採用ブランディングとロックミュージックの本質こそが今の若者を惹きつける最大の理由
こんにちは、ブランディングプランナーのヤマグチタツヤ(@yhkyamaguchi)です。
タイトルに書いたこと、これが最近特に自分の思うことです。
普段学生と接しつつ、反面でCEOや人事の方と採用の話をしながら、ブランディング界隈の方たちとブランディングの考え方を他の分野に応用できないかという研究を日々やっているのが今の自分。
一方、昔から今まで日本のロックミュージックが大好きで、ひたすら曲の本質的メッセージをアーティストの背景と重ねながら考えていた自分もいます。
軽音サークルでギターもずっとやっていましたし、好きなアーティストの作品解釈ブログすら書き出して、今ではその界隈ではおそらくそこそこ知られている存在であろうレベル感。
(客観的に一般的目線から振り返ってみるとなかなか危ないやつですね、僕。)
さて、そんな自分だからこそ、最近「なぜ採用ブランディングが特に新卒採用において有効なのか?」について考えていました。
中途の方に対しても採用ブランディングはもちろん有効なのですが、その中でも若者を惹きつける感覚が自分の中でしてなりません。
そこで、その理由を考える上で、そもそもなぜ自分がロックが好きでなぜブランディングが好きなのかの根本を深堀りして考えてみたところ、1つの共通項が見つかりました。
それは「自分が普段言いたくても言えない"現状へのアンチテーゼ”を言葉にしてくれている」という点。
採用ブランディングにおいて常に自分が大切にしているのは、企業独自の価値を紐解き伝えることはもちろんのこと、そのメッセージングの過程の中において「いかに自分たち学生のことを見てくれているか」という目線を含むようにすることです。
「既存の採用だと、普通のよくあるパンフレットに採用HP、選考手法もただのESと面接だけで、企業の"らしさ”も他の会社に比べてよく分からないし、何より"本当に自分たちのことをしっかり見ようと考えた末の選考なのだろうか?"」というのが普段学生と接していて彼らが不安に思うことの1つ。
もちろん自分が就活生の時も、斜に構えがちだった性格もあってか「こんな30分のグループ面接や200字のとってつけたようなESの質問でオレの何が分かるんだろう?」とものすごく疑問に思っていましたので、余計手触り感のある形でその不安が理解できました。
上記の背景があったからこそ、僕は基本的に「よくある選考ってあんまり本当の自分を見てくれてる感じしないよね?だからこそ、この会社は学生のみんなと同じ目線でその不安をいかに取り除くかを考えて、こうした一風変わっているかもしれない採用の全体設計をしているんだよ」と伝わるような仕組みを考えますし、そのコンセプトを学生にしっかり伝えてもらうように採用担当者の方にお願いしています。
(ちなみに自分が名もない不人気業界の中小企業さんの代理人事として逆求人イベントで上記の内容を盛り込んだ3分プレゼンをしたところ、会場にいた全30人中15人くらいの子がその時お手伝いしていた企業に興味を持って選考に進みたいと言ってくれました。)
もちろん、既存の面接形式であってもとことん時間をかけて深堀りすることで応募者に不安を与えないように、ミスマッチを少なくするようにしている企業さんも存在しているので、全部が全部悪いとは言いません。
・・・少し前置きが長くなってしまいました。
では、これがどうロックミュージックと繋がるのでしょうか?
