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書評|横道世之介

書評|横道世之介

 『横道世之介』を読み、僕の頭には真っ白なパレットが浮かんだ。表面は滑らかで、光を写す。物語の主人公である横道世之介は透明だ。長崎から上京した大学一年生。平均的で、何者でもない。何色にも染まっていない彼が、何かに染まろうとする。その過程をこの作品はみずみずしく描き出す。

 何者でもなく、眼の前に積まれた膨大な時間。移ろう季節の中で、世之介は時を過ごす。新宿、歌舞伎町、渋谷、原宿、赤坂。西武新宿線

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横道世之介と言う男

横道世之介と言う男

「横道世之介」、僕の好きな小説のタイトルである。吉田修一さんの青春小説である。僕は青春小説が好きだ。ちなみに今でも自分は青春を生きていると思っている。バカだ。

横道世之介と言うのは、作品の登場人物であり、主人公であり、大学生。世之介と彼を取り巻く人々の人間模様を、過去の出来事(大学生時代)と、登場人物の現在とを織り交ぜながら描かれている。

世之介はひょうひょうとした青年で、のんきで優しく、お人

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