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『常設展示室』(原田マハ)

概要(裏表紙)
いつか終わる恋をしていた私。不意の病で人生の選択を迫られた娘。忘れられないあの人の記憶を胸に秘めてきた彼女。運命に悩みながら美術館を訪れた人々の未来を、一枚の絵が切り開いてくれたーー
足を運べばいつでも会える常設展示は、今日もあなたを待っている。ピカソ、フェルメール、ラファエロ、ゴッホ、マティス、東山魁夷……実在する6枚の絵画が物語を豊かに彩る、極上のアート短編集。


『暗幕のゲルニカ』を経て読んだ本作、

短編集と言うことで、

様々な絵画作品についてコンパクトにまとめられていて絵画の勉強にもなり、

もちろんストーリーとしても飲み込みやすい印象でした。

原田マハ先生の作品は芸術×人間ドラマが多いのかなと思っているのですが、

『暗幕のゲルニカ』や本作は、

芸術に全く造形のない私にも非常に親しみやすい作品です

たぶん、専門的な話よりも、政治、家族など

日常生活に根ざした共感しやすい分野に芸術を結びつけてくれるからだと思います、

『暗幕のゲルニカ』は政治が強く絡んでいましたが、

本作は主にーー大切な人ーーなのかなと

6つの短編の中でも特に印象に残ったのは最後の作品『道 La Strada』です


ーその日に限って翠が選んだ道は、渋滞していたー

から本作は始まります

主人公の貴田翠は、とある絵画の賞の審査員を務めることになり、一つの水彩画に一目惚れします

どこにでもある田舎の風景に、一本の道が通っている、という構図

ただ草原か、水田か、一部に使われている翡翠色

他の審査員に賛同を得られずも、どうしても作者が気になっていた翠は、

鈴木明人という作家の名前を聞いた瞬間、

その絵を書いたのが、幼い頃にむりやり引き離されてしまった、

大好きだった兄が描いたものだということに気づきます。

しかし、住所を訪ねてみると、残念ながら

兄は亡くなってしまっていました

兄と母との思い出の道を残して

翠は兄への想いを胸に、

まだ見ぬ道の先に車を発進します

数十年の時を越えて芸術が繋ぐ家族の絆

上白石萌音さん絶賛する、

ほっこり切ない物語でした

おすすめです

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