安田ヤスヤ

詩や歌詞を書いています。他の人が書いた文章を読むことも好きです。歌詞に曲をつけてくださ…

安田ヤスヤ

詩や歌詞を書いています。他の人が書いた文章を読むことも好きです。歌詞に曲をつけてくださる方、曲をつけたいと思ってくださった方、ご連絡頂けると嬉しいです。

最近の記事

ひとりの朝に

欠伸を一つ噛み殺して 自転車を走らせる 早朝の街はとても静かで 考え事が捗った こんな朝にもあなたはどこか遠くを見て 曖昧な顔をしながら笑っているのかな 思い出なんていらないの ただただ今が欲しいだけ そんなことを思っていても 全ては記憶になっていく 新しい日々の始まりは 変わり映えもなくて少し寂しい 心配しなくても平気さ 私は元気です 繰り返し続く毎日を 愛せるようになるだろうか そうなるには今はまだ 時間が足りなすぎるだろう 不意に込み上げてくる感傷は僕の胸を

    • 残暑

      首元をぬるい風が ゆっくりと通り過ぎる 蝉の音もどこか弱い 残暑厳しいこの頃です 君と過ごした時は 魔法のように溶けて 僕は相変わらず この街を泳いでいる 息継ぎをする様に顔を上げて ふと空を見れば 不機嫌な太陽がこっちを 睨むように照らしていた あの時君が言いかけた 言葉を探してみても 通り雨にさらわれて 見つからなないまま こう暑いと本も 満足に読めやしなくて 君の輪郭がそっと 僕の胸をよぎる 逃げ込んだ喫茶店で 夏の影みたいな色の コーヒーを飲み干した 味もわ

      • 縁側

        縁側に座ってぼんやり眺めた世界は どこまでも穏やかで砂埃の匂いがした 膨れ上がった煩悩が入道雲になって 向こうに見える街をゆっくりと包んでいく 夏の底に溜まった思い出はどれも綺麗なままで 掬い上げた粒の中であなたが静かに笑っていた 明日また会えたなら次は何をしようか 限りある夏の日を惜しむ様に駆けていく グラスの麦茶はよく冷えていて 一息に飲み干して汗をかいた体を冷やす 畳に寝転んで簾の下から見た空は まるで暮れることを忘れてしまったかのよう 揺るがない幸せなんて

        • 寝不足

          朝ぼらけ煙る街 あやかしたちも眠りについて 街が動き出す 昇る朝日 動く電車 走る車 働く人たち 止まったままの僕の時間 湿ったアスファルトの匂いで こちら側に戻って来ても ピント外れの御託を並べて 闇に溶けてゆく 百鬼夜行に魅入られて 仮想現実で空中遊泳 真空パックの時間の中で 柔らかな嘘に包まれながら また眠る 夕闇に紛れた街 あやかしたちが目を覚まし 街が眠りに落ちる 沈む夕日 灯る灯り 香る食事 帰る子供たち 動き始める僕の時間 淀んだ排水溝の匂いで あ

          それは遠くからやって来る

          色とりどりの花束を手土産に それはやって来るのです 東からくる列車に乗って 遠く向こうの方から モノクロだと思っていた世界に 色をつけるような そんな夢物語でさえ きっと叶えてくれるでしょう 雨上がりの夜空に瞬く星のように 僕も少し浮かれてしまうのです 新しい毎日がここから始まるの お気に入りの服に着替えて外へ出よう 今までのことは全部忘れてしまって 見たことのない景色が広がっているから 今日と明日の境界を一跨ぎにして 終わらない歌で踊るんです 東から登る朝日が 僕を

          それは遠くからやって来る

          かくれんぼ

          閉め切った部屋の中で 一人きりの宇宙を漂う 瞳は閉じたままで イメージが加速していく このままどこまででも行けそうだった 夢が滲んで弾けて消えた 待っていたのは一人の部屋 相手のいないかくれんぼを ずっと繰り返している 声にならない声でずっと 誰かの名を呼んでいる ひとりきりで過ぎる夜は 静かに透き通っている ここにいるよと叫んだ声は どこにも届かずに僕に刺さる 浮ついた夜を縫って やってくる虚ろな光が 僕を連れ去ってくれないか ここではない何処かへ ここからどこに

          かくれんぼ

          夏の日のこと

          今年最初の陽炎が 見つからずに消えていく 夏の空気が街に滲んで アスファルトに立ち昇る ソーダ水が弾けたら どこからかプールの匂い 溶けかけたアイスをなめながら 横断歩道渡った 気になるあの子はどこにも居なくて ジェット機が空を震わせて飛んだ 挨拶がわりに鳥が羽ばたいた 夏が過ぎてく 振り向かないまま歩いていく 涙は見せずに 夢の中でならあの子に会えるよ 目を閉じた後も夏の日は続く 意地悪なほどに陽が照り付けてる 夏が過ぎてく 振り向かないまま歩いていく 涙は見せず

