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12/23 プログラム・ノート⑤スケルツォ・コンチェルタンテ

ヴァーツラフ・ネリベル(1919-1996)は、主に吹奏楽の世界でよく知られている作曲家です。第一次大戦後、成立直後のチェコスロヴァキア共和国に生まれ、スイス・ドイツを経て1957年にはアメリカに移住していますので、プラハの春(1968)とそれを蹂躙するソ連の軍事侵攻より10年以上も前となります(「プラハ1968年のための音楽」で知られるカレル・フサも、1954年には渡米しています)。

ネリベルが生み出した吹奏楽作品は、当時のアメリカ人作曲家たちの明快で楽天的な吹奏楽曲とは似ても似つかない、劇的緊迫感と厳しい音の衝突に彩られたもので、祖国を離れざるを得なかった作者の内心を想像させるものがあります。トリティコ(1963)、交響的断章(1965)、2つの交響的断章(1969)などの代表作は、鮮烈な響きの魅力と高い演奏効果から、日本でも広く演奏されています。

ホルンとピアノのためのスケルツォ・コンチェルタンテは、それらほど深刻な音楽ではありませんが、ドライでメカニカルな響き、民謡を思わせる(がセンチメンタルにはならない)旋法的なメロディ、といったネリベルの特色は色濃く、ホルンのリサイタル・レパートリーの中では珍しい、疾走感のある音楽となっています。

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