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【おすすめ本】異能の天才達による究極の騙し合い!世界を舞台にしたスパイ・ミステリー『ジョーカー・ゲーム』柳広司

ワクワクして読めるミステリーを紹介します。魅力的なキャラクターと映画のようなストーリーで爽快感溢れる物語となっています。

少し長いですが、本作の魅力を余すところなく伝えようと思うのでお付き合いください!

本書の紹介

柳広司さんの『ジョーカー・ゲーム』です。亀梨さん主演で実写映画化もしていて、アニメ化もされているので知っている方も多いかと思います。

2008年に「このミステリーがすごい!」で第2位、「第6回本屋大賞」で第3位となった名作となります。

五感と頭脳を極限まで駆使した、 命を賭けた「ゲーム」に生き残れ――。
異能の精鋭たちによる、究極の"騙し合い"!
結城中佐の発案で陸軍内に極秘裏に設立されたスパイ養成学校“D機関"。
「死ぬな、殺すな、とらわれるな」。
この戒律を若き精鋭達に叩き込み、軍隊組織の信条を真っ向から否定する“D機関"の存在は、当然、猛反発を招いた。
だが、頭脳明晰、実行力でも群を抜く結城は、魔術師の如き手さばきで諜報戦の成果を上げてゆく......。
東京、横浜、上海、ロンドンで繰り広げられる、究極のスパイ・ミステリー。

架空のスパイ『D機関』の活躍を描く冒険小説

本作は、戦前1930年代の陸軍で極秘に作られたD機関という架空のスパイ組織の活躍を描くミステリーとなります。

殺人事件が起きてナゾを解く、という流れではなく、スパイ達が直面する危機や困難なミッションを如何に解決するのか?という所に焦点を当てたミステリーとなります。

短編集なのですが、固定の主人公はおらず、毎回別のキャラクターが主役となって登場します。

また、必ずしもD機関のスパイが語り手という訳ではなく、話によっては実は脇役だったと思ったキャラが実はD機関だったという展開もあり、『どこにD機関が潜んでいるのか』と推理しながら楽しむ事が出来ます。

後述しますが、D機関のスパイは試験と訓練をくぐり抜けた超人として描かれていて、どんな困難な状況も、ここからどんな展開でひっくり返してくれるんだろうと、ワクワクしながら読む事が出来ます!

凄すぎるD機関の選抜試験

本作のキャラクターの魅力を紹介する為に、そのD機関の選抜試験について少し紹介をさせて頂きます。

D機関は陸軍に極秘で作られた諜報機関という設定ですが(ちなみに戦前に実在した陸軍中野学校がモデルらしいです)、現実では考えられないような選抜試験が設けられています。

例えば、試験会場に来るまでに上った階段の数を質問されたり、机の上に広げた地図のサイパンの位置を答えさせられたと思ったら広げた地図の下に置いてあった品物は何だったかと、注意力と記憶力を極限まで必要とされる試験を受けさせられます。

ところが、D機関に受かったメンバーは、階段の数など余裕で答えられるどころか途中に通った廊下の窓の数やヒビの数まで答えてみせたり、地図の下の品物を事も無げに答えたあげく本の背表紙に書いていた文字や吸いかけのタバコの銘柄までピタリと当ててみせます。

はっきり言ってまともな人間が出来る所業ではありませんが、D機関は、この程度の試験かと言わんばかりの自分の実力に絶対の自信しか持っていないメンバーばかりです。(こんな超人達が十数人も出て来ます)

凄すぎるD機関の訓練内容

試験を通過した時点で人外な能力を持つD機関のメンバーですが、それに輪をかけて厳しい訓練を受けています。

様々な外国語や自動車や飛行機の運転技術、その他医学、宗教学、政治学といったあらゆる学問の勉強をしますがそれは序の口です。

例えばプロの手品師からカードのすり替え術を勉強し、歌舞伎の女型から女装の仕方を学び、果てはプロのジゴロから女性の口説き方といった、スパイとして必要になるであろう技術は全て徹底的に叩き込まれます。

果ては、鏡に逆さまに映った手紙を一瞬で暗記したり、目隠しした状態でラジオを分解してまた同じように組み立てるといった技術も学びます。

こんな試験と訓練を朝飯前にクリアした人間が、D機関という設定なので、否が応でも作中での活躍が期待出来ます。

ちなみに個人的には、こんな授業の合間に、当時はご法度の天皇機関説について皆で語り合っているシーンが好きです。

上海、ロンドン、横浜、さまざまな地域で活躍するスパイ達

本作は日本のスパイの話ですが、時代は第二次世界大戦の前の為、世界各国にスパイとして潜み活躍しています。

戦時中を舞台にした映画や小説はたくさんありますが、日本人から見た戦前の諸外国を舞台にした作品はあまり見ないので、当時の日本人の扱いや各国の様子が分かって勉強になります。

ちなみに本作の時代設定は1937年頃ですが、1940年は本来東京オリンピックが予定されていて(第二次世界大戦により中止となりますが)、日本という国が世界から注目されていた時代となります。

エピソード紹介:「アジア・エクスプレス」列車を舞台にしたソ連情報員との諜報戦!

設定だけを延々と説明してしまったので、個人的にオススメのお話を紹介します。

ジョーカー・ゲームシリーズの3作目「ラスト・ワルツ」に収録されている「アジア・エクスプレス」というお話です。

こちらは満州にある特急列車の中が舞台とした作品です。

D機関の諜報員である瀬戸は、満州での任務の最中、この特急列車に乗り込みせますが、その列車の中で待ち合わせ相手であるソ連の外交官が殺害されてしまいます。

ソ連の諜報機関の仕業だと気づく瀬戸ですが、待ち合わせ相手が持っていた機密情報は盗まれ相手の正体も分からない、更には列車に乗っている2時間の間は外部に連絡も取れないという窮地に陥ります。

しかし、そこは前述したとおり、圧倒的な訓練により培った技術と持ち前の知恵により、ソ連の諜報機関を出し抜き、ある物を使って仲間に情報を伝える事に成功します。

舞台が列車の中という分かりやすい密室劇である事もさる事ながら、読者の予期せぬ方法でピンチを脱出するD機関のスパイの活躍は圧巻です。

さらに、本作では何度か語られますが「スパイが必要とされるのは戦争が起こるまで、戦争が始まってしまったらスパイの存在意義は失われる」という言葉には切なさを感じます。

D機関のメンバーは非常に論理的で現実的なので、戦争が起こってしまえば日本は負ける、と考えており、戦争を行さない為にも日本が有利になるように諜報活動を行っていたのだという事を感じさせます。

※もちろん、国の為というより自分の力を発揮させる場所としてD機関で働いてる面もあります。

実際の戦争が行われて、多大な被害が発生した事実を考えると複雑な思いを感じさせます。。。

昔の日本を舞台にした作品ですがとても読みやすく、超人的なスパイの活躍が楽しめ、ミステリーとしても意外性のある展開が待ち受けているので、是非手に取って頂ければと思います!

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