結論から言ってしまえば、ロックミュージックの本質は「現状への不満を原動力に、そんな不満を充足させるような新しい世界をつくること」だと僕は考えており、それこそ上記の僕だからこその採用ブランディングの根底的思想と通ずるものがあると思っています。
特に昨今の音楽シーンを見ていると[Alexandros]や米津玄師といったアーティストが、アイドルも込みにすれば欅坂46などは特に近年類を見ないスピードで紅白に出るなど、全国区的に知名度・実績を上げています。アーティスト単体だけでなく、ロックフェスの動員数から見る盛り上がりもそうですよね。
彼らが売れる前からその音楽性が大好きだった自分は、昔からその曲の魅力の本質を常に考えていたので、彼らが爆発的に売れることはなんとなく予想がついていました。
特に欅坂46に関してはデビュー曲「サイレントマジョリティー」の音楽性・衣装・ダンス、その全てがロックで現状への反骨心です。
空気を読むことや既存のルールを年功序列的・体育会的に無理やり大人から押し付けられてきた感覚のある10代・20代前半の人は、そういったものに対して大声を上げて反対をしたいけれど、それをやると周りから浮いてコミュニティ内での自分の立場が危うくなるので、それが出来ない。
だからこそ、その沸々とした気持ちを代弁してくれているアーティストとその作品に共感を覚えていく。
だからこそ、この「サイレントマジョリティー」は秋元康プロデュースということがあるにしても、デビュー曲にもかかわらずありえない速度で日本を席巻していきました。
https://www.youtube.com/watch?v=DeGkiItB9d8
上記に挙げたアーティストのほとんどがその「現状へのアンチテーゼ」を歌っています。
(ブランディングの観点から見ると、もちろんそういった情緒的価値だけでなく音楽性の高さや曲の構成力といった機能的価値も彼らは抜群に高いですが。)
話を学生の話に戻しますが、今の大学生の現状を考えても「そもそも、大学になぜ行っているんだっけ?なんで働くんだっけ?」と考える人が多くなってきたことから、休学してのインターンや、長期留学に学生起業と、「とりあえず就職。」のような画一的な価値観からの脱却的姿勢が新卒採用に関わる人でなくとも理解できるレベルまで浸透しつつあるかと個人的には感じています。
(ベンチャーやスタートアップへ学生が就職することが増えてきたのも、そういった影響が大きいのではないかなと個人的な経験則も元に推測しています。)
上記の流れから、昨今の採用ブランディングにおいて、単純にWantedlyの記事を面白おかしく書くだけ・バズるようなBBQイベントを開催するだけ、では正直ブランディングのブの字になってないのはもちろん、新卒採用においては特に上記の「若者の想い・不安」のインサイト的部分に対するアプローチがされていないので、企業への求心力がそこまで強くなりません。
もちろんブランド論として考えた際に、ブランド(信頼・約束)とは「(認知+体験)×継続」だと基本的には言われますので、採用面だけでなく企業全体で「本気で現状を変えていく」という姿勢や空気がないとこの採用ブランディングは裏目に出かねません。
そのため、基本的に上記のスタンスで採用ブランディングをする際は、そういった本気や覚悟の想いがあるCEOや人事の方がいらっしゃる企業さんだけにした方がいいです。
もちろんロックでない状態での本質的な採用ブランディングも考えることは可能ですし、それも有効です。
企業のあり方に正解・不正解はないので、企業さんによっては「そんな上記のスタンスはうちらしくないよ、押し付けないでよ」となると思いますが、その場合はやらない方がいいです。"らしさ"を大事にしてほしいと思います。
僕の学生との面談は基本的に過去の原体験を聞くスタンスなので、彼らの過去の強い経験の中で特に不満や悲しみを覚えた部分を聞くことが多いです。そんな強い感情の源泉の多くが上記の「周りの目やルールを気にすべきこと」から由来していたので、今回このようなnoteを書いてみた次第です。
(ダニエル・カーネマン辺りからは「n数から考えるとそれは認知的バイアスだ」とか言われそうですが、科学自体が人間の考えたものである限り、その科学ですらヒューマンエラーが紛れている可能性があるので普遍的絶対解になりうる証明にはなりえないと思っています。)
どこの企業でも言えちゃうような八方美人的パンフレットやキャッチコピーは脇に置いて、
「うちの企業らしさはこうだ!これ見て合わないってなったら受けないでおくれ!そっちのがお互い時間もより有効に活用できるからさ!」
みたいな感じで本質的なブランディングができていくことを、
そして学生側も
「オレ/あたしはこれが譲れない軸だ!これに合わないならいくら有名企業でも受けません!」
みたいな自分らしい就活をしてもらえたら、深い想いの部分で繋がるミスマッチの少ない世界ができていくんじゃないかな、と夜遅くで疲れてへべれけな脳みそのヤマグチは思っております。
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