
【3ヶ月で125%増】企業ブランドを採用フロー全体で伝えるには?〜採用ブランド構築事例〜
こんにちは、ブランディングプランナーのヤマグチタツヤ(@yhkyamaguchi)です。
今回は、採用フロー全般に企業ブランドを込めて成功した採用ブランディングの事例を振り返りがてら書いてみます。
「経営者の思想を採用フロー全体に滲ませる」という本義の採用ブランディングの例として参考にもしなれば嬉しい限りです!
◆目次
1.Before〜25名の無名企業。ヒトもお金も、人事部もない〜
2.採用ブランディング戦略立て
3.企画途中で誤ちに気づく
4.SNS/Wantedlyで広報開始
5.After〜3ヶ月で6名採用〜
6.まとめ
1.Before〜ヒトもお金も、人事部もない〜
とあるITベンチャー企業。
初めて社長とお会いした時、こちらの企業はこんな状態でした。
・全くの無名の中小IT企業で25名程度が在籍
・人事部が存在しない(採用は社員紹介メインで今までやっていた)
・ベンチャー企業なので採用広告費がそこまでかけられない
・広報はFBの企業アカウントのみ(Wantedlyのアカウントすら無い)
・思想やカルチャーは強い(儲けるためだけの目的で会社運営をしていない)
・超急速増員はしない方針+何もないところからなので、3ヶ月色々仕込んでそこから毎月コンスタントに1名〜2名程度採用したい。
ヒト・モノ・カネ、全てがほぼゼロからのスタート。
資金はほぼこれからの新規事業に回していたので、採用費用もあまりかけずにツールとしてWantedlyの一番安い月額課金を利用する程度です。
また、人事部も無かったため、普段は通常業務をしている方を数名ほど巻き込む形でアサインいただき、新規で採用プロジェクトチームを作ることに。(SNSの運用などをメインにお願いしました)
とにかく無いものづくしはベンチャーあるあるなので、広報的にはSNS広報が立ってくるまではオーソドックスにWantedlyを運用していく形にしましょうかという流れになりました。
2.採用ブランディング戦略立て
〜いかに母集団を減らすか?〜
ということで、現在時点の状況はだいたい分かりましたが「何もないぞ...。これはどうしたものか...。」と、頭をひねりにひねり倒しました。
まずは、以前「採用ブランディングの考え方」について、こちらのnoteでがっつり説明したことになぞらえながら、この企業の「コーポレート・ブランド」について考えていきます。
Step1.「自社のブランド」を考える
ヤマグチが頭の中でいつも考えている採用ブランディングの考え方の基礎はこんな感じです。
採用力=企業基礎力(企業規模や年収など)×企業ブランド力(ビジョンやビジネスモデルなどの独自の価値)
ここに照らすと今回の場合はベンチャーやスタートアップあるあるですが「企業基礎力」はかなり低い状態になるので、「企業ブランド力」の部分で勝負するのがセオリーです。
※ちょっと解説:「ブランド」の要素とは?
ブランド=機能性(ビジネスモデルや社員数などのどちらかといえば定量的なもの)+情緒性(価値観・カルチャーなどのどちらかといえば定性的なもの)
下記図はその参照です。
すると、今度は「採用ブランド=企業の独自の価値・特徴」を可視化していかないといけません。
そこで、採用チームでワークショップを3時間程度行い「この企業らしさとは?」「企業を人に例えると?」などの質問から企業文化や特徴的な強みを洗い出しました。
その結果として分かったことですが、まず企業ブランドで他社に無い点としては「ビジョン・思想がとても強く、それが社長の原体験に沿っているので独自性がある(他社と被らない)」「その思想に紐付いた社内イベントやカルチャー・オフィス環境がある」というところがどうやら特徴的な点として分かってきました。
前者に関しては、「過去に心が病んでしまった人や経・学歴が社会的に認められないような人でも、誰もが安心して働けるような企業をつくっていきたい」というものが掲げられていて、そこに対する想いや原体験には並々ならぬものがあることを、社長とお話する中で僕自身感じていました。
後者に関して、業界柄として客先常駐のお仕事が多く、あまり社員全員が集まる機会が少ないので、それなら数少ない集まれる時にはみんなで楽しめるようにと社内イベントが多かったり、ゲームやお酒、BBQグリルなど「全員が楽しさを感じられるもの」がオフィス内に色々と置かれていたのが特徴的でした。やはり社長の思想に基づいて、文化形成がされています。
ポイントは「綺麗事を言っているだけではなく、実際に体現している」というところにブランドの強さが滲む、という点です。
額縁の中のミッションビジョンバリューではなく、実際に口にしながらも体現していくこと(継続の"ing")が「Brand + ing =Branding」だという点は必ずおさえておきたいですね。
※スタバの店員の接客態度も「サードプレイス」というブランドの体現になっている構造と同じなので、そのようにイメージしてください。
Step2.他社のブランド力を考える
次は競合になりうるような企業の分析です。
競合他社にあたるであろう会社の見当がついたので、その企業のブランドのポジションを考えました。イメージとしてはこんな感じですね。
