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花が届けた息子の幸せ

◇◇ショートショートストーリー

四人兄弟の末っ子の良夫は小さい頃から甘えん坊で、何でも兄たちの言いなりでした。末っ子だから大きな期待を持たれることもなく今に至ります。

三人の兄たちはそれぞれ自分の好きな道に進み、パートナーを見つけて独立して家庭を持っています。

良夫は、そんな兄弟を羨ましいと思ったことはありませんが、もうそろそろ身を固めなくてはと考え始めていました。


良夫の母は実家で一人暮らしです。四人の息子たちを成人させた後、ガンを患いホスピスに入院していた主人を看取り、今は猫のタマと一緒の生活です。

良夫は80歳を越えた母をこれからずっと一人でいさせるのは忍びないと思い始めていました。

50歳になるまでずっと母に甘えてばかりで、恩返しは何も出来ていません。世話になりっぱしの母親に、少しは思いやりを見せなければと、彼は最近実家に足しげく通うようになりました。

会話が少なかった母親との距離を縮めるために、良夫は母の好きな花を持って訪ねることにしました。

若い頃から花が好きだった母親は、庭に百日草やアネモネ、フロックスなど季節の花を植えて、庭の変化を楽しみながら、趣味の短歌を詠んで暮らしています。


生まれて初めて息子が花を持ってきた時、お母さんは驚きました。「こんな洒落たことをする子じゃなかったのに、50歳になって私の気持ちが分かるようなったのかしら」

母は、優しくなった息子が持ってくる花が楽しみになっていました。

良夫が母に贈るのは花束ではありません。一輪二輪、時には三輪、負担にならない数輪の花です。

この花から親子の絆が生まれました。


母の日には「カーネーション」、初夏には「薔薇」、夏の始めには「ひまわり」、秋には「ききょう」そして冬には「クリスマスローズ」母は息子が持ってくる花を愛でながら、二人で花談義をするのが嬉しくて仕方がありませんでした。

息子はどうしてこんなにも優しくなったのか、この花は誰が選んでいるのか、母は色々思いを巡らせていました。

良夫が実家を訪ねるようになって1年、ある日大きなカスミ草の花束を持って現れました。その隣には可憐な女性が居ます。

「こんにちは、いつも息子さんがうちでお母さんにプレゼントするお花を買ってくださっていて、私、素敵だなーと思って選ばせていただいていたんです、一度お母さまにお会いしたいと思って・・・」

お母さんはこれまでにない笑顔で「いつも本当に素敵なお花を選んでいただいていてありがとう、こんな可愛い方がすすめて下さっていたのね」

母への優しさが、花屋のお嬢さんにも伝わって、良夫の人生を大きく変えたようです。

母親はカスミ草越しの二人の姿を嬉しそうに見つめていました。


【毎日がバトル:山田家の女たち】

《私は好きな花を描くんよ》


夕食の肉じゃがを食べたた後のばあばと。

「一輪でもお花を貰ろたら嬉しいもんよ、水を変える時もその人のことを思うけんね、私は好きな花はイラストに描くんよ、花は四季を通じてあるけんええんよねー

「お母さんは何が好きなん」

「私が一番好きなんは、バラ、一本でもええ深紅の薔薇を貰ろたら嬉しいんよ


そう言えば母はバラの花をこれまでにもよく描いています。「深紅の薔薇が好き」母らしいなと思います。ちなみに私が好きな花はかすみ草とコスモスです。


【ばあばの俳句】

秋澄むや胸いっぱいの深呼吸


暦に合わせるように季節は少しづつ秋に近づいています。母は秋の清々しい空気を思いっきり吸い込んで季節を味わっている自分自身を様子を詠みました。

日本には四季があって本当に幸せだなと感じます。思いっきり深呼吸したいくらいの清々しい秋の空気感は私も大好きです。


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また明日お会いしましょう。💗

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