わん太郎 -Wantaro-

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【ツボのなかのぼく】第3話『維持』

ぶたちゃんはマサルのロッカーの中で ひとりぼっちになった。 さてこれからどうしようか。 ちょっと考えてみたけど 考えても何も浮かばなかったから 考えることをやめた。 …

【ツボのなかのぼく】第2話『記憶』

「(僕はどうしてここにいるんだろ…)」 子ブタは未だに今の状況が理解できない。 覚えているのは… 僕にはいっぱい兄弟がいるんだ。 いつも人間が食べ物をくれるから 僕た…

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【ツボのなかのぼく】第1話『出会い』

昼下がりのとある焼肉店。 今日も夜の開店に向けて店員さんが お肉の仕込みで大忙しだ。 「おいマサル、そこのタレ取ってくれ!」 フルーティーでいて にんにくや香辛料の…

昔の恋のエピソード⑥【距離】

打ち上げられる花火の色や音が 駐車場の近くの建物を照らし その賑わいを伝えてくれる。 道路には家族連れや恋人が 楽しそうに会場に向かって 歩いていく姿が見える。 まい…

昔の恋のエピソード⑤【気持ち】

まいが僕を避けるようになった と気付いたとき、 僕はどう接したら良いのか わからなくなっていた。 まいは僕のことが嫌いになったのかな。 他に好きな人ができたのかな。 …

昔の恋のエピソード④【夢】

日曜日の午前、 唐揚げでも作って食べようと 近所のスーパーで鶏もも肉を 買って寮に戻った。 寮には調理場は無くて、会社の食堂 にある小さな給湯室を調理場として 利用し…

昔の恋のエピソード③【キス】

僕とまいが働いていた職場は 裁断場とミシン場で建屋が異なり、 裁断場の最上階に男子寮があり ミシン場の最上階が女子寮と なっている。 僕が済む部屋は3階の窓際、 カー…

昔の恋のエピソード②【初めて】

卒業を控えた僕と 高校一年生の女の子の恋愛が始まった。 僕の方が年上だけど、 これといって恋愛経験の無かった僕は 恋人ができたことに気持ちが 舞い上がっていた。 僕に…

昔の恋のエピソード①【告白】

「今日は寒いね。」 普段話しかけてくることが無い人が 僕に声をかけてきた。 「うん、寒いね。」 と言葉を返した。 何か用でもあるのかな?と待っていると 「今度カラオケに…

【ツボのなかのぼく】第3話『維持』

【ツボのなかのぼく】第3話『維持』

ぶたちゃんはマサルのロッカーの中で
ひとりぼっちになった。
さてこれからどうしようか。
ちょっと考えてみたけど
考えても何も浮かばなかったから
考えることをやめた。

マサルは厨房で食器を洗っていた。
するとテツヤが声を荒げた。
「誰だよ、壺出しっぱなしじゃん!」
そういえばマサルはぶたちゃんのことが
あって慌てて持ち場を離れたから
それっきりお肉が入った壺を
放置していたのだ。
「すみません、今

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【ツボのなかのぼく】第2話『記憶』

【ツボのなかのぼく】第2話『記憶』

「(僕はどうしてここにいるんだろ…)」
子ブタは未だに今の状況が理解できない。
覚えているのは…

僕にはいっぱい兄弟がいるんだ。
いつも人間が食べ物をくれるから
僕たちはそれを取り合いっこしてた。
すごくおいしくてさ、
ついつい食べすぎちゃうんだよね。
あるとき 、その人間が僕たちを
見たことの無い場所に連れてきて
くれたんだ。
いつもいる場所では
ほん少ししか見えなかった
青い色と白く光る暖か