あるあるだと思いますが、他社をいくつか見てみると「待遇で勝負」「カルチャーで勝負」と何パターンか強みが分かれています。
他社の武器が分かるとその企業の採用ターゲットのペルソナもざっくり想像できますので、それと被らないようにしつつ、この企業のビジョンや思想に共感して尚且つ誰もまだ目を向けていない市場を探し、そこに張ることにしました。
「戦略(=戦を略す)」を意識して、戦わない採用を考えます。
Step3.採用ターゲットを決める
Step1〜Step2を踏まえて出てきたターゲットはこちらです。
20代で1社目で入った新卒の会社が自分に合わずにメンタルが病んでしまって休職した男性営業マン。社会に戻るために転職を考えた際、やはり手に職をつけたいと思ってプログラミング教室に通い出している。
この企業のビジョンとして「どんな過去を持つ人でもメンバーとして受け入れ、どんな人でも活躍していける組織になる」というものが掲げられていたのと、プログラミングの研修がしっかりとしていたこともあり、あえてターゲットとしてあまり他社が触ろうとしない範囲を設定しました。
そして「採用基準」に関して。
こちらは社長がもともと持っていた考えを聞き、それが自分にとっても大変シンプル且つ合理的だったため、その考えのままにこの2つが採用基準となりました。
①ビジョン・経営方針に共感している人
②39歳以下の人(とある経営計画のため)
学歴も経歴も関係がないためバイアス抜きに採用ターゲットの枠を広げられ、且つそれが企業のビジョンとも紐付く形にもなっています。
Step4.自社らしい選考フロー/広報を考える
※具体的な広報内容については次の章で説明するので、ここでは割愛。
普段は自社の強みとしてビジョンや独自のビジネスモデルなどを説明会や採用媒体で「認知」させたのち、選考フローの中で「体験」させる独自選考を考えます。
パンフレットやHPでは自社らしさを謳っていても、選考過程の面接やESで企業ブランドを感じさせる企業は少ないので、僕はそこをいつもテコ入れしていきます。
ですが、この企業の代表はすでに自分の経験から編み出した採用方式を持っていて、その手法がビジョンを感じさせる内容になっていたため、そのまま引き続きその形でお願いすることにしました。
それが「No内定採用」です。
言葉そのままに「内定を出さない」という採用方式なのですが、これは「企業からではなく自分から自分へ内定を出す」という採用方式となります。
雇用の安心・安全をつくっていきたい企業だからこそ、「自分のキャリア選択に覚悟と納得度を持つには、自分で道を決めるのが一番の安心・安全だ」という社長の思いから、このような採用方式となりました。
このような形で選考手法にも企業ブランドを宿すことで、より求職者には企業の"思いの本気度"が伝わります。
「綺麗事を言っているだけではなく、体現している」。これこそがブランディングの真髄です。
3.企画途中で誤ちに気づく
大まかな戦略は考えたため、細かい戦術へ落としこもうと思ったのですが、先ほどの考えに1つ誤りがあることに気づきました。
ざっくり言えば「あ、これWantedly運用を王道でやると負けるな」ということです。
というのも、WantedlyのランキングやPV獲得の方法論を考えると大体以下の感じかなと思った時に「しまった。これじゃ負け戦だ」と感じました。
①大手企業でヒトモノカネを投入してコンテンツを作りまくる
②専属人事か外注でゴリゴリ作りまくる
③インフルエンサーで拡散力がある人が拡散する
ヒトモノカネの資産がほぼゼロの場合はどれも取れませんし、僕もつきっきりで毎日記事を書いたり募集枠をABテストするわけにもいきません。
というわけで、その時点で「PVを稼ぐこと・募集記事を大量に作って回すこと」をきっぱりとやめました。
描いていた戦術が消えたので
羽生結弦のごとく、頭を4回転半ぐらい回してヤマグチは考えます。
・・・
・・・
・・・
「採用において本来大事なのはPV数やエントリー数じゃなくて内定数。なら、応募母数が少なくてもそれらが内定に限りなく近づければいいよね」
という、非常にシンプルで後から考えれば「そうだよね」という当たり前のスタンスを思考の中心に据えることにしました。
そりゃあ、分母(応募者数)と分子(内定者数)が同じ方がお互いハッピーです。
そこで考えたのが「SNSで広報(認知)→Wantedlyは企業ブランドを確認して求職者を安心させるor敬遠されるオウンドメディア(体験)」という設計です。
※ブランドの考え方
・ブランド(らしさ・約束)=(認知+体験)×継続
→企業らしさ=(SNS広報+Wantedly閲覧&社内イベント)×継続
噛み砕いて説明すると、
①広報部分は細かく設定したペルソナが共感する形にする
②本当にSNSで謳っているような機能面・情緒面の根拠をこの会社が持っているのかどうかをメディアで確認してもらい、「好きor嫌い」の判断がすぐしやすくなる
ということです。
Wantedlyはもちろん自然流入もあるので、相当尖らせたペルソナに相当尖らせたブランドコンテンツが当たればそれで1本釣り的なことも狙えるなと思っていたので、その方針でいきました。
