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石油業界の長期シフト

石油また石油化学製品は我々の生活に密着しており、世界中でも重要な化石燃料資源であります。その中でも、簡単に言うと上流(石油の採掘、生産)、中流(製油所までの輸送)、そして下流(製油所での精製、そして小売りまで)といった部門に分かれており、部門ごとにコロナ禍での影響は様々ですが、同業における一定程度一貫したトレンドは以前からありました。(このコロナ禍で悪化した、とは言えるかと思いますが)そのトレンドについて簡単にまとめてみたいと思います。

複数回のNote(下記参照)でもお伝えしたように、近年の北米でのシェール革命やロシアの台頭等もあったことで、以前は中東やOPEC(石油輸出国機構)中心であった上流のコントロールが効きにくくなり、世界中で石油の過剰供給状態継続、またコロナ禍の世界需要に耐えられず、石油の商品価格が大きく下がるという現象が見られました。

その上流での過剰供給に続き、下流の製油所も世界的需要減の影響も受け、更に過剰設備状態に。下記記事にあるように、製油所も長期投資が必要な部門であり、且つ常に稼働することで一定の利益マージンが得られる、というビジネスモデルではありますが、世界中の過剰設備状態もあり、恒久的な閉鎖が必要な設備も見られる、ということです。

ここで問題を難しくしているのは、一旦の設備再編で製油所の収益性は一時的に改善するかもしれませんが、もっと中長期的な視点で見ると、二酸化炭素排出の減少を目指すパリ協定のような環境的な意識転換に基づいた、伝統的な資源ではない、再生可能エネルギーや省エネ、水素などへのエネルギー源の転換に加えて、各国政府の対応が異なる、という点です。

『アナリストは、石油精製業界の先行きについて、多数の製油所の永久閉鎖でマージンがようやく回復した金融危機後に似ているとの見方を示している。
各国政府が国内の石油供給確保と雇用維持を目的として救済策を繰り出すケースが多いため、どの製油所がこれから閉鎖されるか予測するのは難しい。』

加えて設備である為に、中長期的に競争力(要は低コストでどれだけ効率的に精製できるか)を保つためには、同製油所に対する継続的な投資が欠かせず、また新規の製油所(大抵、更に低コスト)との競争も激しくなり、といった悪循環にもなっている、とも考えられます。

GAFA+Mのようなプラットフォームビジネスをやっている会社の無形資産が高く評価される一方で、以前は国家戦略上重要であり、有形資産であるために確実な担保になる、と見られていた重厚な設備(石油生産や精製も含め)の価値が相対的に下がっていくという流れはすぐには変わらないのかもしれませんね。



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