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欅坂46から学ぶ!ベンチャー企業のためのブランドPR戦略

こんにちは、ブランディングプランナーのヤマグチタツヤ(@yhkyamaguchi)です。


「歌詞解釈から学ぶ!企業ブランディング」という、なんとも世にも奇妙なイベントをやるようで、そこで歌詞からアーティストのコアとなる価値観(=ブランド)を分析・解釈することを14歳の頃から趣味でやっていたヤマグチにゲストのお声がかかりました。


その前哨戦的な感じで、久しぶりに「このアーティストがなぜいいのか?」を解体してみようかな〜と思っていてモヤモヤ考えていた時、

「そういえば、自分の好きな欅坂46の1年目の功績って異常に凄かったし、それって楽曲の世界観が強かったのが大きかったはず......よし、これにしよう!」

というわけで、今回は欅坂46のブランド解体をしてみることにしました。

※ヤマグチは好きなアーティストを語らせたら止まりません。


彼女たちは、デビュー1年目で紅白へ出場、デビューシングルのPVが1億回再生突破

よくよく考えると、どこぞのイケているスタートアップみたいな驚異のアイドルグループです。

今回は、彼らのデビューシングル『サイレントマジョリティー』に仕掛けられた数々のPRポイントを中心に、彼女たちのブランドPR戦略を解説していきます。


★この記事の前提(言葉の定義)★
○ブランド:個性・らしさ・約束・独自の価値
○ブランディング:あらゆるコミュニケーションにおいて、ブランドを一貫
 させてターゲットへ伝えること 

 Ex)スタバは「サードプレイス」がブランド、「フレンドリーな接客,    リラックスできる空間・内装」がブランディング。
○PR:「誰とどういう関係性をつくるか」の定義

※よりこれら前提の理解を深めたい方はこちらの記事をどうぞ!→ https://note.mu/yamatatsutatsu/n/nc3d1a589ff32


◆欅坂46のブランドコンセプトは「同調圧力からの解放」

まず、楽曲考察に入る前に欅坂46のブランディング全体像を理解していきます。

※企業とは違うので、ビジョンミッションに当たるCI部分は解釈したものを仮で書いています。

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『サイレントマジョリティー』『不協和音』『ガラスを割れ!』等と、有名シングル曲の共通項を見ていくと「若者の同調圧力からの解放」こそが欅坂46のブランドのコアコンセプトだと分かります。

そして、それを体現する手段(How)として、楽曲やPV、ダンスや衣装等が用いられているようなイメージを持つと分かりやすいかと思います。


アイドル本人たちも10代の子が多く、平均年齢は17.5歳(特にセンターを務めた平手さんは中学2年生の14歳!)

他のアイドルと比べても若いのは、やはりターゲットとなる中高生が"自分を彼女らに重ね合わせやすいようにするため"でしょう。

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(※上列の齋藤さんと織田の名前が逆なので、その点だけ事前にご了承ください...)


さて、この欅坂46を「ブランドディング・PRが上手い」ということで取り上げているわけですが、一体どういうポイントを彼らは抑えているのか?

その仕掛けを大きく4つに分解して見ていきましょう。


◆「欅坂46」の世界観に惹き込まれる”4つの仕掛け”

この楽曲、恐るべきことに「結成から半年で雑誌100誌以上取材」「PVは460万回再生」「1年目で紅白出場のキーとなった楽曲」という成果に繋がっています。

もちろん秋元康というプロデューサーの知名度や坂道ブランド(乃木坂46)の効果もありますが、なぜ結成間もないアイドルがここまでの成果を残すことができたのか?

企業ブランディングやセルフブランディングに転用できるよう、楽曲に散りばめられた欅坂ブランドと各施策のPR構造について考察してみました。


1.若者の閉塞感を存分に歌った歌詞

この曲の歌詞は全編に渡り、様々な比喩を用いながら「若者が感じる同調圧力の苦しさ」について描写をしています。

例えば......

