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インフレ率8.5%はどこから?国内消費応援は逆効果?

経済協力開発機構(OECD)は昨日8日、2022年の加盟国のインフレ率が前年比8・5%と、大きく上昇するとの見通しを公表した。



日本でもあらゆる食料品の価格が上昇し、消費者を直撃している。パンデミックによる供給ボトルネックが大きな問題となる一方で、ロシアのウクライナ侵攻がさらなる供給ショックを加え、輸出制限の波が現れたため、2022年以降も食料品インフレ圧力は高いままとなりそうだ。


さらに、気候変動の影響により、農業の収量や食料安全保障が脅かされ続けるだろう

COVID-19パンデミックとウクライナ戦争が世界の食料価格上昇の大きな要因に

世界的な食料品価格の上昇は、2020~2021年のCOVID-19の世界的なパンデミックの際にいやその前から始まっていた。2021年、世界の小麦価格(単位:米ドル/トン)は前年比36.1%上昇した。

これは、パンデミックを起点とした労働力不足、工場閉鎖、港湾の混雑、輸送価格の上昇などのサプライチェーンのボトルネックと相まって、国内消費向けの需要が高まり、食料生産者のコスト上昇を招いたためである。

2022年2月以降のウクライナ戦争は、ロシアとウクライナの両国が世界の主要な小麦生産者としての役割を担っていることから、世界の食糧供給をさらに混乱させ、食糧価格への圧力を加速させた結果、世界の家計に大きなショックを与えている。

2021年、両国は世界全体の小麦生産量の14.7%を供給していました。ロシアのウクライナ侵攻を受け、2022年3月の世界の小麦価格は2022年2月に比べ12.5%跳ね上がった。世界全体の食料指数(2010年=100)は2022年4月に159となり、2022年2月の141から大きく上昇し、過去最高を記録した。

食料コモディティ価格の推移 出所:World Bank

異常気象と貿易保護主義がさらなるプレッシャーに

パンデミックとロシアのウクライナ侵攻が世界の食料価格を膨らませる大きな要因となっているが、それに加えて世界的な悪天候と輸出制限も世界的な価格上昇圧力に寄与している。

例えば、フランスとインドでは乾燥と高温が続き、米国とカナダでは最近の干ばつが起こり、主要穀物生産国で作物生産量の減少が懸念されています。

2021年にも、悪天候による問題で(米国の熱波やオーストラリアの洪水など)すでに世界の一部の地域で生産と穀物供給に影響を及ぼしていたことからこれは一時的な問題というより、連続して起きている問題と言えそうだ。

世界の穀物生産量を見てみると、2019年から2020年の間に見られた1.0%を超える成長レベルに対し、2021年にはわずか0.3%しか増加しなかった。特に小麦の生産量は2022年に減少する可能性があり、

更にウクライナで予想される小麦の生産量の減少や肥料の不足と相まって、世界の食糧安全保障を脅かし、食糧インフレ率を押し上げるとOECDも見ている。気候変動の影響は今後も農業の収量に課題を与え、長期的に食料価格インフレの要因となることは間違いない

主要穀物生産国 from 国連食糧農業機関(FAOSTAT)

良いことと思われていた、農業保護主義の台頭も、一部の輸出業者が国内供給を確保するために海外での作物販売を抑制している動きがあり、
食糧価格インフレをさらに助長する要因となっている。

例として、2022年4月にインドネシアが多くの食品に使用される主要原料であるパーム油の輸出を禁止したことは、世界市場における不確実性と価格圧力の上昇を引き起こしたことは記憶に新しい。

幸いにも数週間後に輸出禁止は解除され、現地価格は安定した。
2022年5月には、インドが最近の熱波によって小麦の収穫に大きな影響を受けたため、小麦の輸出禁止を発表した。

このように、悪天候が農業生産を損なっていることや、地政学的リスクが高まり、国内のアホなリーダーたちが損害を被っていることと、地方出身の議員を匿う、投票者たちからのプレッシャーにより、2022年には食糧保護主義がさらに高まる可能性がある。

食料輸入国経済と低所得国の消費者が最も大きな打撃を受けることになる

食糧輸入に依存している国、特に中東・アフリカ地域の国々は、世界的な食糧価格の上昇により、輸入代金の高騰と食糧不足のリスクに直面し、大きな打撃を受けることになる。

エジプトがその一例で、2021年のエジプトの物品輸入総額に占める食料品輸入の割合は5分の1以上である。輸入に大きく依存しているため、エジプトの消費者は世界の食料市場の変動に非常に脆弱である。

発展途上国の消費者は、先進国の消費者と比べて、食料品価格の上昇の影響をより強く受けるだろう。理由としては、低所得国のほとんどの消費者が、支出のうち食品を含む必需品に大きな割合を割り当てなければならないからだ。

例えば、2021年のインドの消費者の総支出のうち、食品と非アルコール飲料が占める割合は平均27.8%であるのに対し、米国では6.7%、韓国では12.1%となっている。

出処:the Household Consumer Expenditure survey by Hindu  インドのRural Areaにおける家計出費%
出処:the Household Consumer Expenditure survey by Hindu インドの都市部における家計出費%

短期的・長期的な様々な要因を考慮すると、2022-2023年以降も世界の食料品価格は高止まりすると予想される。このため、加工食品、食料品、外食産業など、食品関連分野の企業は引き続き投入コストを押し上げ、適応を迫られることになる。

また、企業は、食料品代金の上昇に圧迫される消費者の支出や買い物行動の変化も把握する必要があります。


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