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【前編】つまき(ちまき)準備は、川へ洗濯に!!

令和6年の旧暦端午の節句は6月10日。
Yさんは、子どもの頃から毎年、ずっと旧暦 端午の節句に「ツマキ」を作り続けて来られたそうです。
「旧暦端午の節句にウチとこでも「つまき(ちまき)」作るさかい」と聞き、ぜひ取材させてください!とお願いしました。


「ちまき」ではなく「つまき」

滋賀県多賀町にある 2つの川と 3つの谷筋。
同じ町内なのに、谷筋ごとに少しずつ方言も文化も違うのがこの町の魅力的なところ。

多賀町の2本の川「芹川」「犬上川」と三つの谷筋。ちまきを作る集落

一番南の谷筋、犬上川の南谷上流、犬上ダム近くの集落、萱原(かやはら)地区の「つまき」は、毎年旧暦端午の節句前日に作り、神さん棚と仏さんにすえる(お供えする)そうです。
どうやら、過去に「よびし通信」で紹介した「ちまき」と結び方が違うとのこと。
つまきを作る前日(6月8日)に材料の調達に行きました。
「朝10時に現地集合やで、長靴履いて、帽子被って、タオル巻いておいでや、ハサミはウチトコが準備しとくさかいにな」

笹葉(クマザサ)採り

6月8日爽やかな晴れ。(晴れて良かった・・・。ヤマビルのリスクが減る(笑))
昔から多賀町富之尾(とみのお)で笹葉を採っているそうです。旧暦端午の節句頃、萱原周辺では笹を採るには新芽が出そろわず、まだ早く、標高が低い富之尾で採ると決めているそうです。

どんどん道のないところに入って行きます
胸の高さ以上、クマザサの丈があります
笹薮の中で天然のササユリ発見!!

笹の新芽が2~3枚出ているのをハサミで伐ります。折る時は節の少し下で折るのがコツ。なるべく大きい笹の葉を採ります。つまき約100本分が巻ける笹葉を一時間ほどで刈り採りました。Yさん1人で笹薮に入って行く予定だったそうで、私達が密着したので、心強かったとのこと。ひとりで入るのは心細いので、入口あたりで90歳になるMさんに待っててもらう予定だったそうです。 

川で笹洗い!!

11時半ごろ、折った笹を洗いに行くというので、Yさんの車について行くことに。
家に帰って水道で洗うと思っていたら、萱原集落を越えて、犬上ダムも越えてどんどん上流に。しかも運転に慣れていて、結構なスピードでどんどん山道を登るのに、ついて行きながらかなり不安に・・・。
山奥の小屋かどこかの井戸水か、何かで洗うのかと思いきや、車を道端に停めて、河原に降りて行きはじめて驚きました。まさかの、川で洗濯!!
犬上川ダムより2~3㎞?もっと?上流、マルヤマという地名の所にどうやら着いたようです。通称クチナシ(口無)とよんでいる場所だそうです。
萱原集落からは、歩いて行ったら1時間以上かかるそうで・・・。

枝をひらって、杖を現地調達
杉は弱いで、杖にしたらあかんで、ヒノキが強うてええほん

到着したら、まずは腹ごしらえ。まさかの河原の石に腰掛けて、お昼ごはん。おにぎりとお茶をご馳走になりました。昔は山仕事に行くときは、ヤカンだけ持って行って、お茶の葉を摘んで谷水でお茶を現地で沸かしていたそうです。お茶は、もちろんお茶の木から摘んで揉んでヤカンに入れるそうです。

腹ごしらえが終わったら、笹を流水で丁寧に綺麗に洗います。川底に砂が少なく大きい石がゴロゴロあるところで、流れが速く洗いやすいのでココが良いそうです。

お手製の腰掛を持参
陽射しが強いのですが、水に浸かっているので心地よいです

笹葉を一枚ずつ洗いながら、水流の轟音で会話もかき消されて、黙々と洗っていたら、川上から桃がどんぶらこと流れてきやしないか?もしくは上流から箸が流れてきやしないか?と妄想してしまいます。

