機関を探した方法と、どんな出会いがあったのかを書きたいと思います。個人の経験談として、あくまでも参考程度に読んで頂けたらと思います。


私が最初に漢方を専門に取り扱っている機関を探していたとき、実は煎じ薬や丸剤など色々種類があることは知りませんでした。とりあえず原料がちゃんとしたものを取り扱っている所、ということだけを思って調べてみました。

原料がちゃんとしているというのは、薬に添加物が入っていないもの、素材である生薬が農薬たっぷりではないもの、という感じです。「絶対にそうでなくては嫌だ」という感じではなく「可能な限りそうだったらいいな」というくらいのスタンスで調べました。そんな漢方薬があるのかどうかさえわからなかったのですが、調べていくうちに少しずつ色々なことがわかってきました。

まず、煎じ薬なら、乾燥した生薬そのものを持ち帰って自分で煎じて飲むので、そもそも添加物は入っていません。そうなると生薬そのものの質が出来る限り安心な素材のほうが良い感じがします。調べていくうちにわかってきたのは、煎じ薬を取り扱っていて、かつ目的や方向性や意図が明確な薬局は、煎じ薬=生薬の力そのものとも言えるので、生薬の質を軽視している所は少ないということ。ホームページで原料(生薬)の重要性や品質、産地、等級、農薬などについて詳しく触れている所もあります。さらっとだけ書いている所もあります。


他に考慮したいことは、良いと思った薬局、医院が距離的に直接訪問出来るかどうかです。日本には漢方薬局や医院が沢山あるので、自分の住んでいる市町村名と、「漢方」「漢方薬局」「漢方専門」などのワードで検索すると色々出てくると思います。今はオンラインや電話相談などで受け付けている所も多いので、所在地についてはあまり気にしなくてもよい気もします。でも、幸い私は通えるところにピンときた漢方薬局があり、実際に漢方相談をしてみて、やっぱり対面で話が出来たほうが良いという感想です。場が発する何かと言うか、Human Body, Human Being が感じ取る何か、とでも言うのか・・・直接の交流でわかるもの、感じ取れるものが(互いに)沢山あるのではないかと思います。対面を重要視するかしないかは、個人的な好みや住んでいる場所にもよるのでケースバイケースですが、もし何から探していいのかわからない場合は、最初の取っ掛かりとして、まず近所の漢方薬局を検索してみるのもひとつの方法と思います。訪問出来て、対話をして良いと感じる相性の良い所が見つかると一番いいですね。

多少遠方でも、行く事が出来るのであれば行ってみる、というのも良いと思います。

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以上のことをまとめると、探す際の私のおすすめポイントは
・原料である生薬がちゃんとしているところ
・煎じ薬を処方しているところ
・(直接訪問出来るところ、もしくは最初の相談だけでも訪問出来るところ)
となります。


煎じ薬については、初めから煎じ薬が良いと思って探したわけではなく、今回たまたま出会えた漢方坂本が主に煎じ薬を取り扱っている漢方薬局で、そして実際に約3ヶ月間服用してみて、これは本当にとても良い(私にとても合っている)という実感があるので書きました。ただ、その他の形状の漢方を私自身経験していないので、比べることは出来ていません。

それともうひとつ。今改めてどんな漢方薬局があるのか調べてみると、煎じ薬を取り扱っているところは、実はそんなに多くはないということもわかりました。

また、漢方薬は健康保険の対象かどうかによって費用の違いも出てくるので、そのあたりも考慮ですね。費用はいくらなのか、どのくらいの期間飲むのかなど、疑問に思う事は正直に色々聞いてみるのが良いと思います。


以上の情報が役立つかわかりませんが、ぜひ情報に踊らされることなく(こんなに散々言っておきながら(笑))、ぜひみなさんにピタッと合った薬局、医院に出会えることを願っています。



6) 十人十色の漢方の世界

こうして実際に服用してみて思うのですが、漢方というのはとても懐の広いものだと感じます。さすが人々が長い年月をかけて探求し、その叡智を伝承し続けた、いわば大作です。漢方薬は薬であることには変わりないので、使い方や意図によっては如何様にも心体に変化を促します。そしてその使い手の意図があり、さらにその意図を超えたところで、体と漢方薬が共に作用(共同作業?)している感じがしています。物質的に表現するならば、適切に服用すれば、足りないところには必要なものが行き届き、多いところには届かず、そして全体がバランス良く落ち着くところへ落ち着く、もしくはバランスの取れた方向へ向かうように強く促す作用がある、という感じです。

