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金は天下の回り物、情けは人の為ならず~キルクルの法則~

こんばんは~。良い週末をお過ごしでしたでしょうか。

1.キルクルの法則

 以前、私のお客さんの中に実家が雀荘という方がいらっしゃいました(以下Mさん)。なので、週の内3~4日くらいは仕事が終わってから麻雀三昧の日々。週末は徹マン(朝まで麻雀の事)。

Mさんはよく椅子の上で片膝を立ててタバコの煙を明後日の方向に吐き出しながら、短いスカートから下着が見えるのもお気になさらず、景気よく雀牌を切り出しておられました。

もちろん私はそれまで麻雀なんてした事がありませんでしたが、「ハザカイさ~ん大丈夫ですよぉ~、私が教えてあげますよん♡」とMさんに言われ、まあ、お客さんが仰ることなので、断り切れずにやり始めたわけです。

赴任したてで香港オフィスとしての売り上げはまだゼロ状態。試験的に、と一番に注文を下さったのがMさんの会社でした。

「教えてあげますよん♡」

この言葉に騙されて、どんだけの授業料を巻き上げられたかわかりません。「教える」というのは、あくまでも単なる麻雀の手順であって、勿論、本当に勝てる打ち方、どうやって麻雀牌を読み取るのか・・そんな事は教えてもらえません。半年以上に渡って散々カモられた挙句、私はボスに泣きつきました。

私:「これ、経費で落としていいですかね?」
ボス:「・・・いや~それは・・・。」  

 そうして、そのお客さんとの麻雀には私のボス(以下ボスN)とうちの顧問会社のボス連中も混じるように。

それまでは、私以外のメンツはお客様側の上司や同僚の方達ばかりでしたが、いずれにしても、実家が雀荘をしていたMさんには敵わず、そこはいつもMさんの独り舞台。

Mさんのナスがママ、キュウリがパパ(←古過ぎる・・)
いつもガッポリ小遣いを稼いでホックホクのMさんでありました。

 私は元々頭の回転が速くなく、飲み込みも悪く、麻雀というものの仕組みがどれだけやってもわかるようにはなりませんでした。

そしていつも、揃えたいと思っている牌がなかなか来なくて、手を変えようと思ってそれを捨てた途端に、切る前には揃わなかった揃えたかった牌を引いているという現象が多々ございました。

これを「キルクルの法則」と呼ぶのだそうです。

「切ると来る」 
この中間の「と」は&ではございません
。「切ると、来る」

→「切ったら来る」わかりやすく逆説的に言えば「切らないと来ない」。

何か大事なものを手放すと、別の大事なものが入ってくる。何とも哲学めいた法則があったものです。

 さて、ボスN達が参戦し始めるとMさんウハウハ独演会の流れに不穏な暗雲が立ち込め始めました。

080904台風来た2

最初は「わ~い!またまたカモが増えた~!」という心の声駄々洩れで、ウェルカムムード満載だったMさん若干20代中盤(私も当時ギリギリ20代)、いくら実家が雀荘でビギナー相手に散々カモりまくって来られたと言えど、

なめたらアカンで、にっぽんのサラリーマン

そら団塊世代のお父様達は踏んできた場数が違います。
あ、ッという間に今度はMさんが集中攻撃を受けて劣勢に立つように。

 そういう事が何度も続くうち、Mさんからは麻雀のお声がかからなくなりました。その頃にはうちへの注文も定番化して、私の香港オフィスは売上というものを生み出し始めました。

Mさんは麻雀好きであられた一方、超絶酒豪でもあられ、それからは地道に接待を受けよう作戦に切り替えられたようで、よくお食事を一緒にさせていただきました。

お客さまとの食事なら、これは経費で落とせます。私としては、もう自腹が痛い思いをしなくてよくなったわけです。

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そして、一方のボスNは、このMさん麻雀がきっかけで、麻雀熱が再燃したらしく、顧問会社のボス達や、他のお客さんのボス連中に声をかけて麻雀をやり始め、それから暫く、私の周りではボス連中の麻雀ブームが続き、この間にボスNと別の新しいお客様たちとも親交が深まったようでした。

2.金は回さな入ってこんど?

