【行って来た】ヴァロットン―黒と白 @三菱一号館美術館
私にとってヴァロットンの聖地はこの美術館
私がヴァロットンの作品と出合ったのも、三菱一号館美術館だった。
あれは2014年の展覧会、「ヴァロットン展━冷たい炎の画家」。
どれだけ穏やかなモチーフであっても、彼が描くと何故か不穏さが漂う。そんな油絵に魅了されたのはもちろん、私が強く惹かれたのは版画だった。
特に、男女の親密な様子を描いたシリーズ『アンティミテ』の中の一つ、『お金(アンティミテⅤ)』のデザイン性の高さに、私は魅了されてしまったのだった。(以下の記事のサムネ、右側が『お金(アンティミテⅤ)』)
ゲーム「あつまれどうぶつの森」で三菱一号館美術館の公式アカウントが作品を再現していたので、そこで初めて知った! という方も多いかもしれない。
『アンティミテ』は希少価値を上げるために版木が破棄されている作品群だ。そして、確か2014年の展覧会ではポストカードも全作品は存在しなかった。私が大好きな『お金(アンティミテⅤ)』も無かったので、あの時は切ない想いをした記憶がある。
私は、この展示で「ヴァロットンいいな……!」という感情を知ってしまった。三菱一号館美術館のおかげ(もしくは”せい”)で、恋焦がれる作品に出合ったわけだ。
私にとって、三菱一号館美術館はヴァロットンの聖地だ。
8年越しの想いを胸に美術館へ
そんなそんなで、8年経ってもヴァロットンが好きなので、『ヴァロットン―黒と白』の開催を知った時は声を上げて大喜びした。これまでも、三菱一号館美術館の展示の一部としてヴァロットンの作品が並ぶことはあったが、やはり彼が主役の展示というのは別格だ。
チケットもすぐに買ったし、開催まで死ねない……と心を強く持って私は生き続けた。どんなジャンルでも、推しはオタクの寿命を延ばしてくれる。
おかげで無事、私は8年ぶりにヴァロットンが主役の展示に足を踏み入れることが出来た。
館内に広がる、ヴァロットンの黒と白の世界。何度も深呼吸を繰り返す。当然、当時のインクや紙の香りなんてわからない。でも、美術館いっぱいにヴァロットンの作品が並んでいるというその空気に触れ体中に取り込むと、幸せで幸せで……。
「よそ者」の視点に共感していたのかもしれない
興味深いなと思ったのは、ヴァロットンは同じナビ派の中でも「外国人のナビ」と言われていたという点。多分、生まれはスイス活動はパリという正真正銘の外国人である以上に、本人の性格的にもいつも外から観察している視線を持ち続けた人なんじゃないかと思う。
ヴァロットンと同じように、生まれ故郷と現住所が違う人というのは現代でもたくさんいる(むしろ現代の方が多いかも?)。
私もその一人で、どこか心の奥底では故郷を捨てきれず「いやあ田舎者なもので」なんて言ってしまうことも多い。例え、故郷で過ごした時間よりも他の土地で暮らした時間の方が長くなったとしても。
そういう、「よそ者である」というどこか冷めた視線で描かれているからこそ、自分はヴァロットンの作品に惹かれるんじゃないかと思う。
賑わう万博の景色を表現する際に“何かに群がる人々”を描いたり、デモ隊の混乱を描く際の主人公に“デモを取り締まる警官”を据えたりする、一歩引いた視線。それは、「自分はよそ者である」という感覚がある人ほど、共感出来るような気がした。
何せグッズがいい
作品鑑賞の後のお楽しみは、ミュージアムショップ。
前々から、Twitterで関係各所のツイートを見ては実際に見られるのを心待ちにしていた次第。(三菱一号館美術館のサイトでは、図録のみが紹介されていたけれど、実際はたくさんある。)
私はとにかく紙でヴァロットン作品がほしかったので、こんな布陣でグッズを購入した。
こうして家にまで展覧会の空気を持ち込めるのはめちゃめちゃ嬉しい。しばらくは、記憶の中の美術館の景色とグッズと図録を眺めながら、ヴァロットンの世界観に浸り続けたいと思う。
展覧会「ヴァロットン─黒と白」は2022年10月29日(土)~2023年1月29日(日)まで開催。撮影許可状況をはじめとする最新情報は、公式ホームページをご確認頂きたい。
※追記1:本記事が、note公式の以下の記事まとめに追加されました。
※追記2:本記事を、SmartNewsでもご覧いただける……かもしれないとのこと。
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