「似たような服を着て 似たような表情で」
「誰かと違うことに なにを躊躇うのだろう」
「この世界は群れていても始まらない」
「One of themに成り下がるな」
「その群れが総意だと ひとまとめにされる」
(引用:http://j-lyric.net/artist/a05b333/l03a3fb.html)

「自分の目指したいものがあるならば、笑われてでもそこを目指していけ」というメッセージがこれでもかと伝わってきますね。

均質化された商品やヒトではなく、独自の思想や考えを持っている人や企業にフォーカスが当たるようになってきている時代のトレンドを綺麗に汲み取りながら、ターゲット層の本音を言葉にしていることが分かります。


また、「歌詞に難しい言葉を使っていない」という点も見落とせません。

ターゲットが若者であるため、難解な言葉を使用しても彼らは理解できない可能性が高い。

だからこそ、誰でも分かる言葉の連続で曲の伝えたいことを説明しているというワーディングの適切さもコンセプトの体現に一役買っています。



2.ターゲット世代が好みやすいメロディーライン

これはサイレントマジョリティーだけではないのですが、欅坂46の楽曲はこの2点が特徴として挙げられます。

・全体的に音程の上下が少なめ
・小節内の言葉数が多い

「なぜこのような楽曲構成なのだろう?」と理由を考え、真っ先に出てきたのは「これ、ボカロ曲と似てるな」という気づきでした。

ボカロ曲は「ボーカロイドで制作された楽曲」を表す言葉ですが、これらの楽曲の特徴の1つとして「高速BPMで歌詞をまくしたてる」というものが挙げられます。

実際に、2019年上半期のカラオケ人気ランキング上位にランクインしている『シャルル(バルーンP)』等もまさにその特徴に該当します。
(参考:2019年JOYSOUNDカラオケ上半期ランキング)

特にAメロ後半やサビを聞いてみると、歌詞と歌詞の隙間がやはり少な目なことが分かります。

そして、年齢が若いがゆえに新しいものに対する柔軟性が高いことからか、ボカロ楽曲は主に10〜20代との親和性が高いです。

これらをまとめて考察してみると「若者世代にウケのいい楽曲のエッセンス」を秋元康は取り入れることで、メロディーのキャッチーさからまずは楽曲をしっかり聞いてもらえるように設計していることが推測できます。

歌詞の意味からいきなりファンになる人は少ないですから、ここは市場のニーズ感に合わせているのがプロダクトアウト過ぎず、さすがですね。

音から入ってもらい、その先で歌詞を読んでもらうことで「この歌詞、私の気持ちを歌ってくれている!」と共感と熱量を生み、根強いファン化を進めていきます。

この『サイレントマジョリティー』以降も、曲のテイストは変えながらも上記2点の作詞作曲の方向性は変えていないため、ついついターゲットはそのメロディーの中毒性と世界観に惹き込まれ、ブランドの固定ファンになっていきます(いわゆる「LTVの向上」ですね)。


3. PVにも一貫する「画一的な価値観」

PVに細かく着目すると、ブランドコンセプトを表現しているポイントがいろいろ見えてきます。

まずは「ダンス」。

欅坂46のダンスはみれば一目瞭然なのですが「機械的な一体感」がとても強いです。大人数で同じ振り付けをしているからこそ、余計にこの強さが増長されているのでしょう。

このダンスもやはりコンセプトを表していて「全員同じ動き=無個性」の表現だと解釈できます。

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例えば、下図のダンス。

これはまさしく「操り人形(マリオネット)」を模したダンスではないかなと思われます。

背景のビルの看板が「周りからの目」のように見えるので、こうした周りの目が気になってしまい同調的な空気感に支配されて個性をなくしてしまった少女たちをダンスでもありありと表現していることが感じれられますね。

服装も"軍服"を想起させるような制服なので、「軍隊」からイメージされる一糸乱れぬ団体行動としての画一的なニュアンスがコンセプト感を後押しします。

※ちなみにロケ場所はほぼ全て「若者の聖地」である渋谷。やはりターゲットに合わせているのでしょう。

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ただ、面白いのはその中に「心臓の鼓動」を感じさせる動きを取り入れている点。

これは「無個性の群集の中で、実は個性が息をしている様子」を表していると解釈できるので、抑圧された若者の心境をもダンスに実は込めていると読み取ることができます。

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そして、落ちサビの演出は、有名なドラクロワ作の絵画「民衆を導く自由の女神」がモチーフです。

