やなした

〆切の妖精

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記事一覧

距離を超える好意

寂しさ、怒り。 共依存、寄る辺なさ。 成功体験、リスクヘッジ。 うん、いずれもしっくりこない。 「連帯感とは何から生まれるのだろうか」 と、道東を離れてから折につ…

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4年前
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本棚専門店を作りました。

東京・日本橋の髙島屋S.C.(新館)の5階に「ハミングバード・ブックシェルフ」というお店を作りました。 (たぶん)実店舗としては日本でここだけの(ひょっとすると世界で…

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5年前
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ソヨンによるニシャーダのためのカレーの話 著:土門蘭

 ソヨンは大学の同級生で、韓国から来た女の子だ。  文学部国文学科という、日本の文芸作品を研究するその学科に、ソヨンは留学生として入学していた。ふっくらとした白…

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6年前
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東京

東京は好きだ。 雪みたいな非日常にも、パニックを堪えて秩序を作るところなんかも好きだ。 (そして、駅員さんたちは今回も東京のヒーローであり続けてくれた) 大雪が…

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6年前
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恋人の選び方

伏見の南、宇治の西。そこで先ほど、僕は独りになった。 このままだと、今日中に東京に戻れないかもしれない。フィールドワークで予定が遅れていた僕は、だから、近鉄京都…

やなした
6年前
12

文化比較の入れ子構造

つらいつらいと言う、そんな男の近くにいる女の子が一番つらいよね。なんて、ポリティカル・コレクトネスでも、保身の弁証でもなく、僕は本心から思うけれども、今したいの…

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6年前
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言葉の四積層

先週の訪バンクーバーは、あたりまえだけれども、久しぶりに英語ばかりでコミュニケーションを行うことになった。大らかなカナダの英語はとても聞き取りやすかったし、人々…

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6年前
13

ワークの四分儀

「いい本を作る」ということ。 これまでは、それが僕の仕事のすべてで、これまでは、とてもシンプルなはずだった。 でも、少し先まで見てみると、単純に作るという行為だけ…

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6年前
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夜の魔法

11/27/2016 そういえば友だちと飲むときは、バカバカしい話しかしない。 本当にくだらない話ばかりで、次の日の朝に、夜の魔法が解けたら、どうしておもしろかったのか、ま…

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7年前
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ミッドナイト・ラン

10/18/2016 今日はバタバタだった。 僕がメールをためておくからいけないのだけれども、今日の今日、大阪から来てくれるTGさんの打ち合わせに、急遽、合流させてもらう…

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7年前
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ベーコンエッグ

あらためて、自分が日ごろから執心しているものをプレゼンテーションするとき、その一点突破力というか、チームの訴求力というか、人心掌握のすごさは、群を抜いているなっ…

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8年前
1

そういえば、

「台風一過」を「台風一家」だと思っていた僕の友人は、今ごろ何をしているのだろう、なんて、思いが飛ぶのは今日みたいな嵐が去った朝ですね。机に座って、ラップトップを…

やなした
8年前
1

2014年の読書経験

 自分のために書き残しておくノートに、正確性を求めるときりがないけれど、たしか、あれは、2014年のはじめだとおもう。僕はキンドルを買った。  プラットフォームとし…

やなした
8年前
3

ヒコーキ

 たそかれの時間に西の空を見上げると、オレンジの夕方と藍色の夜が、くっきりと、きれいに、まるでフロートカクテルみたいに、二層を作っていることがあります。それらは…

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9年前
8

年表の色

 フワフワと、世界のどこかに浮かんでいる仮想の雲の中から、一曲ずつ、音楽をダウンロードすることになった今、それでも僕は、アルバムという概念を知った上で音楽を聴く…

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9年前
13

テセウスのおでん

おはようございます。 「おでんと哲学」の時間です。今日は皆さんと、おでんを使って、アイデンティティについて考えていきましょう。 ええ、そうです、おでんです。あな…

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9年前
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距離を超える好意

距離を超える好意

寂しさ、怒り。
共依存、寄る辺なさ。
成功体験、リスクヘッジ。
うん、いずれもしっくりこない。

「連帯感とは何から生まれるのだろうか」
と、道東を離れてから折につけ、僕は考えている。

連帯感でなく、チームやパーティと言い換えてもいい。
つまり、目的を持ったある種の共感。
それは、何から生み出されるのだろうか?

