病葉のダンス

コラムを書いています。 ‘’何気ない日常を特別に変えてしまうあなたへ‘’

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星の光は遅れて届く。

どうやら太陽が沈むことはないらしい。僕らが住む地球が自転しているだけで、太陽が決して動いているわけではない。だから「人間は太陽が勝手に沈み、次第に明けると思っている」と太陽が知れば、きっと怒ることでしょう。動いているのはあなたの星で私が沈むことはないのだから。 人間は夜明けが好きな生きものだ。暗闇を抜け出し新たな光を浴びるその瞬間が好きなのだ。無情にも夜明けは誰にでも平等にやって来る。 診断を待つその日にも私には朝が来て、夜が来た。 先生、僕のパニック障害は治るんでしょう

    • 大切な人ほど忘れてほしい

      紫陽花がいなくなったかと思えば、青々と茂る緑が歩道脇を差す。今年も僕にとって少し憂鬱な季節がやってきた。ベランダから覗く青はのっぺりとした白を抱えながら、放射線状に光線を放つ。 一人称を”僕”で始めてしまったものだから、あまりの白々しさにいっそ独立不羈に書き記してやろうと思います。 四半世紀生きてみて実感したことは僕はあまりにも人と「違いすぎる」ということ。幼いころからそれを自覚してきたので、僕はこれまで幾つもの嘘と人格を操り、自分をも騙して、生への絶望と死への希望を繰り

      • 水の更迭

        涙が出るという現象を考えたとき、一番適当な表現は「自分の器からはみ出てしまった」である。 恋人からのプロポーズに感動し、家族との死別に涙を流す。感情があふれるたびに、人間の半分が水分でできていることを思い出す。生きていると、涙に暮れる日もある。涙は、感情の掃き出し口であり、内面の浄化作用だ。まあ、大学の心理学の授業で学んだことを思い出しただけなんだけど。 家のベランダに黒い椅子がある。日の出ている日に座ると熱くて座れたもんじゃない。椅子はただ黒く光や熱を吸収しやすいだけな

        • 幽玄とコンビニ

          青い海の奥にコンビニがあって、青い珊瑚が売られている。そんな夢を見た朝、出勤のために車を走らせると目の前の海がただ青く広がっている。山奥の地元を離れて海街に住むことになり、毎日のように海を眺めている。かつては特別だった海も、潮風の強さや漂う臭いに嫌気がさす瞬間がある。 フグの毒、テトロドトキシンという名前を思い出す。江戸時代には、フグの毒を使って舌がピリピリと麻痺する遊びが流行ったと聞く。イルカたちはフグでキャッチボールのように遊び、時には誤って死ぬこともあるという。人間も

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        星の光は遅れて届く。

          新雪の丘

          「新雪の丘」というのは、雪が積もった何も跡のない丘の上を最初にソリが通って初めて跡がつく。その跡と同じようなところを次のソリも通るので、どんどん溝が深くなり、そこばかり通るようになる。 最初にソリが通るところはどこでも良かったのだが、一回決まったせいでそこばかり強くなるという心理学で用いられる例えのことだ。 だが、新雪の丘もいずれ春が来て、雪解けると願う。そのころには晴れて自由の身になるのだ。だから、それまでは同じ失敗をしていても、春が来るまでじっくり耐えてみようかな、と思

          デジタル人間

          昨今、自分がどのような人物なのかを10数種類のいずれかに診断するMBTIが若者の間で流行っている。韓国では就活でも使われているらしいが、試しに診断してみるとまるでとんちんかんな結果が出た。デジタル社会の中で、人間の趣味嗜好が多様であることがようやく理解された一方、こうして自分自身が何者なのかを知りたがっている人は多い。 最近のAIの発展はすさまじい。ディープラーニングを駆使して、「これは猫である」「これは猫ではない」といった判別が可能だ。飛躍すれば、AIは人間の善悪を客観的

          デジタル人間

          カルパチアを求めて

          凍てつく北大西洋の海に、一隻の船が沈む。タイタニック号。今から100年以上も前に、豪華客船は氷山に衝突し、海の底に沈んだ。 25歳にして、生まれて初めて映画『タイタニック』を観た。胸を打たれたシーンは、映画の終盤、死を迎える人々の姿だった。心残すことなく好物のブランデーを飲む紳士、最後まで演奏を続ける音楽隊、プライドを持って役務を全うする船長、そして諦めず、自らの命をも犠牲にして恋人を見守るジャック。彼らの姿は、私にとって美しい生き方の象徴だった。 映画を観ながら、ふとタ

          カルパチアを求めて

          妹(彼氏持ちJK)の恋愛相談を兄(25歳独身男性)が勝手にしてみた(妄想)#狂気

          いつからだろう、「お兄ちゃん」が「おい」「お前」に変わったのは。 タイトルにもある通り、このコラムでは妹が持つ恋愛のお悩みを兄が勝手にでっち上げて解決する、そういったお話になっています。 読者の皆様にはぜひ、この狂気を感じ、また何か学びを得て、日々の生活に役立ててほしい、そんな風に思っています。 早速ですが妹が考えているであろう大きな恋愛の悩みを2つに分けてみました。 ① この人とずっと付き合っていていいのだろうかシンデレラ問題 曲がりなりにも私にも高校時代にはれっきと