          夏の日のこと

          日々と泡沫

          座り込んで空を仰ぐ 綿雲は流れていく お構いなしに自転車は 先へ先へと駆けていく 河川敷を流れる風は 青い草の匂いがした 熱を帯びた身体をそっと 撫でるように吹いている やりたいことは増えても できないことが多くなった 自分を縛るものなんて 本当はないはずでしょう 簡単なことなどないけれど 難しく考えなくて良いよ 喉が渇いたらおいでよ ここで休んで行けば良い 横たわってうねる川は ゆるやかに流れている 日常は目まぐるしい速度で 川の流れを追い越した 夕方5時のチャイ

          日々と泡沫

          日々

          胸を張って 顔を上げて この日常はすべて あなたが作り出したものなのだから 嵐の夜も 冷たい朝も 誰に恥じることもない 精一杯の暮らしをしよう こんなはずじゃなかったと 言いたいわけじゃないでしょう

          水中都市

          水底に息を潜めて 悠久の時を揺蕩う 身を隠したのは自分なのに 見つけられるのを待っている 陽光さえも届かぬような 静かな流れの奥底で 世界の流れに忘れられ 長い眠りについている 時計の螺子を巻いた時 止まった街も動き出す 時間の鍵を飲み込んだ おとぎ話が蘇る 透き通るような静寂の中で 呼吸を始めた街を 足音を響かせて歩こう 踊るように軽やかに 秘密の中に分け入って 新しい希望を見つけだす 解き明かした未来には どんな日々を紡いでいこうか

          まぼろしの街

          川の向こうはまぼろしの街 憧れだけが暮らす街 行手を遮る流れの先で 陽炎のように揺らめいた 試すようにそびえている 川の向こうに建つマンションと 睨めっこをしていたら 音を立てて急行列車が橋を渡った 空っぽの列車にも 空っぽの僕は乗れなくて 空だけがやけに鮮やかで 昼間の月が笑う 溜息で編んだ翼で飛ぶには 今の体は重過ぎて 座り込んだままで どこへも飛べはしない 知らん顔して流れる川の 冷たい風に揺すられて 夢から零れて目が覚めた 川の向こうはまぼろしの街

          まぼろしの街

          静かな夜に海辺の街で

          波音が夜に響いて 空の果てはもう見えない 夜の向こう側には ここからはまだ遠すぎる こんなに静かな夜だから 夜空に舟を浮かべてみたい 背負ってきた重い荷物は とりあえず今は置いて行こう 始まりはいつでも突然で 知らぬ間に僕を捕まえていく 通り雨に濡れるように 優しく攫われてしまおう 営みを終えた街は ひっそりと息を潜めて 波音を枕にして ひとときの眠りにつく 夜に梯子をかけて あの三日月に手を伸ばした 眠った街を見下ろしても 眠った君は見つからない 偽りの愛を囁いた

          静かな夜に海辺の街で

          午後の街角

          木漏れ日がゆらゆらと形を変え 昼下がりの喧騒が吸い込まれていく 街路を通り抜ける風が通行人にぶつかって 巻き上げられた髪が風の行く先を教えてくれる ビルに区切られた空は嘘のように青く 降り注ぐ日差しは雨のように柔らかい 緩やかな時の流れに身体を預けたら 忙しない日常が少しずつ遠ざかっていく お気に入りの音楽と共に歩き出せば 休日はまだ始まったばかり

          午後の街角

          憂き世

          溢れた水は戻らなくて どうしようもないことばかりだね 仕方がないと言い聞かせて 流され流され生きている 転ばぬように気にしすぎて 姿勢もだんだん悪くなった 丸まった背中の後ろから ビル風が強く肩を叩く 忘れたい思い出ばかり 大体ちゃんと覚えていて 忘れたくないことは 記憶の底に沈んでいく 終わりの来ない追いかけっこ 急き立てられて時は過ぎる 暮れない昼はないけれど 明けない夜もないでしょう 川の流れに浮かぶ葉は くるくる廻り流されていく いつかは海に着くだろうか それ

          雨と夜ふかし

          カーテンの奥から染み出した夜が 部屋の中に漂っている グラスに落ちてきたそれを一息に飲み干せば 身体が夜に馴染んでいく 水の底を泳ぐように息を止めて 毎日を進んできた 少しのお別れをする様に大きく息継ぎをして 週末が始まっていく 大人たちは夜に紛れて やるせない日々を塗り潰す うまく行かない日常を それでも愛しく思うために 真夜中の手前で降り出した雨が 街を洗い流していく 夜はどんどん深さを増して 私の中に潜っていく 雨音は夜に紛れて 静かに私を包んでくれる 不意に溢

          雨と夜ふかし