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プログラムノート

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12/23 プログラム・ノート(全曲)

12/23 プログラム・ノート(全曲)

分けて投稿していました12月23日リサイタルのプログラム・ノートですが、まとめてひとつでも投稿します。バラバラの機会に書いたものだったため、こちらの投稿では加筆、短縮、推敲などしてあり、個別投稿とは別内容になっております。

プログラム・ノート

デュカス : ヴィラネル

ディズニー映画「ファンタジア」でも有名な交響詩「魔法使いの弟子」など、わずか数曲のみを残し、納得のいかない多くの作品を晩年す

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12/23 プログラム・ノート⑨ル・グラン・タンゴ

12/23 プログラム・ノート⑨ル・グラン・タンゴ

ピアソラ : ル・グラン・タンゴ
保守的なタンゴ愛好家からは「タンゴの破壊者」とまで呼ばれたアストル・ピアソラ(1921-1992)は、確かにアルゼンチン・タンゴというひとつのジャンルの枠内に留まる存在ではなく、彼の名前自体がひとつの独立した音楽ジャンルとなっている、と言っても過言ではないでしょう。クラシックの作曲家を志してパリに留学するも、師のナディア・ブーランジェの慧眼から「タンゴこそ自分の原

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12/23 プログラム・ノート③グリエール 夜想曲&ロマンス

12/23 プログラム・ノート③グリエール 夜想曲&ロマンス

レインゴリト・グリエール(1875-1956)は、かつてはロシア帝国/ソヴィエト連邦の作曲家、と書かれることが多かったですが、今後は、ロシア帝国(現ウクライナ)出身の、との表記を目にすることが増えていくかも知れません。また、家系はフランスもしくはベルギー系、との記述も一般的でしたが、現在では、父はドイツ人の楽器職人、母はポーランド人、とされています。本来はドイツ系の姓Glierで、出版社の誤記によ

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12/23 プログラム・ノート⑤スケルツォ・コンチェルタンテ

12/23 プログラム・ノート⑤スケルツォ・コンチェルタンテ

ヴァーツラフ・ネリベル(1919-1996)は、主に吹奏楽の世界でよく知られている作曲家です。第一次大戦後、成立直後のチェコスロヴァキア共和国に生まれ、スイス・ドイツを経て1957年にはアメリカに移住していますので、プラハの春(1968)とそれを蹂躙するソ連の軍事侵攻より10年以上も前となります(「プラハ1968年のための音楽」で知られるカレル・フサも、1954年には渡米しています)。

ネリベル

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12/23 プログラム・ノート②アンダンテとポラッカ

12/23 プログラム・ノート②アンダンテとポラッカ

カール・ツェルニー(ドイツ語での発音はチェルニーに近い。1791-1857)と言えばまずピアノの練習曲を連想する方も多いですが、ベートーヴェンの弟子にしてリストの師、チェコ系として生まれ育ったウィーン楽壇の主要人物であり、66年の生涯に1000曲以上の作品を残した王道の大家でした。ピアニストとしては、神童との評価を得、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番の初演に抜擢されもしたものの、作曲や指導で多忙

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12/23 プログラム・ノート⑥Solstice

12/23 プログラム・ノート⑥Solstice

後半、2曲目にお届けするのは、ネイガスのSolsticeです。ネイガス同様、ホルン奏者であり作曲家、また教育者でもある、ウェイン・ルーのために2014年に書かれました。至日、という見慣れない訳を宛てましたが、通常summer、winterを前に付けて夏至、冬至の日を指す単語です(蛇足ながら、今年の冬至は、リサイタル前日の12月22日)。なお、ネイガスには、別に、春分・秋分を指すEquinoxという

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12/23 プログラム・ノート⑧ヴァルス・ノワール

12/23 プログラム・ノート⑧ヴァルス・ノワール

こちらも2015年10月のプログラムノートから。このときはビシルさん、ROHオーケストラのSection Principalでしたが、現在はSection Principal, Principal, Sub Principalとある中のSub Principalの肩書です(ホルン・セクション全員がこのどれかなので、肩書にPrincipalがついている人が2, 3, 4番を吹いたりもあるものと思われ

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12/23 プログラム・ノート①ヴィラネル

12/23 プログラム・ノート①ヴィラネル

こちらも過去(2015年10月9日 l'atelier &12日 ドルチェ・アートホール名古屋)のプログラム・ノートのリサイクルです。長さや文体などがバラバラになるかもしれないので、結局はあとで12/23用に加筆することになるかもしれません(^^; これは簡潔めですね。

ポール・デュカス : ヴィラネル
晩年納得のいかない作品をすべて破棄した、という完璧主義者デュカス(1865-1935)の、現

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12/23 プログラム・ノート④伝説

12/23 プログラム・ノート④伝説

タイトルに振っている番号は、リサイタルでの演奏順で、投稿の順番とは無関係です。

プログラム前半の最後に演奏する、マルセル・ポーの伝説。この曲は、自分がホルンを始めた中学生のころ、何枚目かに入手して繰り返し聴いていた、ペーター・ダムのフランス音楽小品集に入っていて、その意味でも思い入れ深い曲です。2006年5月、ボストン留学から帰国して最初のリサイタルでも採り上げ、その時のプログラムノートが残って

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12/23 プログラム・ノート⑦Woven Journey

12/23 プログラム・ノート⑦Woven Journey

2023年12月23日、福岡県久留米市でリサイタルを開催します。その曲目についてのノートを、事前にこちらにアップしていこうと考えました。以前、2020年のリサイタルでも、略式のプログラムノートをFacebookに事前に上げたりしていたので、場所を変えてまた、という感じです。

まずは、後半の3曲目に演奏する、J. ネイガスのWoven Journey について。
ネイガスについては、最近だいぶ知ら

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