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【ツボのなかのぼく】第1話『出会い』

【ツボのなかのぼく】第1話『出会い』

昼下がりのとある焼肉店。
今日も夜の開店に向けて店員さんが
お肉の仕込みで大忙しだ。
「おいマサル、そこのタレ取ってくれ!」
フルーティーでいて
にんにくや香辛料のパンチも効いた
醤油ベースのお店自慢のタレだ。
働き始めてまだ数ヶ月のマサルは
洗い場で調理器具を洗っていた。
「は…はーい、今行きます!」
泡だらけの手を急いで水で洗い流し
冷蔵庫に入っているタレを
店長の元に届けた。
「おお悪いな、

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昔の恋のエピソード⑥【距離】

昔の恋のエピソード⑥【距離】

打ち上げられる花火の色や音が
駐車場の近くの建物を照らし
その賑わいを伝えてくれる。
道路には家族連れや恋人が
楽しそうに会場に向かって
歩いていく姿が見える。
まいはどんな格好で
来てくれるかな?
来て欲しいな。
そんな気持ちもあって
夏の暑さも最初はこれといって
感じなかった。
しかし時間が過ぎるほどその暑さ
も辛く感じ始めていた。
たまらず車に乗りこみ
キーを回して車のエンジンを
かけた。

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昔の恋のエピソード⑤【気持ち】

昔の恋のエピソード⑤【気持ち】

まいが僕を避けるようになった
と気付いたとき、
僕はどう接したら良いのか
わからなくなっていた。
まいは僕のことが嫌いになったのかな。
他に好きな人ができたのかな。
僕が何か悪いことしてしまったのかな。
いろんな憶測を立てながらも
それらを解決する方法が
思いつかない僕はただ黙っている
ことしかできなかった。
まいに近づくことができたのは
仕事中にまいのミシンの前の工程を
僕が担当したときだった。

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昔の恋のエピソード④【夢】

昔の恋のエピソード④【夢】

日曜日の午前、
唐揚げでも作って食べようと
近所のスーパーで鶏もも肉を
買って寮に戻った。
寮には調理場は無くて、会社の食堂
にある小さな給湯室を調理場として
利用していた。
鶏肉に下味をつけていたら
食堂の方からから足音がした。
まいだった。
お互い目が合ったとき
自然と笑みがこぼれた。
僕はもう完全にまいに恋をしていた。
僕はまいに唐揚げのレシピを
教えながら作り、揚げたての唐揚げを
味見をし

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昔の恋のエピソード③【キス】

昔の恋のエピソード③【キス】

僕とまいが働いていた職場は
裁断場とミシン場で建屋が異なり、
裁断場の最上階に男子寮があり
ミシン場の最上階が女子寮と
なっている。
僕が済む部屋は3階の窓際、
カーテンを開けるとミシン場がある
建屋が見えて4階が女子寮だ。

日曜日の朝、カーテンを開けると
まいが洗濯物を干していた。
今日も可愛いな…そんなことを
思いながら見とれていたら
まいがこちらに気付いた。
僕が手を振るとまいは周りを

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昔の恋のエピソード②【初めて】

昔の恋のエピソード②【初めて】

卒業を控えた僕と
高校一年生の女の子の恋愛が始まった。
僕の方が年上だけど、
これといって恋愛経験の無かった僕は
恋人ができたことに気持ちが
舞い上がっていた。
僕にあんな可愛い彼女がいるんだ。
部屋の鏡に映る僕は浮かれていた。
名前は『まい』。
彼女は小柄でショートカットの
ボーイッシュな容姿。
小さな瞳がとてもキラキラした
女の子。
さあ、彼女ができたらどうしたら
いいんだっけ?デートだな。

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昔の恋のエピソード①【告白】

昔の恋のエピソード①【告白】

「今日は寒いね。」
普段話しかけてくることが無い人が
僕に声をかけてきた。
「うん、寒いね。」
と言葉を返した。
何か用でもあるのかな?と待っていると
「今度カラオケに行きませんか?」
と急なお誘いを受けた。
「え?僕と?急にどうしたの?」
女の子からカラオケに誘われるなんて
滅多に無かった僕は流石に慌てた。
「友達に人を集めて欲しいって…」
ああ、僕と行きたいんじゃ
無かったんだと少しがっかりし

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