湧澄嶺衣

ショートショートのSF小説を発信しています。 数分で読めるものを、更新しています。 長…

湧澄嶺衣

ショートショートのSF小説を発信しています。 数分で読めるものを、更新しています。 長めのもので5000字強ぐらいのものもありますが、数は少ないです。 拙い作品ばかりですが、お読みいただけたら幸いです!

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記事一覧

電柱の影、隠れた存在

 去年の夏、私は旅先で不思議な出来事に遭遇した。舞台は市街地から少し離れた小さな田舎町。写真を撮ることが趣味の私は、カメラを片手にその町の風景を撮影していた。静…

湧澄嶺衣
7時間前
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封印された遺跡の秘密 二

見逃された真実  手紙の一文『あなたは見逃していた』が、私の心にずっと引っかかっていた。学会での発表以来、私の日常は一変した。誰かに見張られているような感覚が付…

湧澄嶺衣
1日前
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異界の森、境界の守護者

 去年の夏、私は不思議な体験をした。その時の記憶は今も鮮明に残っている。  日常の喧騒から逃れるため、私は旅に出ることにした。行き先は、人里離れた山奥の小さな村…

湧澄嶺衣
2日前
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封印された遺跡の秘密 一

痕跡を追う、はじまりの旅  去年の夏、考古学研究員をしている私の好奇心が、一つの謎を追い求めるきっかけとなった。その日は特に暑く、都心の喧騒から逃れようと、少し…

湧澄嶺衣
3日前
4

踏切の向こう側

 あの日、私は普段とは違う旅先で一人、県境の街を歩いていた。都心での平凡な日常から少し離れて、自分の好奇心を満たすための短い旅行だった。私は古い鉄道の無人駅近く…

湧澄嶺衣
4日前
5

枝分かれする未来

 私は平凡な日常を愛していた。都内の静かなアパートでの生活は、読書や謎解き、写真撮影に没頭するには最適な場所だった。特に好きだったのはミステリー小説で、ページを…

湧澄嶺衣
5日前
7

白骨公園

 去年の春、私は一人旅に出た。行き先は、東京から少し離れた小さな町。この町には、昔から奇妙な噂が絶えない公園があった。その公園の名前は『静寂の園』と言った。私の…

湧澄嶺衣
6日前
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窓に映る影の正体

 ふと走行中の電車の窓から外の景色に目をやると、いつもの街並みが不気味に歪んで見えた。今日は一段と疲れているのかしら。私はぼんやりとしたまま、通学鞄を膝に乗せて…

湧澄嶺衣
7日前
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見えない真実

第一章 忘れられた図書館  去年の夏、私は東京の喧騒を離れて、小さな田舎町に足を運んだ。その町には不思議な噂があった。町外れにある古びた図書館には、『空と空をつ…

湧澄嶺衣
8日前
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夢幻の急行

 去年の夏、私は東京を離れ、とある温泉地への一人旅を決めた。日常の喧騒から逃れ、静かな時間を過ごすためだった。急行列車に揺られながら、車窓から見える風景は次第に…

湧澄嶺衣
9日前
11

森の郵便箱

 私は普通の少女だ。ミステリー小説を読むのが好きで、休みの日にはカメラを片手に地元の都心部を歩き回る。パン屋の前を通ると、焼きたての香ばしい匂いに引き寄せられる…

湧澄嶺衣
10日前
11

風の痕跡

 今年の旅先で、私は思いがけない体験をすることとなった。早朝の澄んだ空気の中、誰もいない静かな浜辺を歩いていた。冷たく清々しい風が私の髪を撫で、遠くから聞こえる…

湧澄嶺衣
11日前
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クレーンの向こう側

 今年の夏、私は旅先で奇妙な出来事に遭遇した。それは、一見ただの事故のように思えたが、その出来事は私の好奇心を刺激し、平穏な日常を揺さぶるものだった。  旅先の…

湧澄嶺衣
12日前
8

夜の霧と少年

 去年の夏、私は一人で旅に出た。普段は都心の喧騒の中で過ごしているが、時折、静かな場所でのんびりと過ごすことが好きだった。その日は特に暑く、涼しい山間の村を目指…

湧澄嶺衣
13日前
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幻影の帆

 旅の始まりは、去年の夏休みの終わりだった。私は都内在住で平凡な日常を送っていたが、読書と謎解きに夢中な私は、ある日、古い本屋で見つけた一冊の本に心を奪われた。…

湧澄嶺衣
2週間前
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蜘蛛男と最後の糸

 去年の秋、あの時の記憶がまだ鮮明に残っている。私は旅先で訪れた公園の芝生に座っていた。私が物心つく頃に母が亡くなり、父と二人暮らしだった私は、普段の都心の喧騒…

湧澄嶺衣
2週間前
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電柱の影、隠れた存在

電柱の影、隠れた存在

 去年の夏、私は旅先で不思議な出来事に遭遇した。舞台は市街地から少し離れた小さな田舎町。写真を撮ることが趣味の私は、カメラを片手にその町の風景を撮影していた。静かで平和な場所だったが、その日は何か特別なことが起きる予感がしていた。

