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自由化の先進国でも、寒波で大きな影響

以前は日本の電力自由化や携帯などの通信料金低下を目指した自由化(格安スマホ・MVNOや楽天などの新規参入者)に関する問題点を挙げましたが、特に小売りの電力自由化で手本としていたアメリカにて、先週の寒波を通じた様々な負の影響が出ているとのこと。

過去のシリーズ投稿は下記リンクをご確認ください。
-石油業界シリーズ(石油先物逆張り業界シフト今後の展開原油と金
-日本のエネルギーミックス(電力小売り意味とは再考今後の展開消エネから省エネ難題の解決方法カーボンニュートラルの未来EV移行へのスピード感時間軸と判断軸現場はつらいよ溜めた宿題自由化後の寡占か

上記記事の通り、先週米国は大寒波に襲われ、特に温暖な南部地域でも氷点下となり、エネルギー源の石油生産や天然ガスの供給網もストップ、電力は急激な需要上昇に耐えられず停電の家が続出、断水する世帯も多数見られ、人々のライフラインに大きな影響を与えたわけです。

オクラホマシティの2月の平均最低気温は0度ですが、16日(火)にはマイナス25.6度まで下がって、1899年以来、つまり122年ぶりの低温となりました。またテキサス州のダラス・フォートワースではマイナス18.9度まで下がって、観測史上2位タイの最低気温となっています。

このような状況を受け、バイデン大統領は大規模災害宣言を発出しました。

消費電力を抑える措置を受け、主要都市のダラスを含めて州全域が闇に包まれた。…当初は短時間ずつの「輪番停電」のはずだったが、州内全域で何日も続いた。…死者数は20人以上にのぼる。原因は交通事故や暖をとるためにともした火の不始末、自家用車内で暖まろうとした際に起こった一酸化炭素中毒などだ。…小売電力事業者は卸電力価格の急騰で打撃を受けており、これから経営破綻に追い込まれそうな会社も少なくない。

この度の停電の要因の一つが、テキサス州だけで完結する、自由化された電力市場であり、他州との融通はほぼない。ただこの制度のお陰で、競争原理が働き、通常時は電力価格が低下したわけでもある。

テキサス州だけが「テキサス・インターコネクション」と呼ばれる州内で完結する送配電網を持つ。それは州内で発電機能が停止した際に、他州から州境を越えて電力を融通してもらえないことを意味する。規制緩和が進んだテキサスの電力市場は競争が非常に激しい。送配電網はERCOTが管理し、発電事業者が発電した電力は卸電力市場に回される。これを約300社の小売電力事業者が買い取り、消費者に向けた値下げ合戦を繰り広げる。今回のような寒波にはめったに襲われないため、電力会社は設備の防寒対策に投資したがらない。

自由化の負の側面として、日本でも新電力を購入していた顧客が寒波の際に、市場連動型の契約により高い価格を払う必要が出てきたのと同じように、テキサスでも一部州民の電力料金も170万円になるなど、かなり高値になった模様。

電力やガス、水などライフラインの料金は、通常時安価に抑えられていることが求められるが、利益率が低いため、緊急時に必要な投資も抑制され、緊急時のライフライン停止という影響を受け、住民の負の影響も大きく出る。どのような状況でも上手く運営されるような最適解はわからないが、異常気象はこのようなインフラの緊急時対応の柔軟性向上を必要としているだろう。

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