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【#Real Voice 2022】 「ナゼー」 1年・髙見真史

本日の部員ブログを担当させていただく、1年マネージャーの髙見真史です。よろしくお願いします。とても有名なコンテンツを自分が書く側になっていることに妙な違和感を覚えますが、精一杯書きます。とはいうものの、正直なところ何を書くのかなかなか定まらず、締切りが迫ってきてしまいました。テーマは自由とのことですが難しい。時間をかけて考えたのですが、今回は色々な「なぜ」をテーマに書かせていただきます。


「髙見ホペイロ真史」。同期が今年の早慶戦パンフレットの中で僕のことをこう紹介してくれました。「ホペイロになりたい」。これが僕がア式蹴球部の門を叩いた理由です。

聞き馴染みのない方も多いでしょうが、「ホペイロ」とはポルトガル語で「用具係」を意味します。エキップメントやキットマンなどといった言い方もしますが、ヨーロッパをはじめサッカー先進国ではチームにとって重要な存在だと知られています。用具係の名前からも分かるように、選手のスパイクやウェアの管理を一手に引き受けます。試合で汚れたスパイクを新品同様に磨き上げ、ユニフォームを洗濯し、スタジアムのロッカールームに綺麗に並べる。試合にとどまらず練習の準備や補助もします。選手が手ぶらできて手ぶらで帰れるようにする、いわば準備のプロ。それがホペイロです。完全な裏方の役割ですね。

少し前置きが長くなってしましましたが、僕がなぜ決してスポットライトを浴びることのないホペイロを志すことになったのか。きっかけは些細なことでした。

小学2年生の夏休み。サッカーを始めて1年ほど経った頃に友達に招待券をもらい、初めて地元のJクラブの試合を見に行きました。このときの「羨ましい」。これが最初のきっかけでした。というのは、少年サッカーとは違いプロの試合時にはピッチの周りに飲料ボトルが置いてあり、プロ選手は試合中に自由に水が飲めます。貧弱だった僕にとって、とにかくこれは羨望の的でした。喉が渇いたら好きな時に水分補給ができる。正直試合中もプレーそっちのけでピッチ上のボトルのことばかり考えていました。

試合が終わり、選手たちがスタンドに向け挨拶し終えたのち、ふとピッチに目を移すとつい数分前まであったボトルが忽然と姿を消していました。よくよく見てみるととんでもない手際のよさでボトルの残りを捨て、回収していくスタッフがいました。このスタッフさんこそがそのチームのホペイロであり、ホペイロというプロフェッショナルと僕との出会いでした。「羨ましい」が「かっこいい」に変わり、「自分もああなりたい」と思うようになりました。

そこからというものホペイロについての知識を増やすため、四六時中ホペイロについてネットで検索したり、週末には父に各地のJクラブの練習場に連れて行ってもらい直接そのクラブのホペイロさんにお話を聞いたりしました。選手のファンサービスそっちのけでスタッフさんに話しかけようとする小学生は異質な存在だったと思いますが、各クラブのコーチやホペイロさんは嫌な顔1つせず僕に付き合ってくれました。この経験が今の僕を形作っています。

中でも、地元のクラブのホペイロさんには本当によくしてもらいました。練習後忙しいはずなのに生意気な小学生のためにわざわざ時間を割いて、用具室に案内してもらい、スパイクの磨き方をはじめ本当に色々なことを教えてもらいました。準備のプロとしての心構えやなぜ、どんな道でホペイロになったのか。いつしかそのホペイロさんが僕のなかでロールモデルとなり、憧れになりそして自分が理想とする確固たるホペイロ像ができていきました。

そんなこんなでホペイロを志すようになり、僕のマネージャー人生が始まったわけです。中学校では選手兼マネージャーのような立ち位置で過ごしていました。しかし、そのことが原因で、詳しくは書きませんが人間関係で悩むことがあり1年生の段階で1度サッカーの現場からは離れました。そんなことがあったにもかかわらず、僕の中でホペイロになりたいという夢がぶれることは1度もありませんでした。相変わらず全ての行動指針はホペイロになれるか否かでした。

