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日本人にだって難しい。『ポンフェイ博士の知れば知るほど「はてな?」のニッポン』彭飛

ある年配の日本人を、空港に迎えに来たときの彭飛(ポンフェイ)さんのエピソード。

荷物をお持ちしましょうと言ったら、「結構です」と言われた。
学校で習った「結構」は”OK”の意味だったので、前に進むと「いいです」と言われた。
”いい”も肯定の意と習ったから、荷物に手をかけようとすると、今度は「よろしいです!」と強い語調で言われた。
どうも雰囲気がおかしいとは思いつつ、どうしていいかわからない。

著者の当惑が目に浮かぶようなエピソードです。

日本語の否定表現、断り表現やマイナス評価の表現はとても豊富。遠回しで曖昧な表現は、日本人にとっては「気配り」でも、外国人にはわかりにくい。というか、日本人の私にも、わかりにくい場面が多々あります。

外国人留学生が増えた現在では、日本人の「今度行きましょう」は行かないってことだって、SNSで知れ渡っているらしいですが、それでも知り合いの中国人の同僚は、日本に留学して5年以上で、さらに日本に就職したけれど、仕事メールの文章のどこまでが社交辞令なのか、どこからが本気なのか、わかるようになるまで1年かかったとか。

留学生を友達にしたら、何度となく聞かされる愚痴が、本書ではてんこもり。こういうことが何度も続くと、外国の人は日本や日本人に対する不信感が募り、極端な場合「日本人は表面的!冷たい」になるらしいです。

著者のポンフェイ先生は、外国人が日本の婉曲表現文化を知るだけでなく、日本人も日常的過ぎて気がつかない「自分たちの文化」を知れば、草の根の国際摩擦も減るのではないかと書いています。いやいや、東日本育ちの私にとっても、関西での異文化摩擦の参考になりましたよ。

ポンフェイ先生は、関西育ちの日本人女性と結婚し、日本の大学で働いているそうです。新聞でコラムを連載しながら、在日外国人として、また国際結婚をした人として、日常的に感じた不思議をとりあげ、読者にも「質問」しているとのこと。日本人の読者から、お便りも多いとか。

  なぜ、「お二階」というのに、「お三階」と言わないのか。
  「男前があがる」と「雨があがる」は、どうちがうのか。
  ホコリなのに、目にはいるとなぜ「ゴミが入った」なのか。

日本人すら答えられない、いわれてみれば不思議な日本語。思わず笑える失敗談や、ほほえましい夫婦間文化摩擦などもあわせて、楽しめて、しかも役に立つ一冊です。留学生や外国人労働者が今ほど身近でなかった時代の本ですが、それでもやっぱりおもしろいです。

もっとパワフルな異文化交流が読みたい方は、アフリカのマリ共和国からいけずな京都に留学したどころか、学長にまでなってしまったウスビ・サコ先生の本がおすすめです。あまりに空気を読めず、婉曲な言い回しをストレートに受け取って、ご近所の方に通報されたエピソードは大笑いしました。



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