川上から桃が流れて来ないかしら・・・。
葉の裏まできれいに洗います

川の水で綺麗に洗って、ビニール袋に葉先を下にして入れます。そのまま翌日使うまでおいておきます。水に浸けると葉が丸くなるので浸けないそうです。

イイ採り(イグサ)

笹採りから帰ってきたら、午後から「つまき」を結ぶ紐、イイ採りに行きます。
萱原の昔田んぼだった湿地で刈ります。今は、萱原では稲作をしている所はないそうです。休耕田になる以前は畦で刈っていたそうです。
根元の方から刈って上の方をつかんで、バサバサ振ると短いものや枯れたものが落ちてきれいになります。

鎌でイグサを刈ります
先を持って振ると短いイグサが落ちる
畳イグサの材料と同じ種類??
束ねると美しい

一晩陰干しにしておくそうです。使う前に湯通しすると切れにくく強くなるそうです。

炭焼き

20歳までMさんは、笹を洗った場所、クチナシまで山仕事をしに行っていたそうです。木馬道(きんばみち)という一尺の幅で出来た山道や橋があったそうで、木を引っ張って出してくる道だったそうです。「ひとり動けんで、押しにこい」と子どものころはよく言われたそうです。

丸山まで歩いて1時間ちょっとかけて山仕事に行ったそうです。
炭焼きの木をせんならん。カマ(炭焼窯)の口まで木を運んで、カナギ(薪)を集めてカマの口に置く仕事をしたそうです。
カマの中に木を一本一本並べて、「3日間燃えとる。始めは黒い煙で、でんぶ火が付くと青い煙になる。ほしたら、入口のふたをする。」
「夜中も泊まったんよ。木でほったて小屋建てて。雪のうちは家で遊んでいたけんど。それ以外は一年中炭焼きをしてたわ。」
「中学卒業して、勤めに行きたかったけど、20歳で結婚するまで炭焼きをてっとた(手伝った)んよ。昭和30年に結婚したんよ。」
「1軒に一つは小屋(炭焼小屋)を持っとった。木を切って来た順に置いといて燃やしたんよ。樫の木も、モミジも、雑木はクズ、山の木の一番クズを炭にしとったんよ。樫は別で炭焼きしてな、樫は高こう買うてくれるんよ。」
「炭は萱原まで買いに来てくれたし、売りにも行ったよ。売りに行って、油やお米に変えとったわ。」

「カナギ(樫)があるところを切り上げて(伐採してしまって)杉とヒノキを植えていったんよ。杉ヒノキの苗は森林組合で買って植えに行ったんよ。」
戦後、杉とヒノキを一斉に植えた時、雪の深いこの地では、春になると雪で倒れた木を起こす作業に子どもも手伝いをしたそうです。
「春の木起こしは、縄をくくって起こした。植えてから4年目ぐらいまで、木は起こさんならん」
杉やヒノキを植えたものの、木は成長が遅いので、
「いっぺん植えたら、1代しか食べられへん」と。
笹の葉を洗いながら、貴重な昔のお話しが聞けました。

田舎弁

「イナカベン(方言)は恥ずかしいし書かんといてえな!」と言われたものの、熱心に記録しているのを見てあきらめたのか(笑)、
「そんなんも知らんのか?」と色々教えていただきました。

雨がシボシボ降る → しとしと降る
でんぶ→全部
カナギ→薪
てっとた→手伝った
おいねて・おねて→かついで
よごい→えぐみがある
ひだるい→お腹がすく
まくれてきた・まくれる→転がってきた・転げ落ちる・山から石がまくれてきた(普通に転げ落ちるより危険な時に使う)
ぶかる・ぶかった→ぬかるみにはまる
しやへん→せえへん
ぶちゃかる→ぐちゃぐちゃになる
きてかして・きってかして→ついてきて
あんない→味のない・美味しくない
元気にしとるけ→元気にしていますか?
いやれん→居られない
ほいてな→それでね
ガメムシ・ヘコ→カメムシ
いかさは→大きさは
デゴデゴ→ボコボコ
アワイ→隙間
ヘコがアワイに入りよる→カメムシが隙間に入る
うちね→うち・家
ごもく→ゴミ

つづく

さて、萱原地区の「つまき作り」は6月9日、旧暦端午の節句の前日に作ります。続編記録 ↓




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