ホペイロになるためにはどうしたらいいのか。答えはただ1つ。高校でマネージャーをやること。進学した高校では運良く男子マネージャーを募集していたため迷うことなく入部しました。久しぶりの現場でしたが、高校年代では珍しい男子マネージャーという存在をチームメイトはすぐに受け入れてくれました。そしてサッカーの現場で過ごす楽しさというのを再び思い出させてくれました。かけがえのない存在です。

しかしある問題が発生します。素晴らしいチームであったのは間違いないのですが、勝負の世界ですから当然勝ち負けというものから目を背けることはできません。僕が勝たせられればよかったのですが、それは叶わずに終わってしまいます。ホペイロになるための経験と環境が不足していたのです。さらにコロナ禍も相まってステップアップするためのチャンスを掴むということが非常に難しかったのです。

そこで自分なりに導き出した答えが大学サッカーでした。自分の圧倒的な現場での経験不足を補い、プロサッカー界との接点を持てる場所。そして自分のやりたいこと、チャレンジしたいことを認めてくれる場所。早稲田大学ア式蹴球部しかありませんでした。ア式蹴球部に入部したいと決めたその瞬間から受験勉強に取り組みました。受験期の全てのモチベーションはア式蹴球部に入部し、その先に進むことでした。これがア式蹴球部に来た「なぜ」です。

磨かせてもらったスパイクたち


ア式蹴球部に来ておよそ半年が経ちますが、この決断は間違っていなかったと考えています。レベルの高い環境、外池監督もおっしゃるようにこの組織には「現場のすべて」があります。圧倒的な現場経験不足を補って余るほどの環境とチャンスがあると感じていますし、それを自ら主体的に掴みにいかなければならないと日々自戒しています。

しかし、それ以上にこの組織に来てよかったと感じる理由があります。それは僕のやりたいことを全面的に受け入れ応援してくれる同期、先輩、社会人スタッフの存在です。ホペイロになりたくてここに来たと話すと必ず「お前ならやれる」「いいじゃん」と答えてくれます。特に同期の佐久間(佐久間真寛)松尾(松尾倫太郎)北村磨央、2年の北村公平くんはよく気にかけてくれます。また4年の平瀬大くんに言っていただいた「お前の本気は伝わっている」という言葉には正直心が震えました。

自分の存在、目標や夢を受け入れ肯定してくれる人たちの存在こそが僕がア式蹴球部にいる理由だと思うし、ある意味では導かれてきたのだと入部してから考えるようになりました。そしてこの人たちのために、この人たちがストレスなくプレーできるようにという気持ちだけが日々活動する活力になっています。

練習をオーガナイズしてくれる濵田学生コーチ(1年・濵田祐太郎)

また、多くの課題も感じています。ご存じの通りア式蹴球部は毎年たくさんのプロ選手を輩出するような非常にレベルの高い組織です。そんな環境のなか自分がマネージャーとして活動する上で、そしてその先へ進む上で自分が持っていなければならない基準は常に高いものであるべきです。自分のピッチ上での基準が大学サッカーのレベルに留まっているようではいけません。

僕は瀧澤暖(1年)のように試合に出て点を取ることはできないし、宮寺政茂(1年)のようにゴールを守ることはできません。試合に出て直接チームを勝たせることはできませんが、チームを良い方向、勝たせる集団にすることはできると思っています。だからこそ僕がプロでも通用するようなサポートを日常的に提供する必要があるし、ピッチ上での妥協は一切許されません。理想とする基準がそこであるからこそ自分が今現在チームに還元できているものは足りていないし、まだまだ高めていく余地と必要を残しています。僕も選手と同じで1つひとつ課題をクリアしていく義務があります。

そして、難しいかもしれませんがこの成長が大学サッカーのサポートのレベルを高めることにつながればより良いと考えています。選手に対するサポートがもっと良くなればサッカーの質はもっともっと高められるはずですし、大学サッカーの価値を高めることにもつながると思っています。