去年、道東でタクローくんという不思議な男に出会った。
(本稿のカバーフォト、

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本棚専門店を作りました。

本棚専門店を作りました。

東京・日本橋の髙島屋S.C.(新館)の5階に「ハミングバード・ブックシェルフ」というお店を作りました。
(たぶん)実店舗としては日本でここだけの(ひょっとすると世界でも珍しい?)本棚専門店です。

かもめブックスをはじめ、これまでに、僕はいくつかの本屋を作り、そこで本を売ってきました。すると、「そもそも本屋に来ない人」に本は売れないんだなってことに思い至ります。(まあ、考えたら当たり前ですね!)

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ソヨンによるニシャーダのためのカレーの話 著:土門蘭

ソヨンによるニシャーダのためのカレーの話 著:土門蘭

 ソヨンは大学の同級生で、韓国から来た女の子だ。
 文学部国文学科という、日本の文芸作品を研究するその学科に、ソヨンは留学生として入学していた。ふっくらとした白いほおに丸めがねをかけ、小さな背中に重たそうなリュックサックを負っている。そこには、本や辞書が入っているようだった。
 よく学ぶ子だった。授業では、流暢な日本語ではきはきと発言した。決して遅刻をしないし、レポートを忘れることもなかった。居眠

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東京

東京

東京は好きだ。
雪みたいな非日常にも、パニックを堪えて秩序を作るところなんかも好きだ。
(そして、駅員さんたちは今回も東京のヒーローであり続けてくれた)

大雪が昨日をカラフルにしてくれて、普通が普通じゃなくなった。

昼、大手企業さんのマネージャー研修に、校閲を情報リテラシーとして、3時間ほど授業をした。北海道から鹿児島まで、全国から100人弱も集まってきてくれたマネージャーさんたちは、ちゃ

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恋人の選び方

恋人の選び方

伏見の南、宇治の西。そこで先ほど、僕は独りになった。
このままだと、今日中に東京に戻れないかもしれない。フィールドワークで予定が遅れていた僕は、だから、近鉄京都線の大久保駅で車を降りて、京都まで電車で移動することにしたのだ。

京奈を結ぶ24号線から少し外れた大久保というところは、サバーブの起点のひとつで、宇宙に浮かぶ観察衛星からは、無個性な小さな光の粒に見えるかもしれない。けれども、そこには確か

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文化比較の入れ子構造

文化比較の入れ子構造

つらいつらいと言う、そんな男の近くにいる女の子が一番つらいよね。なんて、ポリティカル・コレクトネスでも、保身の弁証でもなく、僕は本心から思うけれども、今したいのは、そんな野暮な話じゃないんだ。
僕は、映画「男はつらいよ」が大好きなんだってことだよ!

参考:
https://www.youtube.com/watch?time_continue=2&v=a_iW0rFYzuA
(第12作 男はつら

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言葉の四積層

言葉の四積層

先週の訪バンクーバーは、あたりまえだけれども、久しぶりに英語ばかりでコミュニケーションを行うことになった。大らかなカナダの英語はとても聞き取りやすかったし、人々のマインドも開かれていたので、穏やかな時間だった。聞かれて答える、問いかけて返ってくる、いつものそれらの行動を、いつもでない言葉で行うという、それだけの僅か3日間はとても楽しかった。
うん、たまにはいいよね。

シーズンは秋に移ったばかりで

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ワークの四分儀

ワークの四分儀

「いい本を作る」ということ。
これまでは、それが僕の仕事のすべてで、これまでは、とてもシンプルなはずだった。
でも、少し先まで見てみると、単純に作るという行為だけでは成り立たなくなりそうで、本を売ってみたり、校閲を情報リテラシーとして再定義する必要があったり、ローカルについて考える必要があったり、会社の仕組みを再度構築しなおす必要があったり、異業種との交流がとても重要だったり、なんだか、この2年で

