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XRISMが挑む宇宙の謎

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#ブラックホール

ブラックホールは毛が3本?

ブラックホールは毛が3本?

ブラックホールの脱毛定理 ブラックホールとは、極めて強い重力により、光でさえも脱出不可能な天体です。もともとブラックホールは、アインシュタインの一般相対性理論から予想された、理論的な存在でした。しかし、近年の様々な観測結果から、この宇宙には多くのブラックホールが存在することが明らかになってきました。さらに、これらのブラックホールは、宇宙において重要な役割を果たしていることもわかってきました。
 ブ

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静かで激しい宇宙の実験室 ー白色矮星ー

静かで激しい宇宙の実験室 ー白色矮星ー

人類未踏の極限状態の物理を愉しむ実験室人類の知的好奇心を満たすべく、宇宙の謎を解くためには、見えないものを見る技術が必要です。XRISM衛星の特徴は、なんと言っても高い分光能力(色を見分ける力)。X線も、救急車のサイレンのようにドップラー効果を受けて、運動で色が変わります。その差を1/1000まで見分けるXRISMの能力は、音波に換算するなら、ゆっくり歩くときの音程のズレを聞き分けるような驚異的な

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XRISMで探る超大質量ブラックホールと銀河の共進化

XRISMで探る超大質量ブラックホールと銀河の共進化

イントロダクション
銀河とは、1000億個以上もの恒星からなる、宇宙の基本要素です。近傍宇宙において、ほぼ全ての銀河の中心に太陽の10万~100億倍もの質量をもつ超大質量ブラックホール(SuperMassive Black Hole, SMBH)が存在し、その質量が銀河バルジ(銀河中心部の膨らんだ構造)にある星の総質量とよい相関を持つことがわかっています(下記の図1)。

この観測事実は、銀河とブ

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時空の果て ブラックホール

時空の果て ブラックホール

極端に大きな重力のために光さえも脱出できない天体、それがブラックホールです。ブラックホールは、もともとはアインシュタインの一般相対性理論から導かれた理論上の産物でした。しかし、近年の観測により、この宇宙に本当に存在することが確実になりました。

 2017年には地球規模の巨大な電波干渉計「イベントホライズンテレスコープ」が超巨大ブラックホールの影の直接撮像に成功しました[1]。大きなニュースになり

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宇宙最大の天体 銀河団のダイナミズム

宇宙最大の天体 銀河団のダイナミズム

銀河団は宇宙で最大の天体です。

大きさは約1千万光年、重さは太陽質量の10¹⁴倍から10¹⁵倍にもなり、我々が住む銀河系(天の川銀河)のような銀河が数十から数千含まれます。

すばる望遠鏡のような可視光の望遠鏡(光学望遠鏡)で銀河団を観測すると、銀河団は銀河の集団として見えます。一方、X線天文衛星で観測すると、銀河団は全体がぼんやりとした光のかたまりとして見えます。

この光の正体は温度が1億度

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