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「霊幻道士」の主役は誰だ!?

 (注意:記事中に映画「霊幻道士」のネタバレを含みます。)

 ここ数日悶々としています。林正英ラム・チェンインの事を語りたいが為だけにホラー映画にハマった経緯を紹介したり(ま、ホラーの方も実はなかなか名作というのがないなと思うので、そこらへんをまた吐き出したい時があるかもしれません。)

林正英ラム・チェンインを余り知らない人に語る為には、まず霊幻道士から語るっきゃないでしょう、と紹介し、ただの作品紹介に終わったり

あのS級アクションスター、ブルース・リーをダシにしたり

あの手この手でやってまいりましたが、そういう作品や他の人を利用しても肝心の林正英にガッツリ話を持って行けない事で私は諦めました。



キョンシー映画を語るには林正英抜きで語る事はできませんが、林正英を語るにはキョンシー映画では足りません(当ったり前や)

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キョンシー映画でキョンシーと対峙する道士役で林正英をしのぐハマり役を未だかつて見た事がありませんから。

実際、ラム・チェンインの多くのキョンシー映画やドラマは、
「林正英致敬(ラム・チェンインに敬意を表して)」という事で撮られています。

 生い立ちとか経歴とかそういう調べればすぐわかるような事は基本ウィキなどにお任せして、やっぱり直球ストレートで「I 💛 林正英」を語りたいという結論です。

でも、ファンなら周知の事実でもファンってほどじゃないけど「お~この人か」と好感する方達に向けてウィキよりかは多少詳しめでラム・チェンインの魅力を語っていければと思います。

ラム・チェンインは京劇の劇団出身と前の記事でも書きましたが、60年代くらいの香港では、そういう京劇訓練班のようなものがたくさんありました。

そういう舞台劇から映画への過渡期のさなか、映画でやられ役(スタントマン的な)や子役が必要となると、訓練班に「明日の午後に5~8歳くらいの子役5人を頼む」的な、出前的な感じで注文が入り、指定の時間、指定の人数が手配される、と言う形でした。

洪金寶(サモ・ハンキンポ―)、成龍(ジャッキー・チェン)、元彪(ユン・ピョウ)は同じ京劇の学校出身なのは比較的有名な話ですが、ラム・チェンインはこの時代では珍しい女性の師匠に学びました。

とは言えこの女性師匠、粉菊花は京劇のアクション女優ですが一流のカンフーアクションで当時の香港一のアクション女優として誰もが一目を置く超有名人です。

ちなみに、この当時の子役育成班の状況を描いた映画があります。

七小福」(1988年、日本上映は1992年)と言い、(映画英語字幕のものがありましたので表題にリンクしておきます。)サモ・ハンキンポー達が学んだ京劇学校をモデルにした実話です。この映画の子供達がサモハンキンポ―やジャッキーやユンピョウに当たります。劇中でこの訓練班で特に優秀な7人を「七小福」として選ぶというエピソードも実際の話です。

サモ・ハンキンポー自身は作品中で自分の師匠である于占元役を演じています。ラム・チェンインも出演しています。

映画的には霊幻道士の方が1985年でこの「七小福」より先ですがラム・チェンインはアクション俳優であるだけでなく演技派俳優でもあります。

霊幻道士は勿論の事、この七小福でも助演男優賞を受賞しています。

でも香港映画界の中でのラム・チェンインの立ち位置は名「振付師」です。男優賞以上に彼は何度も「動作指導(アクションの振付師)」として金賞を受賞しています。映画の出演はあくまで脇役としての出演が多いです。

スタントマンをやっていた下積み時代も、身体が小さい為、主には女優さん専門のスタントでした。ブルース・リーの武術指導として、場面設定やアクションの振り付けをしながら、色んなアクション映画にチョイ役で出演するという、どちらかと言えば裏方メインです。

ラム・チェンインの人気に火をつけたあの「霊幻道士」でさえ、彼は主演の一人ではありますが本当の主役ではありません。

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見てください。霊幻道士のパッケージにはラム・チェンインの名前が主演の一番上に載っています。

彼がこの映画で「助演男優賞」を受賞した時、香港の人たちも一瞬は「アレ?」と思ったものの、すぐに誰が主役か当てが着いたと言います。

ラム・チェンインが劇中でも主役を完全に食ってしまい、主演男優賞は受賞していませんが、この映画の本当の主役は誰でしょう?

わかりますか?


誰です?あの警察隊長?とか言ってる人?

でも、この警察隊長を演じた彼のお陰でキョンシーがまともに人を襲う最初のホラー場面がコメディに変わりました。彼もこの映画でラム・チェンインと共に助演男優賞を取っています。

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「あ!そうか、道士が主役じゃないなら主役は勿論キョンシー?!」

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・・・の訳もなくて、主役は

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この二人の弟子の左側の方、錢小豪(チン・シウホー)当時22歳でした。(後に盗撮で捕まりファンが離れてしまう時期もありましたが)

ラム・チェンインはこの時32歳(ちょっと老けメイクではありますが)。

この霊幻道士の映画では、ラム・チェンイン演じる道士がキョンシーと戦うメインストーリーの中に、主役のチン・シウホーが女の亡霊に恋をされて誘われて精気を吸い取られかけるというサブストーリーがキョンシーが人を襲いまくって余談を許さないさなかに展開されます。

メインストーリーの方でも誤認逮捕されたラム・チェンインを助けに来るなど大活躍をするなど確かに見せ場がたくさんあります。

(私には主役ラム・チェンインを助けに来た脇役にしか見えませんが)

ま、結局映画というのは主役でも脇役でも良い演技をし、個性が際立っていれば年齢やキャリアに関わらず観衆の目はかならずそちらに向くという事ですね。ラム・チェンインはこの映画の脇役で、更に新たなファン層を広げ、後に香港芸能界のルールに逆行するような例外的伝説を打ち立てるのです。

細々続きます



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