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夜の魔法

夜の魔法

11/27/2016
そういえば友だちと飲むときは、バカバカしい話しかしない。
本当にくだらない話ばかりで、次の日の朝に、夜の魔法が解けたら、どうしておもしろかったのか、まったく理由がわからないことが多い。それくらい、くだらなくて、愛おしくて、バカバカしい。

昨晩もダラダラと飲んでいたら、L字カウンターの奥にいた友人がじいっとモニターを見ている。まばたきすらしない。
「ねえ、恭ちゃん。なんであの

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ミッドナイト・ラン

ミッドナイト・ラン

10/18/2016
今日はバタバタだった。

僕がメールをためておくからいけないのだけれども、今日の今日、大阪から来てくれるTGさんの打ち合わせに、急遽、合流させてもらうことになった。神楽坂から城南エリアへ小さなジャンプ。歩いている人がみんな背広で、気のせいか街の景色が黒い。でも、こういうのきらいじゃない。丸の内あたりよりも、もっと堅い感じ。

無事に打ち合わせが終わって、アフターミーテ

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ベーコンエッグ

ベーコンエッグ

あらためて、自分が日ごろから執心しているものをプレゼンテーションするとき、その一点突破力というか、チームの訴求力というか、人心掌握のすごさは、群を抜いているなって思う。
最近、自分でも仕事しなくちゃと思うけど、ベーコンエッグの画像検索をずーっと見ていて、定食屋でチープな主菜にあれば必ず頼んだりして、この料理が好きで好きで、気になってしょうがない。ああ。

色みかな? 匂いかな? 味かな?
そのビジ

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そういえば、

そういえば、

「台風一過」を「台風一家」だと思っていた僕の友人は、今ごろ何をしているのだろう、なんて、思いが飛ぶのは今日みたいな嵐が去った朝ですね。机に座って、ラップトップを開く。昨日入れたポットのコーヒーがぬるくなっていて、これはこれで嫌いじゃない。もうひと踏ん張りがんばるぞ!

今、僕は人生ではじめてといっていいと思う「プレゼンテーションの資料」を作っていて、慣れない作業に手こずっています。プレゼンテーショ

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2014年の読書経験

2014年の読書経験

 自分のために書き残しておくノートに、正確性を求めるときりがないけれど、たしか、あれは、2014年のはじめだとおもう。僕はキンドルを買った。

 プラットフォームとしてのキンドルは、いわばただの空っぽの箱で、そこには(本といってもいいけれど)コンテンツが入っていなくては、役には立たない。……はずなのだけれども、3Gの、あるいはWi-Fiの速度でe-inkのブラウジングなどは、男の子的なガジェット心

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ヒコーキ

ヒコーキ

 たそかれの時間に西の空を見上げると、オレンジの夕方と藍色の夜が、くっきりと、きれいに、まるでフロートカクテルみたいに、二層を作っていることがあります。それらは混ざることなく、藍色がじわじわとオレンジを押し下げ、身応(やが)て、電柱に灯りが点ったり、車の目が光ったり、気がつけばまわりは夜ばかりになっていき、そのステキな時間は過ぎていきます。これはもちろん、いつでも見ることができるわけではなくて、ふ

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年表の色

年表の色

 フワフワと、世界のどこかに浮かんでいる仮想の雲の中から、一曲ずつ、音楽をダウンロードすることになった今、それでも僕は、アルバムという概念を知った上で音楽を聴くことが、クールなことだと信じている。

 僕はトモフスキー氏の「NEGACHOV & POSICOV(ネガチョフ アンド ポジコフ)」を、今でも色あせない名盤だと思っていて、その補完し合う曲群は「盤」という概念こそが相応しい。テープに曲

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テセウスのおでん

テセウスのおでん

おはようございます。
「おでんと哲学」の時間です。今日は皆さんと、おでんを使って、アイデンティティについて考えていきましょう。

ええ、そうです、おでんです。あなたの聞き間違いではありません。アイデンティティについて考えるのに、我々はおでんを使おうとしています。
冴えたやり方ですよねえ。だって、哲学を嫌いな人はいても、おでんを嫌いな人はいないでしょう?

ハ~イ! 実存、唯物、プップクプ~!(ジン

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