憂き世

溢れた水は戻らなくて
どうしようもないことばかりだね
仕方がないと言い聞かせて
流され流され生きている

転ばぬように気にしすぎて
姿勢もだんだん悪くなった
丸まった背中の後ろから
ビル風が強く肩を叩く

忘れたい思い出ばかり
大体ちゃんと覚えていて
忘れたくないことは
記憶の底に沈んでいく

終わりの来ない追いかけっこ
急き立てられて時は過ぎる
暮れない昼はないけれど
明けない夜もないでしょう

川の流れに浮かぶ葉は
くるくる廻り流されていく
いつかは海に着くだろうか
それとも沈むだろうか

辿り着く場所も見えずに
大事なものさえわからない
それでも歩みは止めぬまま
憂き世の波を渡ってゆけ

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