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junaida展「IMAGINARIUM」で召されて来た
本屋さんで友人の絵本選びを手伝っている時、ふと気になった本がありました。「Michi」という字のほとんどない絵本。
絵本というよりも、画集と言った方が近いのでは? そう思うほど精巧に書き込まれた絵の中を、男の子と女の子がお散歩する絵本。すっかり魅了されて、私は絵本選びも忘れてしばらく見惚れてしまった次第です。
それから間もなく、本作を手掛けたjunaidaさんの個展が東京・立川にあるPLAY! MUSEUMで2022年10月8日(土)―2023年1月15日(日)の間に催されると聞いて、私はとても楽しみにしており、早速足を運びました。
友人を誘ったら「11月後半以降なら行けるよ」と返事が来たので、「それまで待てないから先に行くね」と、まるで洋画の死亡フラグのようなことを言いながら……。
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※以降、展示の内部写真を含みますので、訪問前でネタバレされたくない!という方は訪問後に閲覧下さいませ。なお、本展示は写真撮影可/動画NGでした。掲載写真は全てその範囲内で撮影したものなので、ご安心を。
丁寧に描き込まれたふしぎな世界に迷い込む
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「序章 輪郭の扉」を抜け、「第1章 交錯の回廊」に入るともう目の前に広がるのはここではないどこか。
すごいすごいとは思っていたけれど、本当に描き込みがすごい。語彙力が吹っ飛んでしまいました。
それと同時に気付いたのは、「めちゃめちゃ描き込む」という「圧倒的情報量」が、この世界観に説得力を持たせているのだなあと。
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会場では、お母さんに抱っこされながらあれこれ指差して「〇〇がある!」とボルテージを上げるお子さんやら、じぃ……っとしゃがみ込んで一つの絵に見入る人、細かに写真を撮り続ける人など、お客さんたちが十人十色の引き込まれ方をしていました。
junaidaさんの絵は、全体的に可愛らしいは可愛らしいのですが、どこか不穏さもある可愛らしさがいいんですよね(もちろん作品によります)。この細やかさが、転じて箱庭のように思えて来て……。
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会場奥へ進むほど実感しますが、綺麗な色味、可愛らしいモチーフだけれど、肝心の顔が見えないとか……。優しいお化けさんだけど、足元から覗くのが骨だったりとか……。そういうところが垣間見えるので、もうどうにもこうにも。
このふしぎな世界に飛び込んだら、抜け出すのは一苦労です。
音のしない絵、会場で流れる音楽
私がjunaidaさんの絵で特に好きだなと思うのは、とんでもない描き込みだけでなく、「絵から音がしない」ところ。これはもちろん、「音がする絵」が嫌いというわけではありません(私は音楽を聴くのが大好きなので)。
junaidaさんの絵には、楽器が登場する作品も少なくありません。絵の中で誰かが躍っているような場面も見られますし、人がわいわい集まっている光景も多いです。
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だけど、音がしない。その精巧なのに現実味のないふしぎな雰囲気が、私はとても好きなのです。先述の通り、「めちゃめちゃ描き込む」=「圧倒的情報量」という視覚的な情報がこんなにあるのに、とても静かで額縁の中にある絵のよう(展示されてるからそりゃそうだ、なんて野暮なことは仰らないで下さいまし)……。
自分とは別の世界の出来事を、こっそりのぞいているような気分になる。その雰囲気が大好きです。
「第1章 交錯の回廊」を進み「第2章 浮遊の宮殿」へ向かうと、視界が開けると同時にピアノのアンビエントミュージックが耳を撫で始めます。
これはもう、極まったな……。
私は思いました。極まった。私の人生の中で、この瞬間は「美しい時間」の代表的な一つの場面になるだろう。そう思いました。
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美しく、はらはらと音が空から落ちて来る。そんな中で鑑賞するjunaidaさんの絵。そこに、子どもがはしゃいでいる声や足音、親御さんの声という極めてのどかな音が混ぜ合わさる……。
夢のような現実のような絵画に囲まれて、なんて美しいんだ……と、しばらく呆然としました。
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この色彩は原画でなければ見られない
続く「第3章 残像の画廊」は、本や企業のキャンペーンなどで活躍した絵も多く、西武鉄道のポスターには見覚えある電車が描かれていたりしてまた様相が変わってきます。クリスマスのモチーフ(ツリーやそりなど)のように、わかりやすく親しみやすい絵もあってわくわくします。
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ここまで来て察していましたが、どれだけ印刷技術が発達しても、原画の美しさを再現するのは難しいですね……。
junaidaさんの絵は絵の具で描かれているため、展示されているのは全ていわゆるアナログ絵。ですから、紙の凹凸や塗りの濃淡、鉛筆の跡もあれば、絵の具の種類によっては表面がキラキラしているものもあります。
はあ、たまらないな……。
心が躍る赤、吸い込まれそうな青、はしゃぐ黄色に全てを飲み込む黒……。
こんなに綺麗な色が一堂に会して、細やかな、時に大胆な構図の絵に使われているのですから。天国みたいでした、天国。ここに住まわせて下さい。
