因果関係を「ループ図」で考えるだけで営業人材が育つ説
今回は柴田史郎さんの記事『因果関係を「ループ図」で考えるだけで仕事の質があがる説』を参考に営業人材の育成について考えてみます。
柴田さんの記事の特徴
柴田さんの記事の特徴は丁寧な言語化とシンプルでわかりやすい図解。
真剣に取り組むべきことから(おそらくは)思いつきの話まで、本当に丁寧に言語化されているというか、自分との対話を普段からよくされているんだろうなという印象を受けました。
人と話すと思いがけずアイデアがポンポン出てくるじゃないですか。でもそれはたまたま話し相手いるからできることで、わざわざ自分ひとりでやる人はあまりいませんよね。
柴田さんはそのあまりいない側の人だと思う。
丁寧な言語化のせいか、はたまたトピックのチョイスがいいのか。読んでいるといろいろ思い浮かぶ、言い方を変えると「脳が動き出すnote」です。
今回はその中でこちらの「ループ図」の記事に着目しました。
営業人材の育成問題にループ図が使える?
営業人材の育成は、どこの会社でも永遠のテーマ。
じつは弊社でも悩み続けておりまして、育てる側も育てられる側もこの壁を越えるべく、日々厳しいやり取りを繰り返しています。
この重すぎる問題を解決に導く糸口を、ループ図で見つけられないだろうか。以下、柴田さんのコメント。
「自分にとってそう簡単に解決できそうもない問題」なら営業人材の育成はぴったりじゃん。じゃあ、ループ図でやってみようかなと思ったわけです。
ちなみにわたしは営業スタッフでもないし、営業を育てる人でもありません。なので関わっている人の言葉を拾いつつ進めていきます。
「失注報告」で営業人材は育つか
弊社には「失注報告」という仕組みがあります。
失注したら、経緯も含めて社内SNSで報告するのです。するとそれを見た上司や同僚からコメントがつくというシステムになっています。
報告をするのが目的ではなく、営業スタッフの成長を促すのがおそらくこのシステムの狙い。
失注した後に悩むだけでは再トライしてもまた失注します。育てる側としては、この悪循環を一刻も早く抜け出してもらいたい。そこでループに入れ込んだのが「失注報告」です。
「悩む」のところを「失注報告」に置き換えると行動の変化が起こり、受注につながっていくという目論見ですが、そうは問屋が卸しません。
まじめに失注報告をしても、失注ループからなかなか抜け出せない例は山ほどあります。
ループの中にいる当人を周りの人がほめたり叱ったりしても、残念ながら失注ループを抜け出す決定的な要因にはなりません。
むしろ失注ループを余計にぐるぐる回してしまい、失注が失注を呼ぶ「失注フィーバー大回転」なんてことにもなりかねない。失敗が続き過ぎれば人はつぶれてしまいます。それはぜひとも避けたい。
けっきょく失注ループの外に出るには、ループの中を変えるしかありません。
そう思ってループ図を眺めていると、「失注した」と「失注報告」の間になんか入りそうだなとわかります。何か入るとしたらここしかないからです。
失注と失注報告の間
では具体的に何が入るか。
じつは最近ちょっと売れ始めた弊社営業スタッフがおりまして、彼女の失注報告が社内で絶賛されていました。失注報告ですよ?