つまり、自由を得ようと革命を起こした勇気ある少女をセンターの平手さんに被せたストーリーメイキングをしています。

他にも、独裁政権のトップダウンをイメージするようなフリがサビにあったりなど、コンセプトの表現を挙げだすと枚挙に暇がありません......。

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4.アイドルの常識の枠を超える「笑わないアイドル」

このPV、アイドル業界でご法度に近いであろう「アイドルなのに笑顔がゼロ」というとんでも技を繰り出しています。

実はこのアイディア、メンバーたちから出てきたものというところが超ミソです。

「自分たちで曲の意味を理解して表現して!」というダンサーの指導から、メンバーたちが話し合って出した答えがこの”笑わない”という演出だったそうです。

これは、企業でいえばまさにインナーブランディング。プロデューサーだけでなく手を動かすメンバーもブランド理解をしっかりとしていたからこそ出てきたアイディアだと言えるでしょう。

そして、この"笑顔がない"という違和感は広報にも連動していきます。

前回のこちらのnoteにも書いたようなこの”逆転型PR”の結果、ZIPの取材で「笑わないアイドル」と取り上げられ、大きく話題性を増していきました。

プロモーションにブランドが宿っていると、大きく話題になったとしてもただ「バズって、はい終わり」ではなく、「我々は何者なのか?」というニュアンスが伝わるので、コーポレート・ブランドの観点から考えてもこの取り上げられ方は綺麗に成功しているなと感じます。


◆ベンチャー企業の採用に、これらを応用するとどうなるか実験してみた。

欅坂46のブランド戦略は、もちろんタイトルの通り企業のブランディングに転用することもできます。

以前、コーポレートブランディングの中の「採用ブランディング」の事例としてこちらのnoteを書きましたが、実はこの事例は「欅坂46のブランド戦略構造」を転用しています。

ブランドポジショニング、採用広報の記事内容とトーン、社内イベント、選考手法......と、採用フロー全体にメッセージを一貫させた結果、予定の3倍の早さで理想人材を採用をすることができました。

ただし、このブランド戦略を企画する際、必ず気をつけないといけないことがあります。

それは「企業の思想こそがブランド力のコアである」ということ。

欅坂46と同じように、「そもそもこの企業はどういう世界を目指していて(ビジョン)、そのために何を実行するのか(ミッション)?」という”そもそも”の部分がないと、そこにいくらHowが乗ったとしてもブランド力は薄くなってしまいます。


◆「自社が何者か」を突き詰められると他社模倣不可能な武器ができる

繰り返しになりますが、企業ロゴやプロダクトのネーミング、接客態度にSNSの言葉のトーン...などなど、全てのHowを存分に強化させるためにも、まずは「企業が何者か?」を突き詰めていくことがブランディングの近道となります。

そして、そのCIの意図を社内メンバーに伝え、カルチャーの側面からチーム強化をどのように設計していくか?という点も同様に大切です(欅坂46の皆さんもやっていた、いわゆるインナーブランディングですね)。

そして、内側でコアを作りながらも、そこへ客観的な目線を入れることも非常に大切な要素となります。

企業のミッションビジョンの言語化は「企業全体の最大公約数を言葉にすること」と同じなので、経験がないと相当難しいですし、何よりつくった言葉が自分よがりになりすぎて対外的に発信した時に伝わりにくくなる可能性が高くなるので、この点は事前に注意しておけるとベストだと思っています。


・・・と、長くなりましたが、このように1曲の歌詞・メロディ・PV・ダンス・衣装からもコーポレートブランディングを学ぶことができるので、ぜひ皆さん、日頃から「なんでこのエンタメは共感を生むのか?」を考えることを勝手にお勧めします!(ただの僕の趣味ですが!)


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ヨハク代表/ブランディングプランナー。ビジョン共感で自走する組織ブランディング・PRを支援しています。noteはブランディングや組織カルチャー、音楽関連多め。(一社)日本ブランド経営学会 理事/Forbes JAPAN CAREER寄稿 ご連絡はTwitterのDMから。

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