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「闇と光 ―清親・安治・柳村」で憧れを鑑賞する

 私が光線画を知ったのは、2019年にLACMA(Los Angeles County Museum of Art)のインスタアカウントが投稿した、小林清親作『御茶水蛍』でした。

 そこから時は流れて2022年。とうとう、太田記念美術館で光線画をはじめとする風景画に着目した展示、「闇と光 ―清親・安治・柳村」が開催されると知った私は大歓喜しました。
 やっと憧れの光線画をたっぷり鑑賞できるぞ! と。


訪問前から好きな美術館

 太田記念美術館はnoteやTwitterでの情報発信、フェリシモコラボなど、メディア活用に積極的かつちょっぴりシュールで面白い内容を発信してくれるなぁ〜! という印象があります。
 私は今回が初めての訪問だったのですが、色んな場面でよく見かけていたこともあり、訪問前から親しみを覚えていた次第です。


光とか闇とか……

 いざ足を運んでみると、結構こじんまりとした二階建ての美術館。しかし思ったより賑わっていて驚きました。

 個人的には、本展示(訪問時は前期日程の度でした)は最初からクライマックス。小林清親の『御茶水蛍』を始め「あ〜〜、これこれ、これが観たかったんだよぉ!」という代表的な作品で幕を開けます。
 私は『御茶水蛍』で光線画に一目惚れしたので、生で見られてとても嬉しく、何度も鑑賞しました。
 
 展示全体で見ると、思っていた以上に夜以外の時間帯の風景画が多かったのですが、どの時間帯も楽しく拝見しました。暗闇の色合いをあれだけ繊細に使い分けるのだから、昼間の空の鮮やかさは言うに及ばず百聞は一見にしかず……。


実際に観るからこそわかる質感

 画像だけ見るならインターネットで検索すればいいのですが、実際に作品を鑑賞したからこそ面白い! と思ったことがありました。

・ニス引き

 版画の表面にニスを塗ることで、全体的に作品が黄色を帯びます。私は、ニスって単純に作品の保護として使うものっていう印象があったので、ニスを塗ることによって生じる現象を作品に活かすというのが新鮮に感じました。しかも浮世絵版画に使うなんて意外だなぁと。
 表面に光沢が出ると同じ絵柄でも印象が変わりますし、小林清親『浅草田甫太郎稲荷』なんかでは“かつて観光地として栄えた景色の寂れた雰囲気”を効果的に醸し出していて、そういう使い方もあるんだな〜と興味深かったです。

・四つ切判錦絵

 普通の浮世絵のサイズを四等分にした、絵葉書サイズの作品がありました。

 ミニチュアみたいでめちゃめちゃ可愛い!
 作品の絵葉書を買うと、どのサイズの作品でも全部同じ大きさになってしまうので、この「ミニチュアみたいで可愛い」感じは、本物を鑑賞しないとわからないですね。
 実際、井上安治は小林清親の作品を模写した四つ切判錦絵を作っていて(模写したものも元の作品も展示されているので見比べられます)、大きい絵を小さく細かく再現した様子が大変ようございました。

・小倉柳村、ミステリアスすぎる

 本展示のキービジュアルに使われているのは、小倉柳村『湯嶋之景』。でも、この人ってどんな人なのかわからないそうです。住んでいた住所までわかっているのに、版元(絵師に注文する人)も含め詳細謎なんだとか。

 展示では、彼の作品が八点鑑賞出来るのですが、内二点のキャプションに「ミステリアス」という言葉が使われていて、どんだけミステリアスな作家なんだよ……と思いました。
 そして、実際に対面するとそう言いたくなるのもわかる不思議な雰囲気なんですよね。私みたいな、ヴァロットンの不穏な気配が好きな人には刺さる気がします。

【おまけ1】
 思っていた以上に、浮世絵って多くの人が関わって作られるものなのだな……と館内の説明を読んでしみじみ思いました。
 太田記念美術館で見た内容に近いサイトがあったので、こちらに置いておきます。


太田記念美術館に来たら買わねばなるまい

 今回もポストカードを色々買い求めました。

一枚100円という良心価格。チケット・物販含め現金のみ利用可なので、お買い物したい方はお気をつけて。

 今回の展示関連のポストカードが少なくてちょっと切なかったですが、やはり太田記念美術館と言えば虎子石なので、そちら含めた五枚を入手しました。


今後も気になる展示が……

 リーフレットを見ていたら、気になる展示がありました。

 『広重おじさん図鑑』……?
 どうやら、2017年に中山道広重美術館で『ゆる旅おじさん図鑑』なる同趣旨の展示があったようで、その仲間のようですね。
 ※2022/12/09に公式Twitterでチラシデザインが公開されました。


 展覧会『闇と光―清親・安治・柳村』は2022年11月1日(火)~12月18日(日)開催、前後期で展示作品の入れ替えもあります。
 最新情報ご確認の上、ぜひよい闇と光を感じて頂ければと思います。


【おまけ2】
 太田記念美術館の最寄り駅・原宿からすぐ、明治神宮は秋のお散歩にぴったりです。美術館帰りにのんびり歩くのもおすすめですよ。

同じ期間に開催中の、矢向が楽しみにしている展覧会はこちらです。



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© 2022 Aki Yamukai


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