 さて、うちのボスN、本当に豪放磊落な方でした。
麻雀もそうでしたが、野生の勘、特にお金の匂いにはとても敏感でした。
ボスNの麻雀を見ているとまるで魔法を見ているようでした。
完全に牌の居場所が皆わかっているような麻雀を打つ人でした。

数字にもめっぽう強く、商談でお金の話になると、利益率とか原価率とかを一瞬で暗算して私やお客さんをも驚かせておりました。

そしてとても気前がよく、手にしたあぶく銭(例えば麻雀で勝ったお金とか)は徹して事務所皆で飲茶ランチに出かけたり、商談帰りに高いケーキを事務所に買って帰って来たりして、全く手元に残そうという意識はないようでした。

余りの大盤振る舞いっぷりに「ちょっとは貯金して残しておかなくていいんですか?」と聞きましたらボスNは

「アホ言うな!あぶく銭手元に残してどないすんねん。あぶく銭ゆうたらな、どんどん回さなアカンねん。ハザカイ、金は回さな入ってこんど?

と言われました。小さい頃から、貰ったお金はコツコツ貯金するタイプだった私には、まるで「金は貯め込むより、使う方が大事やど?」と言われたような、とても斬新なお言葉でした。

それはあたかもキルクルの法則のように「回すと、入る」→「回さないと入ってこない」と言う意味にもとれました。

3.お金を回すという事

 庶民の私には、そんな事言ったって回すほどのお金がない人はどうすんの?金持ちの戯言?お金をバンバン使う言い訳?という気がしないわけではなかったけれど、ボスN始め他のお客様たちもボス連中で、羽振りのいい人に限って、「金は天下の回り物」と、所謂「お金をどんどんと回す」事に力を入れておられました。

「回す」というからには、そのお金は、自分の欲しい物を買ったり、という使い方ではなくて、本当に外に向けて使われるのです。ご馳走したりプレゼントしたり寄付したり。また、そういう方達はホントに不思議なくらい強運の持ち主でした。

 ある時、数社合同会議の中国出張中、帰途の高速道路で前を走っておられたお客様の車が対向車線を割って突っ込んできたトラックにあわや激突!
のところ、運転手の咄嗟のハンドルさばきで、わずかに前方側面をかすってスピン。

私とボスNは、ハッと息を呑み、急いで車を止めて、前の車の代わりにハザードランプを点滅させて、後続車に向けて手を振りながら運転手に回避誘導させてお客さんの車に駆け寄ると、幸いかすって回転しただけで、乗っていたのがベンツだったので、けが人も大した破損もなく(←ベンツすごい!と思いました)済んだのでした。

大して凹んでもいないベンツのバンパーを見ながら、ナイスミドルのお客様ボスS樣は「あ~こりゃ縁起がいいわいね。今晩の競馬が楽しみだわね♪」とあわや大事故、という状況でカッカッカと笑って、「これから警察来るから君たち先に香港に帰っといて~な」と仰いました。

「Sさん、昨日あの後1000万勝ったらしいで」と、興奮気味のボスNから伺ったのはその翌日でした。

その外にも、香港のマーク6(日本のロト6)でキャリーオーバーで膨れ上がった金額を機械選択の数字でなく、自分で塗りつぶして当てた方がおられたり、自分の周りのボス連中の金回りの良さに、ホントに「金は回してなんぼ」理論は正しいかもしれない、と思う私でありました。

4.情けは人の為ならず

 とは言え貧乏性なので、そんな大胆なお金の回し方はできずにいた私でしたが、フリーランスになって間もなく、ある仕事が舞い込んでまいりました。フリーランスになる前から、私はよくボランティアで通訳や翻訳を請け負っておりました。

私としては、自分の力をつけたいが為の練習台で会社員であった頃から、積極的にボランティア通訳に携わっておりました。フリーランスになってからのお仕事はそうしたボランティア通訳時に、私の仕事ぶりを目にした人たちから入ってまいりました。

自分の力を外に向けて発揮することで、それが巡り巡って自分に戻ってくる。

その時はボランティアで、無償奉仕のように見えても、実はそれは、自分が無料で自分の力を磨く場を与えてもらえる場であって、しかも自分の仕事ぶりと実力を、無料でプレゼンテーションさせてもらえている場であって、無料で実績を積ませてもらえる場。恰好のチャンスだった、と気づきました。

 業務の奉仕も、言い換えればお金の奉仕。お金を自分以外のところに使う、という事。あ~、やっぱり金は天下の回り物。キルクルの法則と同じで、「手放す」というのが先に来る事で、世界は回っていくのかもしれないな~と思った私でありました。

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