見出し画像

【詩】湖


空一面に湖が広がっていた
黄色のクレーンが釣竿に見えた
単色の水色は思考停止
すべての建物がくり抜かれていた
波紋がゆっくりと現れて消えて
不意に地べたを歩いているのが
恥ずかしくなった
こんなに澄んだ水ならば
ぼくも そっちで泳ぎたい
反転して 空に飛び込んだら
冷たいかな
気持ちいいよな
溺れないかな
もう溺れてる
楽しいよな
懐かしいよな
なくしてしまったひともこころも
ぜんぶ水色に溶けてしまったもんな
どれくらいのあいだ
息継ぎもせず
泳いでいたんだっけな
思い出せないな
湖が茜色に染まるまえに
どこかにたどり着かなければ
ふちのない湖を
ぼくは泳ぎ切らなければ







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?