見出し画像

今月の短歌 24年3月16日~3月31日

一歩ずつスタート地点から遠く ぶわっと季節風の後押し

夢魔が見せてた少しだけ前の過去 萎れた花は水を欲しがる

インスタントラーメンが不味いなんて思えるような日が来ようとは

すかすかとする三階の角部屋で生活音を抑えて暮らす

スライダーピッチャー同士の認識キャッチャーの膝目掛けて放る

はじめての野菜炒めにウェイパーを 実家の名残り少し感じて

待ちぼうけの文字列その身なり見ず判を押される桜に似せて

手と毛先 再現力を披露する美容に生きた過去を愛して

寝てるふりしたいからではなく寝てるふりしかできない だから寝てる

自己肯定のぶつかりが持てる者持たざる者を選ぶ現実

メラビアンの法則 震える手で差し出す手紙の行方は彼方

夢、希望、普通の社会、これから、を賭け狂うよにうたう、死ぬまで

吃り声 コンプレックスと付き合う 何も臆することはないのに

ポケットに手を突っ込んで歩く癖「俺」という自我隠さなければ

祝日のみんなはみんなみんなの輪みんなになれないみんなが奉仕

否定する癖がある父を否定する僕をなだめる母へ。ごめんね。

とげとげの節目節目の終わり見る 倒れるからだ こんな日なのに

ふやけなければ食べられない朝食 匙に正解なんていらない

アルファベット 好きな文字は「X」です 終わりと未来一度の逢瀬

「旧Twitter」と呼べ呼べ青い鳥 予後のさえずり Tell me why

人中が目立ちはじめて頬肉も「へ」の字の口角も鏡は映す

水底で半透明になる意識からだを締める水圧は魔法

線香の香りに満ちる法事にて鈴の音沁みて生きる実感

我逢人 その背中かと見間違うあなたとわたし すれ違う価値

数億回された聴いたことないポップスよ 今をつらぬけ

骨拾う身近な人が小さくて生きた証と咲く花の枝

感動をスマホ通して見る時代 拡散されて満ちてく時代

手の震え タッチパネルの誤入力 怪しいサイトへ入っていくよ

接点のない君からのにおわせは淋しそうに見えただけでした

「におわせてる」と言われても憶測が飛び交うだけの無味なトピック

帰り際にある点滅信号をそろりと渡る世捨て人の背

武器ひとつ持たず戦線から離脱 優しい雨は薄情でした

生きたいです。 「当たり前」を得たいのに遥か手前の機会損失

苦手なものと鉄の壁 まつりごとが制度の谷で嬲る嬲る

より深く潜っていても群青の森か海かで息はできるさ

勿忘草 失くした目と大脳と生きる 「きれい」は爪先に出る

忘却を知らない君が逃避だと言って光に満ちた気になる

人生の勉強 春に始めるは英語の漫画読み終えてから

アメリカのドラゴンワールド 異国の言語に寄り添う 記憶は超える

辻風を身に纏う日は君と走ったラストラン思い出します

自分の「スキ」を優先させていけばほら、わかる人にはわかるのさ

くたびれたクレリックシャツに袖通す ありきたりの雨音聞くため

この記事が参加している募集

#私の作品紹介

97,050件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?