 バスを降りて町を歩き始めたとき、私の目に飛び込んできたのは、古びた電信柱の影に隠れるように立っていた小さな存在だった。一瞬、それが何なのか理解できなかった。電信柱の

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封印された遺跡の秘密 二

封印された遺跡の秘密 二

見逃された真実

 手紙の一文『あなたは見逃していた』が、私の心にずっと引っかかっていた。学会での発表以来、私の日常は一変した。誰かに見張られているような感覚が付きまとい、常に緊張を感じていた。しかし、それでも私は真実を追求することをやめなかった。

 手紙が届いてから数日後、再び遺跡を訪れる決意を固めた。今回もカメラやノートを持ち、さらに懐中電灯や食料も準備した。遺跡にはまだ何かが隠されているに

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異界の森、境界の守護者

異界の森、境界の守護者

 去年の夏、私は不思議な体験をした。その時の記憶は今も鮮明に残っている。

 日常の喧騒から逃れるため、私は旅に出ることにした。行き先は、人里離れた山奥の小さな村。都心部の喧騒とは対照的な静寂が広がるその場所で、私は自分の好きな読書をしたり写真の撮影を楽しむつもりだった。

 その村には、古くからの伝承がある森があった。地元の人々はその森を『禁じられた森』と呼び、決して近づかないようにしていた。し

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封印された遺跡の秘密 一

封印された遺跡の秘密 一

痕跡を追う、はじまりの旅

 去年の夏、考古学研究員をしている私の好奇心が、一つの謎を追い求めるきっかけとなった。その日は特に暑く、都心の喧騒から逃れようと、少し遠出することに決めた。旅先の観光名所らしきものもない田舎町には、古びた遺跡があると聞いていた。好奇心に駆られ、カメラを片手にその地へと向かった。

 その遺跡は、田んぼに囲まれた小高い丘の上にあった。遠くから見ると、ただの石の塊のようだっ

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踏切の向こう側

踏切の向こう側

 あの日、私は普段とは違う旅先で一人、県境の街を歩いていた。都心での平凡な日常から少し離れて、自分の好奇心を満たすための短い旅行だった。私は古い鉄道の無人駅近くの踏切の前に立ち止まり、カメラを構えていた。遮断機が下りて、遠くから汽笛が聞こえてくる。汽笛の音が静かに街を包む中、私はふとその先に何があるのか知りたくなった。

 遮断機が上がるのを待ち、列車が去った後の線路を越えると、異世界に迷い込んだ

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枝分かれする未来

枝分かれする未来

 私は平凡な日常を愛していた。都内の静かなアパートでの生活は、読書や謎解き、写真撮影に没頭するには最適な場所だった。特に好きだったのはミステリー小説で、ページをめくるたびに謎が解けていく快感がたまらなかった。

 そんなある日、私は行きつけの古本屋で一冊の古い本を手に入れた。表紙は擦り切れていたが、その中には未だ見ぬ世界が詰まっているような気がした。その本には、『機械人間・枝・変化』といった不思議

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白骨公園

白骨公園

 去年の春、私は一人旅に出た。行き先は、東京から少し離れた小さな町。この町には、昔から奇妙な噂が絶えない公園があった。その公園の名前は『静寂の園』と言った。私の好奇心は、その不思議で不気味な名前に引き寄せられ、一人調査を決意した。

 町に到着し、早速静寂の園を訪れた。広い芝生が広がり、花々が咲き乱れていた。平日の昼下がり、人影はほとんど見当たらない。空は青く澄み渡り、鳥のさえずりが響いている。だ

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窓に映る影の正体

窓に映る影の正体

 ふと走行中の電車の窓から外の景色に目をやると、いつもの街並みが不気味に歪んで見えた。今日は一段と疲れているのかしら。私はぼんやりとしたまま、通学鞄を膝に乗せて窓の外を眺め続けた。

 次の駅に到着し、ドアが開くと同時に乗り込んできたのは、どこか異様な雰囲気を持つ男性だった。スーツ姿だが、明らかにこの世のものではないような気配を漂わせている。彼が私の前の座席に腰を下ろした瞬間、車内の温度が急激に下

