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昔の恋のエピソード②【初めて】

卒業を控えた僕と
高校一年生の女の子の恋愛が始まった。
僕の方が年上だけど、
これといって恋愛経験の無かった僕は
恋人ができたことに気持ちが
舞い上がっていた。
僕にあんな可愛い彼女がいるんだ。
部屋の鏡に映る僕は浮かれていた。
名前は『まい』。
彼女は小柄でショートカットの
ボーイッシュな容姿。
小さな瞳がとてもキラキラした
女の子。
さあ、彼女ができたらどうしたら
いいんだっけ?デートだな。
どこへ行こう。
映画に行きたい。
食事がしたい。
手を繋ぎたい。
キスがしたい。
彼女ができるといろんな要求が
僕の頭の中から出てくる。
でもまいは高校一年生。
僕が初めての彼氏だと言っていた。
できるだけ良い思い出をたくさん
作ってあげたいと思っていた。
そしてまいを初めてデートに誘った。

僕たちは定時制高校に通っていた。
縫製会社に就職して寮に入り
昼間は働いて夕方から高校に
通う生活を過ごしていた。
僕とまいは同じ職場で
毎日ミシンを使ってウエアの
縫い合わせをしていた。
小柄なまいは不慣れながらも
一生懸命腕を伸ばして縫い合わせ
をしていた。
僕は主にロックミシンを
担当していたがいつも視界に
まいが見えていた。
お昼休み、僕はまいのミシンの横に
置き手紙をした。
休憩を終えて戻ってきたまいは
手紙に気づき読み始めた。
そしてすぐ僕の方を向き
笑顔でうなづいてくれた。
その笑顔に僕は笑顔で返した。

日曜日の午後、
僕たちは映画館へ向かった。
路面電車に乗れば数十分で到着
する場所に徒歩を選んだ。
少しでも長くまいとお話したいし
電車ではあまりじっくり話せない
と思ったから。
でもいざ歩き始めると何を
話していいかわからなかった。
ノープランだった。
一緒にいたらいろんな会話が
出てきて長い距離もあっという間に
感じるだろうと浅はかな考えを
していた僕はスタートから焦った。
何かを話した気はするけど
記憶にない…焦りと緊張でいっぱい
だったことだけは覚えている。
映画館に到着して何を見ようかと
まいと相談して、
内容はわからないけど新しい
映画を見ようと言って入館した。
映画のタイトルは『セブン』。
アメリカのサイコサスペンス
映画だった。
もちろん何一つまいと盛り上がる
ことは無かった。
約2時間ひたすら映画を見ただけの
時間が過ぎた。
このままではまずい…。
映画館を出た僕たちは
通りにある雑貨屋に向かった。
そこで僕はまいに
お揃いの指輪しない?と持ちかけた。
指輪なんてしたこと無いけど
まずは映画の暗い雰囲気を
払拭したい気持ちでいっぱいだった。
まいは喜んでうなづき指輪を
眺めている。
もちろん、お互い高校生なので
高価な指輪は買えなかった。
働いていたけどそのお金は
学費と生活費、そして大きな
目的のための貯金をしていたから
普段から使える金額は
限られていた。
そして選んだ指輪をお互いはめて
かざし合った。
はにかむまいを見て照れる僕。
その帰り道、僕たちは自然と
手を繋ぎまた長い距離を徒歩で
帰宅した。

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