こうすることで、ある種「好きな人はとことん好きだけど、この会社のカルチャーが苦手だなと思う人は"選考すら受けたいと思わない"くらいしっかり企業ブランドを伝える」という形を取ることができ、「母集団数をあえて減らすものの、受けに来てくれる人は内定にかなり近い人」という構造になります。
こうすると、企業側としては面接工数を減らすことができるし、応募者も無駄に時間を使わずに済むWin-Winの関係性を生むことができます。
潔く最初から今まで、募集枠記事は1つだけ。あとはイベント集客・応募用の募集枠記事だけしか作っていません。
一見おかしなことをしているように見えますが、実にシンプルながら裏では色々考えています。あとはこれを広報面に繋げて日々改善していきます。
4.SNS/Wantedly広報
ターゲットの心の中で思っているニーズに沿う形で自社の魅力(思想・カルチャー・イベント)を社長のアカウントやコーポレートのアカウントで、それぞれ運用担当者の方々に発信していただきました。
それぞれの広報媒体からのメッセージに一貫性が無ければブランディングの効果が半減してしまうので、SNS担当の方と日々額をつき合わせながら「この要素がこの企業らしさで、こういう書き方の方が相手に伝わりやすいと思います」などの話し合いをよくしていました。
PRに関しては、
PR(Public Relations)=誰とどういう関係性を結びたいか
と基本的に考えているので、それを常に意識していくようにしました。
とにかくSNS運用に関しては、実際に手を動かしてくださったのが社長やプロジェクトメンバーだったので、お忙しい中運用をしてくださり感謝で一杯でした。いつもいつも本当にありがとうございます。
(ここまでプロジェクトチームが一丸となれたのもビジョン達成への共感度がものすごく高かったからだと思います)
そしてWantedlyの記事制作に関して。
ただ記事を書くだけでは勿体ないので「今のメンバーが企業ブランドをどう認識していて、採用メンバーも知らない企業らしさをヒアリングできたらいいな。で、それを採用以外にも他の分野で後々のインナーブランディングやアウターブランディングにも活かそう」と思い、質問項目やヒアリングの流れを考えました。
実際に実行してみたところ、「ビジョン共感をする人がどんな過去があってそこからどんな思想や性格が形成されて、この企業に魅力を感じるに至ったか」に傾向があったこと、「その傾向がペルソナの求めているインサイトとほぼ同じだった」ことを理解できたのは大きかったですし、後々で色々な材料になりそうな要素が感じられました。
5.After〜3ヶ月で6名採用〜
そんなこんなで母集団をあえて減らすという、一見すると少しクレイジーに見える採用戦略を取りましたが、
結果として、3ヶ月で6名(Wantedly4名・Twitter2名)採用できました。
(※追記:その後、さらに3ヶ月で19名採用ができてしまい、社長に採用のストップをかけられることに...。)
内訳はこんな感じです(これ以外にもリファラルが1名いましたが施策とは関係が無いものだったのでカウントせず)。
・全応募者数13名
・*有効応募者数9名
・内定6名
・面接待ち3名
*有効応募者数は面接に進める方を指しています(例:英語しか話せない方はどうしても現状採用できないのでカウントしていません)
もともと社長からは「ゆっくり年内にコンテンツを溜めていって年明けから毎月1名コンスタントに採用できたら嬉しいね〜」くらいの感覚だったので、「おお...好調...」という嬉しい悲鳴状態になりました。
狙った通り上手くいったとはいえ、僕自身も思っていたよりも早くに結果として表れたので少し驚きましたが、しっかりビジョンがあってそれを体現しているカルチャーや施策があるのであれば再現性高く採用ブランディングは機能することを改めて実感しました。
予算としても一般的な紹介エージェントさんを活用していたら1人採用する金額以下の予算感しか使っていなかったので、まさに採用ブランドのポジショニングが功を奏した事例ということで、今回ご紹介させていただいた次第です。
実行にあたり、代表・メンバーの方々のご尽力無しではやり切れなかったと思うので、大変感謝しております。本当にありがとうございました。
6.まとめ
ブランディングという言葉を単に「企業を単純に良くを見せる手段」だと認知されているケースも多いと思いますが、それではなかなか効果は出ません。
結局、ビジョンや理念などのCI(コーポレート・アイデンティティ)の部分に全ての戦略・戦術が紐付いていないとブランディングとしては効果が生まれないので、全ての戦略・戦術に一本串を刺すようなブランドの一貫性こそが本質かなと考えています。
長くなってしまいましたが、このようなケースを通じて少しでも"なんちゃって採用ブランディング"ではなく、本義の採用ブランディングの考え方がHRシーンを始め、ミッション実現に向けて邁進されている経営者の方に届けば大変嬉しく思います。
※このnoteだけでなくもっと色々知りたい方がいらしたら、Twitterやメールからお気軽にご連絡いただければと思います!
@yhkyamaguchi
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