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【旅エッセイ】初対面のネパール系の爺(70くらい)に「お前に会えて本当にうれしい…」と言われ、爺も私なぜか泣き出し、その後心の中で日本の先人たちに敬礼した話。
インドのダージリンに居たときのこと。
いつも通りオモシロイことに出会わないかと思いながら、お気に入りのカフェを目指して歩いていると、ネパール系の爺(当時見た目70歳くらい)に突然声をかけられた。
「お前は日本人か?」
このような声を掛けられるのは、旅をしていれば頻繁にある。
そして、この次に発される言葉の多くの場合、
「俺、めっちゃ日本好きなんだよ!」
的な、ライトで好意的な挨拶みたいな感じであることが多い。
しかしこの爺の口から発された次の言葉は、想像を超える今まで言われた事のない言葉だった。
「お前に会えて本当に嬉しい…」
こう言いながら、私の右手を取り両手で強く握りしめてきた。
――んん?新手のスリか?タイとかでよくある抱き着きスリの爺Verか?
ちょっと確認してみるか…
爺の両手は…今私の手を握っている。
爺の目は…まっすぐ私を見ている。そして、何か感極まっているような少し潤んだよう感じだ。何か危害を加えてきそうな感じはしないけど…
うーん!わからん、わからん。まったく何が起こっているのかわからん。こんな時は、とりあえず万国共通の武器、笑顔を見せることだ!そして、笑顔のまま爺の次の言葉を待ってみよう。
…爺の口が動きそうだ。この不思議な状況で、この爺は一体何を口にするのだ?
直接的な「金をくれ」か?
間接的な「私はめっちゃ貧乏なんだ…」か?
まさか、「一目ぼれした(はぁと)」ではないだろう。むしろそうであってくれ。
さ、爺が言葉を発するぞ…
「私はグルカ兵だった。」
?????
グルカ兵!?
確か、ネパールの山岳地帯に昔居た、戦争の時にお金をもらって戦う傭兵集団だったはず。そうだ。この人はネパール系の顔立ちだ。そうか、グルカ兵だったのか…って、そこからなぜ「あなたに会えて嬉しい」になるんだ???まだ何にも分からないんですけど。
「お前たちは勇敢だった。」
?????
お前たち?私は少なくとも今まで爺に会った事はないし、誰かと人間違いしてないか?そうだ!きっと人間違いに違いない!だから、それを伝えてあげないと!なんか間違って感極まっているの悪い気がしてきた…ちゃんと伝えないと!あれ?まだ何か言おうとしてる???
「我々は、あの時選択を誤った。我々はお前たちに付くべきだった。私はそう思ってるし、後悔している。本当にお前たちは勇敢で、素晴らしかった…お前は知らないだろうが。」
………ここはダージリンで、この人はネパール人のグルカ兵で、お前たちは勇敢に戦った…
あ!そうか!この爺は、第二次世界大戦の話をしている?日本軍はミャンマーを越えてインドの東方まで進軍していたはず。そして、グルカ兵は、イギリスの味方をしていたはず。
そこから、爺はとめどなくその時の話、日本兵がどれだけ勇敢に戦っていたのか、そしてその姿勢に驚愕し、感動し、日本兵を尊敬しているのかを、日本人に会ったらそれを謝りたいと思っていたと、涙ながらに言葉に熱を帯びさせ話をしていた。
――私はこの爺の話を聞きながら、考えていた。
この爺にとって、日本兵は敵であったはず。しかもただの敵ではない、命のやりとりをする相手。
普通、勝った者は、敗者に「お前らも強かったよ」みたいなスポーツマンシップ的な言葉はリップサービスを含めてあるかもしれないが、その敵に「お前達は素晴らしかった、勇敢だった、尊敬している」とまで言わしめさせている。そして、勝者に「私たちが間違っていた」と言わせているなんてありえない!
………先人たちは、一体どのような戦いをしたのだ?
人の心を動かす戦闘。命のやりとり。
先人たちがこのように戦い、その結果日本は国体を維持し、今がある。いや、それだけでなく、尊敬を集める国になっている。
私は、この先人たちの礎の上に立っていて、今生かされてる。
では、私は一体、後世に何か残すことが出来るのだろうか。
そんな事を考えていると、私の頬にも涙が伝った。
そんな、とある旅の1日だった。
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