そのように懐が深く広いがゆえ、その使われ方も様々です。市販や一般の病院で処方される漢方の場合、目的がその症状を治す、消すことなので(対症療法)、実際の使われ方も現代医療の薬と変わらないことが多いように思います。風邪・発熱なら葛根湯か麻黄湯、胃炎なら大黄甘草湯、というような感じです。


では、漢方薬局や漢方医院の漢方専門医はどうかというと、上記のような現代医療に近い考え方で処方する所もあるように見受けられます。ですが、そうでない所もあります。そして、総じて漢方専門医は、考え方や体の捉え方、それに対するアプローチなどが一様ではなく、本当に様々、十人十色だということがわかってきました。もっと言うと、全員違う見解や治療法を持っていると言ってもいいくらいだと思いました。

この点がまた現代医療との大きな違いです。現代医療だと、症状について一律の判断をし処方を行うので、どこの病院へ行ってもほぼ同じ治療方法になります。一方、漢方薬局や医院の場合は、考え方や体や症状への捉え方がそれぞれ違うので、当然アプローチも違ってきます。例えば「熱が出た」という表立ったひとつの症状を診たとしても、処方する漢方薬はそれぞれ違う、そのような世界です。漢方薬は、その漢方医の経験や感度や知識や世界観など全部が創り出す、いわばアート作品のような感じがしています。そして診てもらう側の肉体と人格もまた、変幻自在のアート作品のようなものなので、そんな互いがコラボレーションしているのが漢方の治療なのではないかと感じています。曖昧さが織りなす、一律ではない世界です。

良い漢方薬を服用することと、養生を実践すること。これが症状改善の2つの大きな車輪です。片一方でなく、両車輪があってこそ、根本的な変化が起こります。ぜひ体の変化とそして心の変化も楽しみつつの養生期間を送りたいものですね!

<まとめ>
私が実践している貧血治療の方法



◆ 漢方薬による治療 〜たくさんの腑に落ちたこと〜


私が最初に甲府の漢方坂本に漢方相談に行ったときのこと、そしてその後の定期相談の様子を少しお話しします。印象深かったこと、嬉しかったことは、これまで数限りなくあるのですが、その中からいくつか「心から腑に落ちたこと」を書き留めたいと思います。皆様の漢方薬局、医院探しに役立つと嬉しいです。

1) 初めての漢方相談

人生初めての漢方相談は、とても楽しかったです。まず、穏やかに丁寧に、じっくり時間をかけて問診してもらいました。自分自身思い当たることや、体の感覚、自分の状態を出来る限り言葉にしようとトライしました(自分の体の状態や微細な感覚って、時に言葉にするのが難しいですよね)。沢山聞いてもらい、その後(おそらく症状、状態を診る上で共通のキーとなる)様々な質問がありました。睡眠の様子、喉の乾き方、体の冷え、排泄の回数、生理の様子、温泉を好むか、などなど。その質問項目に「こんな質問があるんだ、それで何がわかるのだろう?」と興味津々な私。色んな想像を巡らせながら答えるのはとても楽しかったです。質問内容、全部覚えておけばよかったな〜(完全に体オタク的な気持ちで(笑))。

そんなやり取りの後、私の症状への見解と、それに対して処方する漢方薬についての説明をしてもらいました。様々な生薬の入った木箱が順番に出てきて、その香りをひとつひとつ嗅いで、これは好き、苦手、いい香り、など私の感覚を元に、私に合った生薬が選ばれていきます。まさにオーダーメイド。ひとつひとつの生薬を生身の体が確認することで、その体に合った薬を見つけることが可能というわけです。最後に「シナモンは好きですか?」の質問で終わりました。はい、好きです。

この対面による漢方相談は、言葉による対話以外にも、先生は色々なところから情報を経て診ているんだろうなと感じました。まさに「全体」です。舌診もありました。きっと、喋り方や顔色、表情、姿勢、その他いろ〜んなことからわかることが沢山あるのだと思います。

じっくりと対話をする漢方相談、そして個体に合った生薬配合がされた漢方薬。これがまさに、体を全体として捉える漢方治療なんだと思いました。



2) 飲まない方向へ向かうということ

そして最後に、費用と、漢方薬をどのくらい飲めばよいか、服用期間の説明がありました。私の場合は、だいたい6ヶ月くらい続ければ飲まなくて済むようになるでしょう、と。

「飲まないで済む方向」へ向かっていけることの喜び、そして安心感。感激しました。今まで病院だとなかなかそうは行かなかった「普通」のことがここにはありました。それがとっても嬉しかったのです。