以下、彼女の報告に対して寄せられたコメント。
まとめると内省力が大事で、内省力の中身は「事象を言語化」し「対策を明確化」すること。すなわち「ネクストアクション」まで考えられることです。
失注報告を見るとこれができているのがわかり、それなら次はきっといけるね、最近受注増えてるのも納得だねと皆が絶賛したのです。
この内省をループ図に加えると以下のようになります。
従来の失注ループの中に「事象の言語化」と「ネクストアクション」のループを新たに組み込みました。アクション考えてたら事象の言語化に戻ることもあると思うので、ここはループと考えます。
何をしたのか
何が起こっていたのか
よかったのは何か
よくなかったのはどんな点か
事象を言葉にして洗い出し、それをもとにネクストアクションをひねり出します。たとえば例に取り上げた営業スタッフはこんなことを言っていました。
これをもとに彼女がネクストアクションとして考えたのがこちら。
このループを経ての失注報告なら受注への道が見えてくる感じがしませんか? 彼女は実際そうなっています。
失注ループ脱出のポイントは言語化
新たに加えたループのうち、より重要なのは「事象の言語化」です。ここを間違えるとネクストアクションがおかしなことになる。
たとえば失注した理由として「費用感が合わなかった」「競合と比べて高すぎた」と言語化したとします。するとネクストアクションは「値下げしてもらおう」となり、こうなると値下げ地獄に転落するしかありません。
そもそも価格は営業一個人では決められないので、ここは言語化がまずかったとなります。
ちなみにこの点は柴田さんの記事でも言及されていました。
費用感を失注した理由にするのは「他人が悪いというループ図」を書いているようなものです。
だから自分で状態を変えられるループにするために、言語化からやり直すわけです。
ネクストアクションに必要な逆算の思考
とはいえ、言語化するだけでそんなに都合よく適切なネクストアクションが出てくるものでしょうか。
おそらくですが、現在の自分ができる範囲で考えても成果につながるアクションにはなりません。
アクションをやや上方に引き上げるには「自己規定」というブースターが必要です。
これはわたしが言っているのではなく上司Aの弁であります。
言語化した事象を踏まえつつ、あるべき姿から逆算して足りないところを付け足して次のアクションを決める。
このプロセスをループ図に加えたのがこちらです。
「自己規定からの不足を加算」することで「ネクストアクション」を引き上げるという意味で、ここは線を太くしました。
ここはループというより「スパイラル」なイメージです。
失注ループを経験すると成長は加速する
ここからはわたしの想像ですが、失注ループからの脱出に成功した営業は、おそらく成長がさらに加速すると思われます。
なぜなら失注ループを経験したおかげで、「受注ループ」も回せるようになるからです。
受注した途端、失注ループの反対側に新たに「受注ループ」が発生します。
受注はいいことなので、本来振り返るアクションにはつながりにくい。
でも失注ループを回した経験があれば、同じループが受注ループ側でも回せることにすぐ気づくはずです。
さんざん失注ループを回した後なら、むしろ受注してもループ回すのが当たり前の感覚になっているかもしれません。
その点、最初からなんとなく売れてしまった人は弱い。ループを回す経験が積めていないから、いったん失注ループに入ったらなかなか抜け出せないでしょう。
その意味では失注からスタートするのは、営業が成長する上で必要なステップと言えなくもない。辛い道ではありますが、そのぶん足腰は強くなります。
営業の成長はどっちのループも回し続けて、受注ループの滞在時間を徐々に伸ばしていくイメージですね。
わたしは営業ではありませんが、自分の経験と照らしてもまんざらハズレてはいないと思う。
ちなみにYuki Ishii(DJ141)/株式会社digsas CEOさんは「圧倒的に受注分析が重要」とおっしゃっています。
失注分析は、受注分析の重要性に気づいて実行していく過程にあるものじゃないかと個人的には思います。分析の型を身に付けるには失注の方がやりやすそう。
ループの変化はマインドの変化でもある
失注ループから受注ループまで自分の中に構築できると、マインドも変わります。先の営業スタッフがこんなコメントを残していました。
マインドが行動を変えたようにも見えますが、このマインドが初めからあったとは考えにくい。
まず行動の変化があってマインドが変わり、さらに行動が変わったのではと推察します。これもループになっていますね。ループ図にしておこう。
全体像がわかると細部に納得感が出る
長々とループ図を書いて営業人材の成長について話してきましたが、こんな図を書いて何になるんだと思う方もいるでしょう。
じつはわたしも書きながらちょっとそう思った。何になるんだと。
そんな自分に反論をすると、「全体像がわかること」に意味があるんじゃないか思うんですよね。
ただ「レンガを積め」と言われるとやる気も起きないけれど「キミが積むレンガがこの国を守る砦になるのだ」と言われると、レンガ積みの仕事への取り組み方が違ってくる。
それと同じで、ループの全体像がわかれば、失注報告が持つ意味合いも変わってきますよね。受注ループへ移動するためのピースなのだと思えば、そういう使い方をするようになるんじゃないかと。
そうはいっても、営業人材の育成は企業の永遠のテーマ。ループ図くらいで解決できるとは思っていません。ただ営業の方々が「これならもうちょっとできることあるな」と思ってくれたら上々です。
まとめ
以上、柴田史郎さんの記事を参考に、営業人材の育成をループ図で考えてみました。
どうぞ本家の記事も読んでみてください。脳が動きます。
「いや、営業の成長とはそういうループ図ではないんだよキミ」という方、ぜひあなたの作ったループ図を紹介してください。記事リンク貼っていただけますと、通知が飛んでくるので必ず見に行きます。
今回取り上げたスタッフではないですが、弊社営業スタッフが悩んだ軌跡の記事もあります。よろしければこちらもどうぞ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございましたー。
当記事が、note公式マガジン「キャリア 記事まとめ」で紹介されました。ありがとうございますー。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?