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やだ、何この透明感……
なにせjunaidaさんの作品を鑑賞し始めて間もない私ですから、junaidaさんの作品の印象は『Michi』や『笑うマトリョーシカ』のような、べたっと濃い目に塗った鮮やかな色彩でした(好きです)。
それがどっこい。「第4章 潜在の間」に立ち入った瞬間、『LAPIS・MOTION IN THE SILENCE』の原画を見て、心が爆ぜ散らかしました。好きすぎて。
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こちらは、暗闇の中を舞台に鉱物をモチーフにした様々な絵のシリーズなのですが、もう、本当に……。
やだ、何この透明感……。
どうやらこのテーマで本が出ていて、2015年に個展をやっていらしたそうです。見たかったなあ。
私は鉱物がちょいと好きで、時々ミネラルショーなんぞに行っては石を買っていました(宝石やスピリチュアル系ではなく、自分の場合は鉱物が好きです)。そうした自分の好みもあって、『LAPIS・MOTION IN THE SILENCE』の原画を見つけた時は身悶えました。
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絵本などで見られるはっきりした色彩とはまた違って、闇の中で輝く透明感のある鉱物の数々を「纏った」人たちの姿。水晶はドレスになり、アポフィライトはドラムになり、アメジストは屋根になり……(石が違ってたらすみません)。
硬いはずの鉱物が、柔らかく人を包み込むものに変わっているのは、本当に発想になかったのでうっとりしてしまいました。(あと、アポフィライトが大好きなので、junaidaさんの絵柄でこの石の色味が見られたの嬉しかったです。)
貴方、透明なものもお描きになるのね……。
この絵素敵ね、シェフを呼んで頂戴……。
好きすぎて感情が昂り、訳がわからずそんな気持ちでいっぱいになりました。
また、同じ展示スペースには布がひらひらしたシリーズ『THE ENDLESS WITH THE BEGINNINGLESS』もあって、やはりこれまでの展示とは違う質感の絵に見惚れてしまったんですよね……。
布のひらみは人類のロマンなので……。
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柔らかいもの、透明感のあるものまで描きこなしてしまうなんて、なんて恐ろしい才能……。
本棚で心が更に爆ぜちゃった
展示の最後には、こんな本棚もありました。
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そこに……。
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だ、daft punkって書いてあるーーーーーーーーー!!!!
爆ぜちゃった。嬉しくて。爆ぜちゃいましたね。
真顔で写真撮ってましたけど、心は今日何度目かの爆ぜを迎えて天に召されていきました。
ありがとうjunaidaさん、おかげで無事成仏出来ました。
心が爆ぜたので……
色々買いました。
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欲しいものを全部買っていたらキリがないので、今回は入手しませんでしたが、『UNDARKNESS』とか『Home』とか『EDNE』とかほしい画集がたくさんありましたし、表紙を手掛けていらっしゃる『ロドリゴ・ラウバインと従者クニルプス』も読みたくなりました。
なぜ絵の個展を見に来て積読が増えるのか。
でもまあ、積読はあればあるだけあったほうがいいですから、仕方ありませんね。(『Michi』もここで取り上げています。積読未満の本も増え続けているというのに……👇)
あと、心が爆ぜすぎて疲労困憊したので、カフェでレモンケーキを食べました。レモンの甘酸っぱさと素朴なケーキの味、そしてアイスクリームの組み合わせが最高。
コラボメニューもあるので、そちらご興味ある方はぜひどうぞ。
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最後に
ちなみに、平日でだいぶ空いていたこともあったので、私は絵をじっくり見たり行ったり来たりして、だいたい1時間で回りました。大人一人で自由気ままな鑑賞でしたので、これでも速いペースだと思います。ご参考まで。
ああ、出来ることなら、もう一度展示の記憶を失くして最初から観に行きたい……。あの世界観に浸っていたい……。そう思える展示でした。
どうもありがとう、ありがとう世界。ありがとうjunaidaさん、すべての関係者各位……。
また、ホームページ曰く「本展はPLAY! MUSEUMの会期終了後、数会場を巡回予定」とのことなので、立川に足を運べない方でも、もしかしたら行きやすい場所で開催されるかもしれません。
ぜひたくさんの人にご覧頂きたい、そして私は何度も記憶を失くしながら見たい、そんな展示でした。
行ってよかったー!
とにかく素敵な個展でした。展示詳細や最新情報は、こちらの公式ホームページにてご確認下さいね。
また、今回私は初めてPLAY! MUSEUMへ行きました。正直、この動画がなければたどり着けなかったと思います(街が立体的なので、立川ビギナーには地図だけだとわかりにくい)。
ありがとうPLAY! MUSEUM……。
※掲載写真は、展示作品の無断使用を避けるため、なるべく、絵が正面から写っていない・一部だけしか見えない・背景が映り込んでいるものを選んでいます。そのため、多少見えにくいのはご了承頂けますと幸いです。
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© 2022 Aki Yamukai
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