          妹(彼氏持ちJK)の恋愛相談を兄(25歳独身男性)が勝手にしてみた(妄想)#狂気

          右手に宇宙を、左手に花束を。

          子供のころ、保育園の庭に穴を掘り続けたことを思い出す。「この穴を掘り続けたらブラジルに行けるんだ」と信じていた。実際には大西洋のどこかで、もっと正確にはマントルにぶち当たるだろうが、当時の私はそんなことは知る由もなかった。今ではおかしい話だが、その無邪気な好奇心は、曇りのない純粋な子供心である。 人は死ぬとき、何を想うだろうか。アルバート・アインシュタインは死の間際に愛娘に手紙を送った。その手紙は「愛の爆弾」と呼ばれ、愛こそがこの世を動かす最も強力な力だと説いている。時に重

          右手に宇宙を、左手に花束を。

          Amore Mangiare Cantare!

          結婚報告をした芸能人にむけられた、ラジオリスナーからの1通のメールが今日も頭をめぐる。 僕らは人生のどれほどを”記憶”できているだろうか。耐え難い苦しみや哀しい出来事、胸を痛めることは本当にキリがないけれど、そのどれもが無駄がないように、それらを「尊い」と謳おう。 「アモーレ、マンジャーレ、カンターレ」というフレーズは、「愛すること、食べること、歌うこと」を意味し、イタリア文化の核心を象徴している。このフレーズは、豊かな人間関係、美味しい食事、そして音楽を通じての表現の重

          Amore Mangiare Cantare!

          ギターポップは死んだ

          その日のYouTubeのコメント欄には、流行りの若手3ピースバンドの演奏に対して「ギターポップは死んだ」との投稿があった。それを見つけた瞬間、私はまさしく今、ギターポップが殺されたのだと感じた。 27歳。この年齢は数々のロックスターが命を落とした年齢でもある。ジミ・ヘンドリックス、カート・コバーン、エイミー・ワインハウスなど、多くのアーティストが27歳でその命を終えている。27歳という年齢は、歳を重ねる中でも特に意味深い1年だ。 私の親が27歳の頃には、すでに姉が生んでい

          ギターポップは死んだ

          糸を渡す

          先日、祖父の訃報の知らせがあり、急いで支度を済ませ釧路を発った。祖父は言葉通り『優しくて強い人』だった。人への礼儀や、山での暮らし方、地域の文化や風土に至るまで、田舎暮らしにおける知恵をたくさん教えてくれた。地域の地区会長まで務めた祖父はことあるごとに、地域の人に支えられた自らの人生を、大好きな日本酒を片手に私たち家族へ熱く語ってくれた。葬儀は親戚・近隣住民をはじめ、多くの人で会場が埋め尽くされた。久しぶりに再会した親戚と話す中で、祖父は生前、遠く離れた地で暮らす孫(私)が心

          体長4m以上のものをクジラ、それ以下をイルカと名付けるのはあまりにも人間の勝手がすぎる。

          タイトル通り、海洋生物であるクジラとイルカの分類について僕はずっと不満があります。 現状認識 現在、イルカとクジラは一般的に体長によって区別されます。体長が4m以上のものをクジラと呼び、それ以下のものをイルカ、と呼びます。しかし、科学的な分類においては、両者は同じ鯨類に分類されます。 他の特徴で言うと、イルカは魚雷型の体形を持ち、歯を使って獲物を捕食します。一方、クジラは体がより丸みを帯び、鯨ひげ(バレン)を用いてプランクトンや小魚を濾過摂食します。 それって、雑じゃ

          体長4m以上のものをクジラ、それ以下をイルカと名付けるのはあまりにも人間の勝手がすぎる。

          『聲と忘却』

          電話で聞こえる声は周波数や発生音の関係で『実は本人の声ではない』という話を思い出し、この記事を書いています。 思えば、声は人間の心に深い印象を残すなあと感じます。古い友人の声や愛する人の声を忘れてしまうという経験は、私たちにとって喪失の象徴です。『声』は、私たちが他者とつながり、共感し、愛し合うための鍵となります。しかし、時が経つにつれて、その声は徐々に忘れ去られてしまうことがあります。 忘却のプロセスにおいて、その1番最初が声だと信じているのはなぜなのか、ここ数年疑問に

          『聲と忘却』

          九相図に見る生と死の寓意

          人生は不可逆の時間の連続で、全てのものが徐々に朽ちていく。樹木も、街並みも、そして人々も例外ではない。この儚さこそが、生の本質であり、美しさでもある。25歳にして、私は最近、この朽ちる過程の中にある美しさについて考えることが増えた。 ある日、散歩中に偶然目にした、サビだらけのビルディング。一見すると荒廃しているように見えるかもしれないが、私はそれに魅了された。なぜなら、そのビルディングも、私と同じように朽ちていく最中だからだ。 九相図において、「錆」は一つの要素である。錆

          九相図に見る生と死の寓意