個性が死ぬ

「コミュニティ採用」が採用ブランディングの先の概念。


こんにちは、採用ブランディングプランナーの山口達也です。

「なんでもTOKIOに繋げると何を言っても面白くなるから山口さんはずるい」と言われてからというもの、noteのイントロでボケられなくなってしまいました。めげません。



さて、今回は「コミュニティ採用」についてです。

「何それ?」と思われる方もいるかと思われますが、その感覚は大正解です。

それはそうで、僕が作った言葉なので絶対に聞いたことのない言葉だと思います。

ただ、この表現自体がどうなるかは分かりませんが、僕はこの概念が企業や組織のこれからの在り方に合った採用の形の1つになるのではないのかな?とここ最近個人的に考えていたので、今回はそれを整理してみました。


■目次
1.「コミュニティ採用」という言葉の背景
2.会社はコミュニティのようになり、採用という概念がなくなっていく?
3.「コミュニティ採用」の観点から見る"企業の先の形"の予想
4.「採用ブランディング」はマストレベルで必要になってくる気がする
5.採用広報の発信主語が誰であれ、結局は「I」に戻ってくる



1.「コミュニティ採用」という言葉の背景

そもそも「採用ブランディング」という言葉自体が曖昧な言葉で、バズワードとしてよくHR界隈では挙げられる言葉ですよね。

そこに対するバッシングの温度感が高まっていた時に僕自身が

「なんだか一般的に認知されているブランディング(という名のCIに紐付かないキャンペーン広告的なもの)と自分の思っているブランディングの意味が違うのに、それをおかしな方向に解釈されたらなんだか嫌だな...。どうしようかな...。

と思って考えたのがこの言葉でした。


「採用ブランディング」は本業なのでよく考えることではあるのですが、段々と時間が経つにつれ本質的な採用ブランディングやその根幹にあるコーポレート・ブランディングの概念はアーリーアダプター層(意識高い層)には浸透してきているのかな?、とここ最近のHR界隈のTwitterを見ているとどことなく感じます。

そうすると、数年の間にこの考えは今よりもマス層に対して大きく広まっていき、単純に採用ブランディングをしたとしても他社もやってくるケースが増えるのは順を追って考えれば簡単に予想できます。


そこで、「採用ブランディングのその先を考えないといけないよね」ともボンヤリ思っていたわけなのですが、その時にふと頭の中で出てきたのが、

「会社って概念自体が変わるんじゃないの?」

ということでした。

そこから「コミュニティ採用」という概念が生まれてきました。



2.会社はコミュニティのようになり、採用という概念がなくなっていく?

会社はコミュニティ...。一見すると「バナナはおやつに入りますか?」的な感じがしますね(しません)。


さて、そもそも意味が分かりにくいので、「コミュニティの定義とは何なのか?」について考えてみます。

あくまで個人的な解釈ですが、一言でいえば

「1つの思想が通じている範囲全般」

を指す言葉なのではないかなと自分は考えています。


「コミュニティ」という言葉はフランス語のコミューンが語源らしいので、まずはそもそものところに立ち返ってみましょう。

ウィキペディア先生のお知恵を拝借するとこのようになります。

元来はフランス語で「共通」「共同」「共有」「多数」「平凡」「庶民」等を意味する語で、英語のコモン (common) にあたる。
フランスには日本のような行政上の市、町、村の区別はない。地図上に「都市」も「村」も存在しない。
人口80万人のマルセイユも、200人程度のカマンベールもコミューンである。


2行目が非常に興味深いですね。政治的には管轄区のような意味合いとして都市の区切れがあるようですが、そもそものところではいわゆる地区としての区切れがないようです。

この「シームレス(継ぎ目の無さ)な感覚」が僕としてはコミュニティの本質的なところだと思っています。


個人ベースのキャリアや働き方を見ても分かるように、

どこか1つに所属しているというのではなく、自分の思想の実現やスキル・金銭面を得るためのコミュニティにシームレスな形で複数に跨って所属して生きていく

というスタイルが徐々に世間一般的なものになってきています。



こうなるともはや入社や退社という概念が薄まっていくことはすぐに分かるかと思うので、「採用」という言葉自体が無くなってきてしまうのではないかなと思いつつ、採用という言葉がなくなると分かりづらいのでまだ採用という言葉は使い続けています。

※逆説的に考えると、「個人が自分に合うコミュニティを採用(=採って用いる)する」という意味合いになるかもしれませんが...。



3.「コミュニティ採用」の観点から見る"企業の先の形"の予想

では、こうした個人が増えた際に企業側はどうなるのか?

