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おすすめ短編集

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#オリジナル小説

【短編】地平線

【短編】地平線

冬になると鈍色が辺りを覆うけれど、ひときわそれが顕著なのは空。ずっと暗いのに、陽が沈むのも早い。晴れや雨は好きだけど、曇りの日はあまり好きじゃなかった。母親の帝王切開で出来た古傷が痛んだり、僕も肺が痛くなったりするから。そんな雰囲気ってどうにもいたたまれない。
こういう時、このどんよりする痛みを誰かと分かち合えないものだろうか。僕の隣にいる彼女は、なんでもわかってくれるけど、それは何だか年長者が後

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【短編】父と弔辞と新聞紙

【短編】父と弔辞と新聞紙

うちの親父は変な人だった。信号が赤になった時に僕は親父のことを考えていた。車の後部座席には新聞を束にして積んでいた。

「いいか、付き合った女をどれだけ好きだったのかなんてのは、別れなくちゃだ。一番は離婚。」
なんでお母さんと結婚したの?と質問した幼き頃の僕にたいして、こんなことを言うような人だった。
「しょうもない理由で別れる奴らなんてのはな、そもそもしょうもないんだぞ。でも、愛が深いとな、きっ

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【短編】ありがとうって、あのこに言ってくるよ

【短編】ありがとうって、あのこに言ってくるよ

あるいは運が良ければ、こんなふうにふたりで歩くことはなかったのかもしれない。
ふたりにとって、この二週間というものは悲惨というと大袈裟だが、少なくとも穏やかではなかった。ふたりには大仕事が待っていたのだ。それは人生の中で大きな意味を持つものだった。これまでの人生は、このゴールに向かって一直線に伸びているようにさえ思えた。

店を構えて、一緒に働き始めるということ。新しいそれぞれの生活を始めるという

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【短編】アンティークになったら

【短編】アンティークになったら

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そのカフェがとにかく好きになったのは、飲んだ事もないほどの深煎りのコーヒーと、オーナーさんや店員の気さくさが、僕の居心地を良くさせたからだ。
本当に毎日のように通っては、そこでコーヒーを飲み読書をしていた。このお店を知った当時は、とにかく観光客で溢れ、何度も来店を諦めたものだが、今はその観光客は消え、比較的入りやすくなっている。しかし、そのためか、本当に美味しいコーヒーを求めて、あるいは素敵

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【短編】漂流

【短編】漂流

割れるような拍手と歓声の中、俺は目を瞑っていた。
 舞台の上で受ける拍手。うずくまり涙を流す俺に、仲間は一発叩いてくれたおかげで、なんとか列に戻り、挨拶を済ませることができた。

 小さな地方の劇場でありながら、俺を含めて、仲間達の熱意は決して弱くはなかった。俺たちは普段小さなアマチュア演劇をしている。それが今回、大きな作品に挑戦しようという提案が上がり、都市のプロ劇団が取り組むような演目に挑戦す

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【短編】流れる川を感じながら

【短編】流れる川を感じながら

ずっと昔のことになるけど、友達を事故で亡くしたことがある。
その友達が死ぬことになった日の、その前日、たまたま放課後の屋上で、少しだけ私は彼と話した。
「アンナ、元気にやれよー」
それが私が聞いた最後の言葉だった。あの時の彼の心境は、今となっては、いや、翌日でさえもわかるはずはなかった。
彼は自分が死ぬという事を、どこかでわかっていたのだろうか。

私が死ぬ日、その前日は何をしているだろうか。

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