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藁人形を爆破した話

私はオカルトや都市伝説が大好きである。それだけであったら良かったのだが、私は夢見がちの阿呆でもある。
妖狐に憧れ毎日神社を清掃したり、深夜鏡に向かってひたすらじゃんけんをするという奇行に走ったりもした。そして最後には我に返り、ホラー要素も相まって後味の悪い結末を迎える。そんな愚行を何回も繰り返してきた。今回は様々な黒歴史が揃う私の強烈打線でもクリーンナップをはれる話をしたいと思う。私の長ったるい駄文に目を通してくれれば天国のワラー君も笑ってくれることだろう。

理解不能な思考回路

「藁人形を作ろう」
ふとそう思った。何故そんな考え行き着いたのか分からないが、やることもなく畳の数でも考えようかとも時に唐突にそう思った。
暇だから藁人形を作ろうとなる私の思考回路に心配を覚えるが、当時の私は「妙案が思いついた!」と浮かれていた。あのような結末になるのを知っていたら私は絶対やっていなかったであろう。

ガキ大将 採取へ向かう

当時の私は決まってから行動まで早かった。
麦わら帽子に短パン半袖、そして手には鎌という閑静な住宅街には不似合いな格好で近所の空き地にかけ出し、近所の人たちからの白い目線に耐え忍んで一心不乱に鎌を振り下ろしていた。今思うとガキ大将のような格好をした成人男性が鎌を振っていたあの姿は地獄絵図であったことだろう。
真っ先に職務質問するべきであろう私を二時間弱放置していたこの町の治安は大丈夫だろうかと心配になる。

帰宅したとき母が「近所の人に困難見られたら末代までの恥やわ」と洗い物をしながらぼやいていたが安心して欲しい、多分私が末代だろう。ご先祖様すみません。

ワラー君誕生

そんな母の皮肉を受け流し、いざ製作作業に取りかかってみると意外にも簡単であった。
材料も輪ゴムとはさみだけという手軽さでありながら十分弱で完成する単純さも持ち合わせていた。


こんなに簡単ならば部屋いっぱいになるまで作ろうかと馬鹿なことまで考えるほどだった。
さすがにそんな奇行をするほど馬鹿ではない私に安心を覚えながら、完成した藁人形に「ワラー君」と命名した。


そんな安直すぎる命名をされ悲愴な誕生をしたワラー君だが、ものの一時間で悲惨な最期を遂げる事になる。

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結論から言うとワラー君はなんやかんや爆破されることになった。
此まで読んでくれた人は「なんやかんやって,,,,」と思うかもしれない。
でも本当に「なんやかんや」なのだ。場の流れとは怖い物である。


しかしこれ以上「なんやかんや」を言い過ぎたら、「なんやかんや」とは何だとゲシュタルト崩壊を起こしそうなので大人しく事の経緯を説明しよう。

例のワラー君が完成してから、高揚感が収まらぬうちに友人を何人か呼び出した。
私の友人達も変わったことがめっぽう好きなので、藁人形の事を話すと近くの公園にすぐに集まった。
類は友を呼ぶとはこの事である。


友人達も初めて見る藁人形に対する興奮を隠せずにいた。
認知はしているものの現実に藁人形と関わる機会を持たないので当然の反応だ。


しかし慣れとは怖いもので、五分もたたないうちに全員がワラー君に慣れ、最終的に全員が飽きた。
そんなワラー君を勝手に創成し、勝手に飽きて興味を失った私たちは、ワラー君で実験することにした。
勝手に飽きられ実験に使われるワラー君からすればとんだ災難であり悲劇であった。

ワラー君 実験される

本来の藁人形の使い方は人を呪うことである。
調べたところ藁人形のどこを打つかどうかで効果が変わり、場所によっては相手を死に至らせることもあるらしい。私達は刺激のほしさにネットで調べた藁人形の効果を試して見ることにした。


本来ならば調べるだけでリスクや常識を考慮し実行せずに終わりになるのだが、夜ということもあり当時のその場は異質だった。誰も止める人がおらず本当に実効することになったのだ。
髪の毛も必要と書いていたので、律儀に髪の毛までワラー君に入れ込むまでの徹底ぶりであった。

きっと場にいた全員がやらない方がいいと思っていたに違いないが、一度実行すると言った手前撤回することができなくなっていたのだ。分かり安く言うと全員がやけくそになっていたのである。私も内心そう思う反面、威勢のいいセリフをほざき準備に取りかかった。

釘を打ち込む場所によって効果が違うと書いていたが、さすがに命に関わる胸の部分以外にすることにした。意地を張る異質な空間ながらも、申し訳程度のモラルは残っていたかと胸をなでおろした

結果から言うと何も起こらなかった。
全員が安堵していたことだろう。

そう、全員が何もなかった結果に安堵して終わっていれば何もなく終われたのである。

しかし私たちはそこで退かなかった。何もなかった結果に不満を言い、花火を買いそれでワラー君を焼くことにしたのである。ここまできたらただの気狂いであった。


全員が「男に二言はない」などと思ってもいないことをほざきながらワラー君に花火を装着しだしたのである。私も「男に二言はない」という言葉を作った人物に理不尽な怒りを覚えながら黙々と花火を付けていた。とにかくあの場は異質であった。全員が全員正気ではなかった。今になってあの空間自体が呪いの効果ではなかったのかとさえ思う。

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花火を付け終わり、よく分からない心境のまま点火することになった。
何でここまでするのだろう、誰がこんなことしたいんだ、そんなことを思いながら点火した。
しかし今更遅かった、文字どおり火蓋は切られたのであった。

ワラー君 燃える

結論から言うと全焼した。部分的攻撃どころではない、全部分的中の全焼である。
死の効果があると言われていた胸の部分を避けた先ほどの努力も意味なく全焼してしまった。

 止める暇などなく点火したと同時に一瞬で火だるまになってしまったのである。
呆然とそれを見るしかなかった私の眼前には、どこか可愛らしいワラー君はいなかった。
断末魔の様な燃える音を鳴らす、恐怖の対象である藁人形がそこには居た。

火だるまになった元ワラー君を消火し終え、一段落終えたその場には先ほどよりも重い空気が流れていた。全員が満場一致でやらなければ良かったと思ったことだろう。

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「やらずに後悔より、やって後悔」という言葉が名言のように持て囃されているが、こんな言葉はきれい事でありそれを信じて実行した私たち阿呆の結末が此である。


しかし今更後悔してももう遅い。私たちは自分の髪が入った藁人形を燃やしたという事実におびえながら過ごすことになる。シャンプーもするときも寝るときもビクビクしながら過ごすことになる。なんやかんや流れに身を任せた自分に後悔することになる。


 そして私は現にまだ呪いに恐れながらこうして書いている。

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