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大切な人ほど忘れてほしい

紫陽花がいなくなったかと思えば、青々と茂る緑が歩道脇を差す。今年も僕にとって少し憂鬱な季節がやってきた。ベランダから覗く青はのっぺりとした白を抱えながら、放射線状に光線を放つ。

一人称を”僕”で始めてしまったものだから、あまりの白々しさにいっそ独立不羈に書き記してやろうと思います。

四半世紀生きてみて実感したことは僕はあまりにも人と「違いすぎる」ということ。幼いころからそれを自覚してきたので、僕はこれまで幾つもの嘘と人格を操り、自分をも騙して、生への絶望と死への希望を繰り返しながら生きてきました。いや、正確に言うならば、生き延びてきました、と言うべきか。

例外なく、貴方にも大変の失礼を繰り返し、時に貴方の機嫌を損ねたとみれば、おぼつかない気配りを試み、これまで何度貴方にため息をつかせてしまったことでしょう。

ひとつだけお願いがあります。どうか僕のことなど忘れていてください。そして僕がいない世界で、貴方には自らの足で進みたい道を進んでほしい。
僕はただ遠く引かれていくその轍を見つめ、手を合わせて、風に靡く草むらを背に、手のひらに残った雪の冷たさを確かめる。



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