大学サッカーを先頭に立って引っ張ってきたア式蹴球部員の1人として、僕は大学サッカー界の選手に対するサポートのカルチャーを変えたいと思うし、それがア式蹴球部に所属する部員としての存在価値、使命だと考えます。簡単に成し遂げられることではないですし、もしかしたら不可能なことかもしれません。けれども困難だからこそ挑戦する価値があります。幸いなことに自分の周りには頼れるマネージャーがたくさんいます。この野望を話したことはありませんが、あわよくばその人たちを巻き込んで新たな価値を創造できたらこれ以上うれしいことはありません。ア式蹴球部にいる「なぜ」です。

だらだらと長くなってしまいましたがもう少しだけ書かせてください。

最後の「なぜ」です。同期の谷口(谷口航大)によく言われます。「なんでそんなにマネージャー続けられんの?俺には無理だわー」。確かに。自分がプレーするわけでもないのに。そんなふうに疑問を持つのは至極当然です。間違いなくマネージャーの仕事は楽ではありません。決して楽ではありません。むしろ大変です。でも、「辛い」と思ったことは1度もありません。それはなぜか。3つの理由があります。

サッカーが大好きだから。そしてそこにサッカーが大好きな選手たちがいるから。僕の人生は常にサッカーが中心でした。サッカーが大好きです。こんなに面白いスポーツは他にないです。そして僕がこんなに大好きで愛してやまないサッカーを選手たちにも心から楽しんでほしい、精一杯プレーしてほしい、余計なことを考えずにプレーだけに集中してほしい。これが、僕がマネージャーを続けられている理由です。もちろん僕もチームの一員ですから勝利のために120%コミットしなければなりませんし、そのために全力を尽くしているつもりです。

その一方で、時々こんな冷めた考え方をすることもあります。「勝とうが負けようが選手が楽しんでプレーしてくれればいいや」。勝負の世界では決して正しい考え方ではないですが、とにかく選手たちには僕が大好きなフットボールを楽しんでほしいのです。選手が楽しそうにプレーしている瞬間=僕が1番幸せな瞬間ですし、選手がサッカーで嬉しい思いをしているときは僕も嬉しいし選手が悔しいときは僕も悔しいんです。だから、4年主務の平田陸人くんはとても楽しそうにプレーするので、彼のプレーをみるのが大好きです。

もうひとつマネージャーを続けている理由は「恩返しがしたい」です。僕がホペイロを志し、大学生になった今でも小学校の卒業文集にかいたものと同じ夢を持ち続け、ア式蹴球部にいられるのは前述したように、様々な人たち、特に今もプロの世界で活躍されているあの人たちの存在があるからです。先にも書きましたが、僕の目標とするホペイロさん、そして彼と僕を引き合わせてくださった当時のトップチームのコーチたち、僕に夢を与えてくれた各クラブのマネージャーさんや選手たち。そして、日本のサッカー。僕はこの人たちにどうしても恩返しがしたいし、その人たちに対する恩返しは僕がホペイロになって共に仕事をする、もしくは敵として対戦し再会することでしか果たせないと考えています。それが1番の恩返しになるし、喜んでくれることだと思います。

これが僕を心の底から突き動かす最も大きなモチベーションです。そして、この恩返しを果たすにはア式蹴球部で自分自身をもっと高める必要があるし、もっともっとチームに対する貢献度を上げていかなければなりません。そのためにも日々初心を忘れず、チームの目標のため、ア式蹴球部のために全てをかけて戦っていきます。

話がいったりきたりする大変拙い文章でしたが最後まで読んでいただきありがとうございました。この部員ブログのテーマである自分と向き合う大変よい機会となりました。このような素晴らしい機会をマネージャーの僕にも与えてくださったチームに感謝しています。この部員ブログリレーはまだまだ続きます。お楽しみに。そして、チームの戦いも続いていきます。今後とも熱い応援とご支援をよろしくお願いいたします。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

髙見真史
学年:1年
学部:人間科学部
出身校:栄東高校

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