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見えない真実

見えない真実

第一章 忘れられた図書館
 去年の夏、私は東京の喧騒を離れて、小さな田舎町に足を運んだ。その町には不思議な噂があった。町外れにある古びた図書館には、『空と空をつなぐ道』と呼ばれる古代の道具が隠されているという。少し変わっているかもしれないが、世界に散らばる古代文字の解読が趣味の私は、遺跡や遺物が大好物だ。さっそく私はその話に興味を引かれ、図書館を訪れることにした。

 図書館は静かで、ほこりっぽい

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夢幻の急行

夢幻の急行

 去年の夏、私は東京を離れ、とある温泉地への一人旅を決めた。日常の喧騒から逃れ、静かな時間を過ごすためだった。急行列車に揺られながら、車窓から見える風景は次第に都市の喧騒から緑豊かな山間へと変わっていった。

 その温泉地には、秘湯と呼ばれる特別な温泉があり、露天風呂からは壮大な山々が一望できると聞いていた。到着した日は快晴で、澄んだ青空と緑のコントラストが美しかった。宿に荷物を置くと、早速その秘

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森の郵便箱

森の郵便箱

 私は普通の少女だ。ミステリー小説を読むのが好きで、休みの日にはカメラを片手に地元の都心部を歩き回る。パン屋の前を通ると、焼きたての香ばしい匂いに引き寄せられる。日常は平穏そのもので、特に変わったことはない。

 しかし、去年の夏休み、私は思いがけない冒険に巻き込まれた。

 ある日、森の中で一枚の手紙を見つけた。手作りの木製のポストに入っていたその手紙には、古めかしいインクで書かれた招待状が入っ

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風の痕跡

風の痕跡

 今年の旅先で、私は思いがけない体験をすることとなった。早朝の澄んだ空気の中、誰もいない静かな浜辺を歩いていた。冷たく清々しい風が私の髪を撫で、遠くから聞こえる波の音が心地よいリズムを奏でる。何気なく見下ろした砂浜には、妙な痕跡が続いていた。

 その痕跡は、人間の足跡とは異なり、円形の凹みが一定の間隔で続いている。まるで誰かが大きな円柱を転がしたかのような痕跡だった。不思議に思い、その先を追いか

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クレーンの向こう側

クレーンの向こう側

 今年の夏、私は旅先で奇妙な出来事に遭遇した。それは、一見ただの事故のように思えたが、その出来事は私の好奇心を刺激し、平穏な日常を揺さぶるものだった。

 旅先の近くのビルの建設現場で、大きなクレーンが倒れる事故が発生した。観光客で賑わう街の中で、一瞬にして凄惨な悲鳴とその後の静寂が訪れた。私はその場に居合わせ、思わずシャッターを切った。異様な光景がレンズに映る。何かが、ただの事故ではないと私の直

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夜の霧と少年

夜の霧と少年

 去年の夏、私は一人で旅に出た。普段は都心の喧騒の中で過ごしているが、時折、静かな場所でのんびりと過ごすことが好きだった。その日は特に暑く、涼しい山間の村を目指していた。

 村に着くと、そこはまるで時が止まったかのような静寂に包まれていた。古びた木造の家々と、澄んだ小川の音が心地よい。私はカメラを手に、村を散策し始めた。

 ふと、古びた神社の前で足を止めた。鳥居をくぐり、苔むした石段を登ると、

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幻影の帆

幻影の帆

 旅の始まりは、去年の夏休みの終わりだった。私は都内在住で平凡な日常を送っていたが、読書と謎解きに夢中な私は、ある日、古い本屋で見つけた一冊の本に心を奪われた。その本は、古い時代を舞台にしたもので、表紙には『幻影の帆』という文字が刻まれていた。

 本を開くと、そこには水兵たちの冒険物語が描かれていた。彼らは大砲を操り、刀を持ち、髷を結っていた。だが、物語の進行とともに、現実と夢の境界が曖昧になっ

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蜘蛛男と最後の糸

蜘蛛男と最後の糸

 去年の秋、あの時の記憶がまだ鮮明に残っている。私は旅先で訪れた公園の芝生に座っていた。私が物心つく頃に母が亡くなり、父と二人暮らしだった私は、普段の都心の喧騒から逃れ、しばしの静寂を楽しむために一人旅でここに来たのだ。秋の風が心地よく、読書に没頭するにはうってつけの場所だった。

 その日も、いつものようにミステリー小説を手にしていた。主人公が追う謎の人物に、自分を重ね合わせるのが好きだった。だ

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