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「身内をサゲる人」は、どうしてサゲるのか。という話。

幸田七海さんのこちらの記事で、「身内サゲする人」について書かれていて、身に覚えがありすぎたので、書く。

私は毒親育ちだが、この毒母がめちゃくちゃ身内サゲをする人間だった。
そして、幼少期からこの母にサゲられ続け、しかも「身内サゲは正しいことだ」と正当化する母の発言をまるっと信じて育ってしまった私は、かなり最近まで、コミュニケーション上のテクニックとして「身内サゲ」を使ってきてしまっていた。

母ほど酷くはなかったはず……と思いたいが、今となっては言い訳でしかない。
サゲてしまった方々、本当にすみませんでした。

そういうわけで、実際に身内サゲをする人間を長年見てきて、更に自分でも身内をサゲてきた私が、「身内サゲをする人はどんな人か、何故するのか」について書こうと思う。


「身内サゲ」をする人とは

一言で言えば、「身内サゲ」をする人は、自信がなく、他人の目を非常に気にする人である。自信はないけれどよく見られたい、そして何よりも他人に攻撃されるのが怖い。これが根本的な動機となる。
攻撃されるのは怖いが、自分をよく見られたいので、自虐はしたくない。そこで、下げても良い他人=身内をサゲるという選択を行う訳である。

こうした人は、サゲて良い対象=身内=「自分の所有物」と認識している。
サゲられた人が気分を害するなどということは考えないし、もし気分を害したという訴えがあった場合は「そんな冗談で怒る方が悪い」などと逆ギレしたり開き直ったりする。「それだけあなたを信頼してるのよ」などと懐柔してくることもある。本人としてはサゲ対象を見下している自覚すらなく、心底「信頼している」つもりだったりするから、余計にタチが悪い。

結論を先に書くが、こういうタイプの人にサゲられたくないならば、選択肢はざっくり二つである。
・ガチギレするなどして「こいつをサゲると面倒だ」と学習させる。
・距離を取って「こいつは親しくないからサゲられない」と判断させる。
このどちらかしかない。

身内サゲをする人は、サゲられる対象が存在する限り、身内サゲを止めることは基本的にない。身内サゲをすることが標準になっていて、身内サゲをしないためには「我慢」しなくてはいけない状態だからだ。
私は、サゲたら凹みそうな人と親しくなったことで、「そもそもサゲる必要ってないな」と気付いて止めることが出来たが、もっと高頻度で身内サゲをしまくるタイプの人が止めることは非常に難しいと思う。距離を取る方が手っ取り早い。
家族や血縁など、距離を取りようがない相手に身内サゲを止めさせたい場合は、強硬に主張し、出来ればガチギレしまくるなどで本人に嫌な思いをさせて、「サゲはデメリットの方が大きいので我慢せねばならない」と認識させる必要がある。

何故、身内サゲをするのか

パターン①「妬まれ」への防御としての身内サゲ

例えば、Aさんには収入の良い夫がいるとする。
Aさんは、上記のような自信のない人である。他人と会話するときは常に、他人から妬まれて攻撃されるような気がしている。「自分はこの人に好かれているから、攻撃されないだろう」という自信が持てないし、自分がコンプレックスの塊なので、「自分だったら妬ましく思って攻撃する、だから相手も攻撃したいはずだ」と考えているからだ。

なので、他人から攻撃される前に「うちの旦那なんて」と夫をサゲ始める。事実かどうかはこの際関係ないし、夫は自分の所有物なので、夫個人の名誉など概念として存在しない。自分の名誉に内包されているという考えだからだ。
夫が苦情を言ったところで「あなたの収入が良いから、妬まれて大変なのよ」「あなたのことを愛してるからそういう風に言えるのよ」といった種類の正当化をして終わりである。

基本的には家族などがサゲ対象となるが、交友関係そのものを妬まれそうな場合は他人もサゲる場合がある。例えば「人気者のBさんと仲が良い」ことを妬まれないために、Bさんサゲをする場合などである。

この種類の身内サゲは、ごく普通の人でもそれなりにやる。謙遜との境界は程度問題だが、不必要な時も常にやり続けるのが「サゲる人」である。

パターン②「イジリ」としての身内サゲ

私が多用してしまっていた種類の身内サゲである。本当にすみませんでした。
これはこのまま、「ネタとして」「場を盛り上げるため」「ほらこの子結構面白いでしょ?」などの意味で、「良かれと思って」サゲる。
本人が心から笑ってくれるレベルであれば問題ないとも言えるが、親しさ加減や本人の性格などを読み違えていると大惨事だし、身内サゲに慣れすぎた人間はしばしばネジが外れていて、聞いている側が笑えないレベルのサゲを平然とやらかすことがある。
また、多用するのは誰かをサゲないと面白いことが言えない、自信や能力のなさでもある。本当にすみませんでした(2回目)。