本来薬を飲むというのは、一時的に体をサポートする、もしくは一時的に軌道修正するためので、それに頼らなくても済むように使われるものだと思っていたのですが、なかなか現代の医療現場だとそうはいきません。降圧剤、血液サラサラの抗血栓薬・抗血小板剤、血糖降下剤 etc… 病気の再発を防ぐためには飲み続けるのが当たり前。それが医師も働いている人も、そして何より患者も思い込んでいる。そんな現場を何度も味わっていたので、こうして当たり前のように服用期間を提示してくれて、何より「飲まなくて済む方向へ向かって治療していく」そんな場所が現代でも存在している!という事実にとても感激しました。私自身の漢方薬の服用期間がわかって嬉しい、ということへの喜びではなく、それ以上に、まだこういう存在があったという、そのことへの喜びでした。当たり前の普通のことが、こんなに安心なのかと。


このことは、私の中で「これでいける(どこへ? それは私のイメージする減薬の方向へ、そして体の可能性が戻り、さらには広がる方向へ)」と、これまで様々模索していたことが繋がった瞬間でもありました。そして、これらの情報や実践方法、そして体験のシェアは何かしらの役に立つのでは?と感じ、私がYocco診療所を書くきっかけとなりました。



3) 効果を確かめながら漢方薬の内容を変えていく

もうひとつ腑に落ちて感激したことは、常に体の状態と漢方薬の効果をみながら治療を進めていくということでした。最初の漢方相談では、まず14日分の漢方薬を貰いました。これは、最初に配合した漢方薬が私の体質に合うかどうか、ぴったり合った効果が得られているかどうか、改善の方向に向かうものかどうか、そのようなことを確かめるためです。私はそのとき飲んでいた鉄錠剤はどうしたら良いか尋ねてみると、最初は鉄錠剤も変わらずに飲み続けるようにとのことでした。漢方薬を飲み始めて、一方で飲んでいた鉄錠剤を止めてしまうと、その変化が漢方薬で起きた変化なのか、鉄錠剤を止めたことで起きた変化かがわからないためということでした。本当にその通りで「なるほどな〜」と思いました。(鉄錠剤はその後自然と飲まなくなりました)

その他に、最初の漢方相談で教えて貰ったことは、経過によっては漢方薬を徐々に強くしていくかもしれない、いずれにしても体が少しずつ適応していくように、様子を見ながら処方してていくということでした。(結局私の場合は、最初に処方してもらった配合の漢方薬がぴったりだったので、その後も強くすることなく同じ配合のものを飲み続けています)

こうしてまず14日間服用し、再び来訪しました。飲み始めて14日間がどうだったか、そして今はどういう感じか、再び自分の感じる体感、状態を出来るだけ言葉にして問診してもらいました。その私の様子から、最初に見立てた漢方薬で恐らく間違いないということで、14日分の同じ漢方薬を貰いました。体に合わないなど、また何かあればいつでも連絡してくださいとのこと。こうしてその後、2〜3週間ごとに来局し、そのときの様子をお話しする、そして漢方薬を頂く、というペースで漢方治療を続けています。

体は薬に反応してどんどん変化をし、その時々で違います。気候や生活環境、心もですが、色々なことが影響します。ここで改めて思うのは、この様にして飲んでは様子を診てもらい、その時の体に合っていなければ薬の内容を変え、合っていれば続ける、という、とてもシンプルでかつ実直な治療方法だということ。またまた「なるほど、そうだよな〜」と感動しました。一度薬を処方したらそれまで、という話ではないわけです。(でもこれを実際、訪れるひとりひとりの状態に対して、繰り返し繰り返し様子を診ては丁寧に誠実に治療をするというのは、それはもう想像しただけで・・・言葉も出ないほどです。すごいです)



4) 煎じ薬が良いというもうひとつの理由

そしてもうひとつ腑に落ちたこと。煎じ薬というのは、吸収の面から考えても一番効果が出るというのは先述しました。その他にもうひとつ優れているのは、今書いた「様子を見ながら薬を変えていく」ということに通じます。つまり、煎じ薬は、生薬の配合が変えられる=加減が出来る、ということなのです。強くしていく、弱くしていく、体に合ったものにしていく、というようなことが、この配合の加減で調整出来るのです。マイナーチェンジも出来るし、メジャーチェンジも出来るのです。数ある生薬を、その時々の体の状態に合わせて臨機応変に絶妙に配合しながら、体をサポートし、バランスの良い方向へ導いていきます。


