地元のこと
バッターボックスの記憶
今も少しだけある。秋商のグランド、外角低めのストレートを待つ。タイミングをはかり、がむしゃらにバットを振る。打球は一二塁間を抜ける。
バッターボックスではいつも孤独。たくさんの応援の声は届いているけど、ピッチャーとバッターの1対1の勝負。
野球のおもしろさはそこにある。だけど、残酷さもそこにある。誰も助けてくれない、全部自分。そんなプレッシャーに負けないように、バット振ってきた記憶が、今の自分に一番残っている。
高校時代に学んだこと
日々を生きる。今を生きる。野球を辞めてから7年?けっこう時間が経った。「草野球でも続けないの?」と、聞かれる時がたまにあるが、やらない。ぼくは高校で本当にやり切った。
目の前のことを一所懸命やること。周りと比べないこと。正直に、でも配慮を持って、人にものを伝えること。仲間とは、本当のことを言える関係ということ。
大切なことの多くは、高校時代に学んだ。ぼくはそれを忘れないように、それを大切にしながら今日も生きている。
なんだかんだ言って、ここが地元
仲間と語る。日々のこと、今日のこと、他の仲間のこと。
「たつるは変わらないな」と言われる。複雑な気持ちだけど、たぶんあまり変わってないと、自分でも思う。
みんな良いところがある。最高におもしろいアイツがいる。でもそれは環境によって顔を出したり、出さなかったりする。難しいところだ。
秋田に帰ってきて思ったことはたくさんある。でも思うことと、できることは違う。自分にできることは半径5メートルにいる仲間と、おもしろいことをすることだった。
ぼくと、その仲間の日々がおもしろくなれば、秋田で暮らす他の人の日々もちょっとはおもしろくなるのかな…?そんなことを思いながら一年間、ひたすらにやってきた。
何度も正直なことを言った。たくさん傷つけただろう。すんません。でもそれも本当のことだからねぇ。
そんなこんなで時間は経った。ありがたいことに、ぼくらの活動にもたくさんの人が来てくれるようになった。最近は取材の依頼もけっこうもらったり…びっくりだ。
最初の動機に「社会」という言葉はあったかな。とりあえず秋田で暮らす日々を、なんとかおもしろがろう。それが強かった。
秋田が地元で、この土地で生まれ育ってしまったぼくの意地だ。ぼくたちの意地だ。県外にたくさんの人が行くなかで、残ってしまったぼくらなりの抵抗かもしれない。
秋田は地方で、ローカルで。たくさん良いものもあるし(最近気づいた)おもしろい人もたくさんいる。何かをはじめるにも良いところだ。
でもその前に、ここはぼくの地元だ。生まれ育った場所。ガキの時に遊んだところ、喧嘩したところ。
いろんなものが、この土地には混ざっている。いなくなった仲間の顔や、悪さをしていたアイツの背中。嫌な記憶も、悔しい記憶も、ガキの時の色んなものがくっついてくる。
外に出たら、それはなくなる。まぁまぁ楽だし、だからぼくは北海道が好きだった。でも、ぼくは今ここにいる。だから、この土地で自分にできることを探そう。
一年間続けてきた。改めて、また半径5メートルから。でも、その範囲にいる人も、その範囲にある課題も、山ほど増えた1年だ。
ややこしいなぁ~でも仕方ない。そんな時こそ、過去を悔やまず、未来を憂えないで、今ここを生きよう。