カルパチアを求めて
凍てつく北大西洋の海に、一隻の船が沈む。タイタニック号。今から100年以上も前に、豪華客船は氷山に衝突し、海の底に沈んだ。
25歳にして、生まれて初めて映画『タイタニック』を観た。胸を打たれたシーンは、映画の終盤、死を迎える人々の姿だった。心残すことなく好物のブランデーを飲む紳士、最後まで演奏を続ける音楽隊、プライドを持って役務を全うする船長、そして諦めず、自らの命をも犠牲にして恋人を見守るジャック。彼らの姿は、私にとって美しい生き方の象徴だった。
映画を観ながら、ふとタイタニック号が今もなお沈んだまま引き揚げられない理由に思いを馳せた。タイタニック号は、1912年の沈没以来、長い間北大西洋の海底に横たわっている。その理由は、長い年月の中で腐敗が進み、引き揚げることが難しくなっているからだ。あの巨大な船は、今でも海の底で静かに眠り続けている。
タイタニック号には、「カルパチア」という名の救助船が関わっている。カルパチア号は、沈没直後に救助に駆けつけ、多くの乗客を救い出した。その姿勢は、まさに勇気と献身の象徴だった。タイタニック号は今でも、その救助船カルパチアを求めているように思える。
日々の生活の中で、私たちもまた「カルパチア」を求めているのかもしれない。混乱と不確実性が渦巻く現代において、心の中にある小さな不安や葛藤に寄り添う存在が必要だ。タイタニック号が北大西洋の深海で静かに眠りながらも、救助を求めているように、私たちもまた、心の奥底で何かを求めているのかもしれない。私は、そんな人々の心を舫うカルパチア号でありたいと思う。
タイタニック号の物語は、単なる悲劇ではない。その中には、人間の強さや勇気、そして深い愛が描かれている。それは、私たちがどのように日常を過ごすべきかを静かに教えてくれる。映画を通じて感じたこと、それは自分自身もまた、心の中にある小さな喜びや幸せを大切にしながら生きていくことの重要性だ。
タイタニックを観たことで、私は新たな気持ちになった。自分の心に耳を傾け、小さな喜びや幸せを見つけながら、静かに穏やかに生きていくこと。それが、私たちが目指すべき道なのだと感じた。
けれどジャックのような奔放さも時には必要だ。
タイタニック号は、北大西洋の深海で静かに眠りながらも、カルパチアを求めている。タイタニック号に、1500人の乗客に告ぐ。カルパチアはやってくる。
必ず、やってくる。
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