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詩のようなもの

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#詩のようなもの

火球

火球

お散歩の帰り道

流れ星よりもさらに眩い火球に出逢った

見たこともない大きな白緑の光を放つそれは

花火のように萎んで消えていった

恐竜を滅ぼしたのが隕石なら

この何万倍もの大きさの光が

彼らの目に映る最期の景色だったのかもしれない

よかったね、と安堵した

美しい、と心振るわせながら果てていく命を

私は生きたいと思った

太陽の子

太陽の子

“太陽に照らされているだけで
綺麗だって褒められる月が羨ましい”
と言う私に

“捻くれてるね”
ってあなた

ほんとは月も私たちもおんなじ

太陽に照らされてはじめて姿が露わになる

みんな太陽の子

太陽がこの世を照らす限り何があっても大丈夫

あなたも私も太陽の子

薔薇

薔薇

そういえば、今日「薔薇」という漢字を書けるようになりました。

人生の何の役にも立たないであろう知識を一つ獲得し、私は今日もささやかな喜びを感じています。

薔薇をバラと書くより薔薇と書けた方がどこか大人というものに近づけた心地がして、昨日よりもほんの少し私という人間を誇りに思えるのです。

その小さな誇りを一つ一つ蓄えて、私たちは立派になっていくのかもしれません。

立派というのは、多くの資産を

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AM1:00

AM1:00

AM1:00 街が寝静まったころ 

ベランダに出て一人月光浴をする

今日は半月

洗濯物の柔軟剤のにおい

規則的に点滅する信号

向こう岸できらきらと揺らめく光を放つ工業地帯

煙突からもくもくと昇っていく煙

自宅から向こう岸まで見えるなんて 

学生の頃は知らなかった

目が慣れてきたら小さな光を放つ星々も

ぽつぽつと見えるようになる

そういえば

星屑と人間は同じ物質から構成されて

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よいけれど

よいけれど

ゆるがないものもよいけれど

ゆらぎながら自らを整える方がよい

燃えたぎる炎もよいけれど

そっと目の前を照らす灯火の方がよい

周りをも照らす明るさもよいけれど

ちらっと影を見せてくれる方がよい

豪華な装飾で飾り付けるのもよいけれど

素のまま身軽な方がよい

どれもよいけれど

わたしはこれがよい

ひとつひとつ選びとるよろこびを

わたし知っているから

数多あるものからひとつ選びとる

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温もりを探すものたち

温もりを探すものたち

傘を刺そうかどうか迷うほどの小雨
水滴に反射するボヤけたネオン

全力疾走する大人
早く渡れと急かす車たち

液晶に奪われたいくつもの目
水やりをサボり続けた心

無機質なコンクリートジャングル
息を吸おうと背伸びした樹

愛おしさを向けたい対象が
ここにはいないような気がして
それでも毎秒毎分心臓は鼓動し続ける

そうだ ここにいた
私は私自身に愛おしさをあげよう
めいっぱい抱きしめてあげよう

東京タワー

東京タワー

惨めだ 哀れだ 儚げだ

抱擁の温度さえも思い出せない夜に
東京タワーは一段と輝いていて
そこに群がる大衆に目眩がした

素直に綺麗だとスマホのカメラで
シャッターを切ればよいものを
右ポケットから出せずにいる

こういうときに
素直に喜べる愛嬌が備わっていたら
私の人生にたった一人で
ここから東京タワーを眺める時間など
存在しなかっただろう

惨めよ哀れよ儚げよ

それでも
今日は湯船で体をぽか

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私はここに

私はここに

私が私であることを証明するのは

親の付けた名前じゃない

合宿までして取った運転免許証でもない

まん丸な惑星の万有引力圏で

軌道の外れをただ自由に飛び回る衛星のように

何にも邪魔されず

何にも染まらず

そうしてやっと私は私で在れるのだ

それが私

それこそが私

すくい

すくい

生きれば生きるほど
どんどん世界が
小さくなっていく気がして

それは“大人になってしまった”
ということなのか

単に“私が世界を限定してしまっている”
ということなのか

そのどちらでも哀しい気持ちは変わらない

『救い』なんて呼ばれるものは
ほんの御守りにしかならない
というのはついこの間知った真実

本当の救いはいつも自分の中に
ひっそり と ずっしり と
佇んでいる

人はそれを神だの仏

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たとえば

たとえば

たとえば

インスタで月蝕の写真が

次々と上げられているようなとき

わたしは部屋で一人日食の映像を

YouTubeで眺めていたり

たとえば

世の女性がせっせとバレンタインチョコに

溢れんばかりの愛を注いでいるようなとき

わたしはプロレス観戦に

熱を燃やしていたり

たとえばあなたが

たとえばきみが

たとえばわたしが

全く反対の行いをしていても

この地球は変わらず同じ方向に回

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すべてよし

すべてよし

そろそろ使命握りしめて走りたい

そう願っても100まで

のんびり生きそうな私の命

まだ20にも満たないあの子の命は

散ってしまって

その残骸は地球に降り注がれた

きっと見えなくてもあの子は笑っている

私たちに明日が来るように

あの子にも新しい明日が来るのだろう

何があっても全てよしとしてください

人生は未知なのだから

永遠のようなもの

永遠のようなもの

永遠を信じてやまない私たちは
その存在のなさに落胆した

この空も
この海も
このざらざらした砂の感触も
そして私たちの関係も

永遠なんてない
それならば永遠のような一瞬を
ポケットいっぱいに詰め込んで
大事に大事にしたい

火の粉にも満たない
一瞬の煌めきに祈りを込めながら
丁寧に丁寧に守りたい

かわいらしいでしょ、私たち

玄関

玄関

おかえり

あなたのためにシチューを
コトコト煮込んでいたよ

ただいま

今日も社会で精一杯生き抜いて
あなたの前でやっと息抜けるよ

いってらっしゃい

今日も私たちにとって
健やかな1日でありますように

いってきます

また今夜会えるのを楽しみに
頑張ってくるね

イタイ

イタイ

ジャンプしたら掴めそうな雲に乗って

風の気が向くままに運ばれて

辿り着いたあなたの国

ぼやけた記憶の森を掻き分けて

思い出したのはあなたが私の隣にいたこと

この世界でわたしとあなたしか持っていない

たったひとつの記憶

知らない花にはあなたの名前をつけて

沈みかけの夕日と3人で追いかけっこをして

ベッドの中で手を繋いで眠った

わたしの声はあなたに宿ってるかな

あなたの声はわたし

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