パターン③「親しさマウント」「自分は愛されているアピール」としての身内サゲ

冒頭で紹介した幸田さんの記事でのサゲは、恐らくこれに該当する。
つまり、「この人は私のものよ、一番親しいのは私なんだからね!」という意図で、他のママ友さん達に対するマウントとして、幸田さんをサゲているように思う。
自分は彼女をこれだけサゲても許されるほど親しい関係であり、他のママ友さん達が割り込む隙などないのだ、あなたたちの知らない彼女を自分はこれだけ知っているのだ――と、そういうマウントを取ることで、他のママ友さん達を排除し、彼女を独占しようとしているのである。

こうした行動を取る人は、「この人は自分のものだ、他の奴と親しくなるのは許さない」という傲慢さと、「実は自分はそんなに好かれていないかもしれない、他の人に取られるかもしれない」という自信のなさから来る不安をセットで持っている。愛着障害で言えば不安型の、試し行為とも言える。
こういうサゲで周囲へのマウントを取られている状況は、一言で言うとメンヘラに執着されている状態なので、ここから穏便に距離を取るのは、少々厄介だ。

また、家族への過剰なサゲを行うことで「自分はこんな風に言っても許されるほど家族に愛されている」というマウントを周囲に対して行う人もいる。例えば配偶者をボコボコにサゲることで、自分の家庭内での優位性や支配力を他人に示す――などの場合である。
要はモラハラ自慢だが、本人はマウントをしている状態なので話していて気持ち良く感じており、サゲ対象の家族には「これは愛情表現だ」と本気で思っていたりする。
このタイプの人は、サゲている状態が気持ちいいので、余程でなければサゲをやめない。そして親の立場の人がこれをやる場合、その人はほぼ間違いなく毒親である。ご愁傷様です。

友人・知人ポジションから「サゲ」をやめさせる対策案

最も過激な対応策は、サゲられているその場――つまり公衆の面前で、正面からサゲに対してガチギレして、「こいつは愛されアピールをしているが、自分は納得していない」と周囲に対して示すことである。
が、相手の面子をぶち壊すことになるので、めちゃくちゃファビョられる可能性がある。上手く決まればその場で喧嘩別れになり、交流自体が二度となくなるだろう。

第二案として、陰で苦情を申し立てるのが有効な場合もある。上記の案よりは、相手の面子に配慮してあげる折衷案だ。
こうしたサゲを行う人間は、逆ギレしたり正当化したりしながらも、直接文句を言われることには意外と弱いので、何度も文句を言い続けることで、徐々にサゲを行わなくなる可能性がある。
また、「次にみんなの前でサゲたらその場でキレるからね」と二人の時に脅しておくのも効くかもしれない。パワーバランス次第だが、試す価値はあるだろう。

第三案、最も大人な対応は、幸田さんも検討されている「徐々に距離を離していく」である。上手く行けばこれが最も穏便な方法だが、相手からの好かれ度合い・依存され具合によっては、距離を離していく途中で、まるで恋愛かのように「最近私を避けてるよね?」「私の居ない所で○○さんと仲良くしてるんでしょ!!」的な攻撃を受ける可能性もある。
幸田さんが無事に距離を取れることを、陰ながらお祈りする所存である。

私は数年前、身内サゲ癖はそこまででもないが、何かとマウント癖のあるネットゲーム上の友人と距離を取ろうとして、そういった痴情のもつれのような面倒くさい展開になったことがあった。最終的には長文メールで至極丁寧に「あなたのこのマウントがこれだけ嫌だった、これもこれもこれも(以下略)」と書き送ったところ、反論メールが届くと同時にあらゆる連絡手段をぶち切られる形で関係が終わったのだが、そこに到達するまでの「別れ話」に実に半年近くかかってしまっていた。なんで30代も半ばを過ぎて、会ったこともない同性のネット上の友人相手にここまで苦労をせねばならないのかと、遠い目になったものである。

相手を自分の所有物のように思っている人は、その「所有物であるはずの人」が離れようとすると、非常に固執する。日頃は他の人よりも雑な扱いをしてくるのだが、それは「大事でないから」ではなく、「甘え・信頼」であるらしい。
こうした人は、親しくなればなるほど、どんどん横暴になり、支配的になっていく。私は母がこのタイプであり、母による教育が行き届いてしまっているためか、このタイプの人間に非常に好かれやすく、定期的にこの種のトラブルが起こってしまう。私が現在ママ友を一人も作っていないのは、これを警戒しての事だったりする。実に厄介だ。

蛇足ついでに言うと、上記の元友人は英語が堪能で「私は英語できるのよマウント」をする癖があったのだが、嫌気が差した私が一度「黙れ毛唐かぶれが!」と皆の前でぶった切ってみたら(その場ではかなり笑いを取れた)、それ以降ずっと、私と二人きりの時でも英語マウントを封印していた。
マウントにキレ芸で対抗する戦法だったが、こうした人は面子を何より大事にするので、皆の前で冗談っぽくディスったりサゲ返すことで、穏便に黙らせられることもあるかもしれない。
(英語や海外文化が好きな方すみません。あくまでもマウントへの対抗をしたかっただけで、本心での発言ではありません。ご容赦ください)

以上が身内サゲをする人の行動の理由と、対策案だ。
私の経験をもとにした独断と偏見ではあるが、身近に身内サゲをする人がいる方の参考になれば幸いである。

結論:
身内サゲはしない、されないのが一番です。
謙遜であってもほどほどに。

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