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コンパス(8686)
2021年1月3日 23:44
つねに笑顔を絶やすな、愛らしくあれ。ファンから要求されることは、真っ向からは絶対に断るな。そんなことばかり言われて育ってきた。ボク自身、そうありたいと思っていた。しかし、どうやらそれも限界らしいと感じている自分があった。ボクは、目の前の長蛇の列を見た。ボク一人の為だけに、こんなにたくさんの人がやってきてくれている。そう考えると、まぁ、まだなんとかやっていけそうな気になった。
2021年1月11日 10:08
「うちの珈琲店も、大分繁栄してきたな……」俺は背伸びをしながら、呟いた。愛しのコーヒーの匂いとか、暖かな温度とかを、胸いっぱいに抱いて笑う。「オーナー、エスプレッソ一杯、だそうです」「わかった。……もう一回、お前がやってみるかい?」「え、いいんですか?」「いいよ。見よう見まねでも、実践は、上達への近道だ」「ありがとうございます!」バイトは、ニッと笑って俺に背を向け、カウンター
2021年1月29日 23:15
全身が、冷たい痛みに覆われていた。腹痛のように『波』のある痛みではなく、常に一定の痛みだった。なおかつ普通の痛みではなく、明らかな恐怖を覚えさせる痛みである。おそらく、この痛みを経験したことのある者はいないだろう。そう思いながら、私は目を開いた。私は、明るい部屋にいた。水色のカーテン、真っ白な照明、埃一つない床。純白の布団は温かく、指先には透明なチューブが繋がっていた。ここは、病棟