薬とはそもそも人類が健康を望むからこそ探し続け、検証し続け、伝承してきたもの。だからなのか、実際にこうして漢方治療を体験してみると「本当に理に叶っている」と思うことばかりです。変化を続ける体に対して、並走出来る、反応出来る漢方、そしてその力を遺憾無く発揮することが出来る煎じ薬という形態。広くマイルドにもいけるし、時に深く強くも体に働きかけられる。その叡智に触れていると、またまた「なるほどな〜」と唸るばかりです。


煎じ薬 😊



◆今回のまとめ

今回は、鉄欠乏性貧血を改善するために、私が今実践している「養生の実践と漢方薬の服用」について書いてみました。


ここまで書いてみて、随分と抽象的な言葉が多くなっているとハッとしました。前回までの、現代医療の薬や体の仕組みを説明するときにしていた「○○なので〇〇となる」というハッキリとした表現が断然少なくなっている・・・。なぜだろう?


ひとつ思うのは、養生と漢方薬は、体が最適なバランスが取れるようになるために働くからだと思います。「体の最適なバランス」 ー この目的自体が既に抽象的です。さらに体の最適なバランスというのは個体、個々人、その時々によって違うのもの。でも、そんな中でも共通して言えるのは「心地が良いかどうか」。これ体のバランスなのではという気がします。


私の場合、長年かけて徐々に貧血状態になり、本来の心地の良い状態を体感として完全に忘れていました。養生を始めて2ヶ月くらい経ったとある日、本当に十数年ぶりのような「あれ?これって?」という、体の芯から湧いてくる何とも言えないエネルギーを感じる瞬間がありました。あまりに長年忘れていたので、思い出したというよりかはむしろ、新しい体を感じたとも言える、そんな瞬間でした。


赤血球、白血球、血小板がいくつで、血圧と血糖と尿酸がいくつで、筋腫や腫瘍がなくて、身長がいくつだと体重はいくつが良くて、そしてこの全部揃うとその個体はバランスが取れているから心地が良い、というわけではないのが体。漢方は、これを飲むことにより、このこの化合物が、ここの臓器のこの代謝の、このエネルギー交換の、この細胞の部分にこうして作用して、、、と細かいところを説明するのではなく、胃の筋肉を鍛える、活動が弱った消化管をもとの正常に動く状態に戻す、体を休ませる、よく動かすなど、もっと引いた視点から体全体を導きます。

なので表現としては抽象的になるのですが、実際に実践し効果を体験(体感)すると、実はものすごくロジカルな治療だというのがわかります。マクロの世界まで言葉で説明するのではなく、「こうすればこうなる」というシンプルでストレートな治療であり、養生です。

鉄錠剤については、私は途中から体が自然と飲みたくなくなってきて、気がついたら止めていました。貧血っぽく感じたら飲んでくださいね、と漢方の先生からはアドバイスを貰いました。「なんとなく血が足りない」という感覚も、体が変わっていくことでどんどん繊細に感じ取れるようになってきました。日々の生活の中で、全体的な底上げは感じていても、ひょろろろ〜と疲れてしまうこともあります。そんな時でも、鉄錠剤を飲む、それよりまずは一旦しっかり寝る、休む、油を取りすぎたと感じたら控える、体を意識的に温めるなどなど、自分で体感的にわかることが増え、工夫して色々なことが出来ます。

私が漢方薬局を探していたとき、まずは何をするにもエンジンをかけるための力が今は必要だ、と直感して、そのときクリニックで貰っていた鉄錠剤を飲みました。おかげでその時はエンジンはかかり、動けるようになりました。現代医療の薬はピンポイントで強く効きます。ただ長期的に体のことを考えたとき、何をしたらいいのか、したいのかは、現代医療も漢方も両方を知って、自分の体のこともよく知って、選択肢も色々あることを知って(現代医療、漢方以外にもたっくさん方法があります)、その上で自分で選んでいくことが出来るといいと思います。

最後に漢方坂本のこちらのコラムを添付して、今回は締めたいと思います!


長くなりましたが、最後までお読み頂き本当にありがとうございました。

次回は、実際に起きている具体的な変化について書きたいと思っています。今回書いた以外にも、色々あります👍。

ではまた!
See Ya!😊

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