僕は今の延長線上を考えるとこういう風になるんじゃないかなと思っています。


それは、

「1つの企業内に複数のコミュニティ(子会社・関連会社など)があって、それぞれ思想やビジョンの根底部分は同じだけれど働き方が多種多様な形」

です。


この場合、それぞれの子会社は同じ企業ブランドの傘の下にあるので企業のカルチャーや思想は会社の器は違えども同じであるので、採用活動はそこを基軸にしながらあとはライフステージに合わせたものになるかと思います。

前にこんなツイートをしましたが、まさにこんなイメージ感です。


子どもができたらお金稼がなきゃいけないからこのコミュニティ、老後は会社にキャッシュがあって不景気になってもすぐには潰れないようなコミュニティ...、のようにライフステージごとに属するものが変わるに応じて、自分に合ったコミュニティへシームレスな形で動いていけるようなイメージですね。


イメージしやすくいうのであれば、現状ならリクルート社で働き方を更に多様化させる感覚に近いかもしれません。

リクルート内には様々な会社がありますが、事業は違えどアイデンティティやカルチャーは一貫したものを持っているように外からは見えます。

この状態で「今稼ぎたい人は結構残業多めだけど年収高め」「家庭の時間を大切にしたい人は週休3日だけど年収はこれくらい」のように、個人の生き方に幅広く応じることのできる仕掛けをすることができたら非常にコミュニティ的な考え方になるのかなと。


このように、会社側は自社内にそのようにライフステージに合わせたコミュニティ的感覚で子会社を増やしつつも、その根底ではその企業ブランドを一気通貫で敷いてブラさないように組織をデザインしていく潮流ができていくのではないのかなというのが僕の考えるコミュニティ採用の考え方です。



4.「採用ブランディング」はマストレベルで必要になってくる気がする

ここまでくるともはや語らずともお分かりになるかと思いますが、コーポレート・アイデンティティをしっかりと一貫して伝えるためにも、現段階でもで「採用ブランディング」はほぼマストになってくると思います。

★採用ブランディングとは・・・
ざっくりと言えば「企業理念やビジョンなどのCI(コーポレート・アイデンティティ)に紐付いた採用戦略・広報・選考手法などを行い、企業が何者なのかを応募者へ伝え理解してもらう行為」のようなもの。
(詳細はこちらのnoteで。)


ZOZOの田端さんの『ブランド人になれ』を筆頭に、「個人が何者か?」にフォーカスが当たったのが2018年だったのかなと思うと、おそらく2019年以降は「個人の流れも加速するコミュニティ機能」を持つところに人が集まるため、改めて会社のブランドや組織デザインの面に目がいくのではないかな?と踏んでいます。


そうすると、「個人のアイデンティティ(精神的欲求・物理的欲求)」と「企業のアイデンティティ(精神的欲求・物理的欲求)」がどうクロスするかが応募者に対して伝えられないといけなくなるのかなとも考えられます。

(言い換えれば、個人と企業のお互いの「ヒト・モノ・カネ」の重なり合い方とも言えるかもしれません。)


そうなると、個人がどのコミュニティに属せばいいのかが分からないと応募者としては困っちゃいますよね?


こうなった時に、「そもそもこの企業って何者なんですか?」というところに対して答えられるようにするのが採用ブランディングです。

反面、答えられない場合、特にベンチャー企業はよっぽどな報酬や働き方などの目に見えるようなインセンティブを設けられないと、なかなかに採用が難しくなっていくのではないかな?、と個人的には思っています。

(こうしたインセンティブを発生させなくても1.0の仕事を0.1にして10人でやる、というやり方など色々頭を捻ればアイディアは出てきますが、その話を入れると長くなるので割愛...)


そして、その「我々は何者か?」を相手に伝えていくために、コミュニティへの入り口の採用時にその企業らしさが伝わる広報や選考手法、パンフレットなどの制作物、説明会のプレゼン内容に内定承諾書のデザインなどを大なり小なり組み立てていくことが前提で求められつつ、入社後も、退職後も、各個人と適切な関係性を築いていくのが大事になってくるのだろうなと予想しています。

(PR=Public Relationsの中でもPR=Personal Relationsの意味合いが強まってくるのかもしれませんね)



5.採用広報の発信主語が誰であれ、結局は「I」に戻ってくる

言わずもがなとは思いますが、今の採用広報のトレンドとしては「企業ベース」での発信から「個人ベース」に移り変わってきています

「会社の言っていることは綺麗事だらけ」というところに対して猜疑心を持つ応募者が増え、反対にTwitterやFacebookなどで知り合いの誰かが口コミベースで「この会社いいよ!」って言ったものに対しては発言した人が知り合いで信用がおけるからこそ信じれる、という流れの元にこのトレンドは成り立っています。

(皮肉にも、就活生がネットで情報収集しても嘘くさくて信じられず、結局ゼミの先輩に話を聞いてそれを信じて動いているのと構造は同じですね。社会人も同じことをしています。)


ただ、発信の主語が誰であれ、結局は「この企業は何者で、どこに向かっていて、何を解決したくて、何をしていて、その中で誰とどういう関係性を結ぶのか?」というところの"アイデンティティ"の部分に帰結するのには変わりは無いのは事実です。

小手先でどうこうして会社をいいように見せても、核にある本当の「I」が揺らぐのであれば、表面の「I」も揺らぐし、その関係者にも結果としてメッセージが揺らいだ状態で伝わります。

なので、トレンドがどうであれ普遍的にコーポレート・アイデンティティの部分はしっかりと軸足置いて決めていくことが大事なのだと思いますし、本質的なブランディングはこれからも採用の観点でも他の観点でも必要になってくることなのだと考えています。



・・・

ということで、ここ最近考えていたことを頭の整理がてらnoteに書いてみました。

「コミュニティ」という概念はまだまだ考える余白が残されているので、引き続きいろいろモヤモヤ考えていきたいなと思います。

(1社でなく業界全体をコミュニティとして捉えることも考えていますが、これはもう少し深く考えてからまとめます)


おしまい。


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