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クレーンの向こう側

 今年の夏、私は旅先で奇妙な出来事に遭遇した。それは、一見ただの事故のように思えたが、その出来事は私の好奇心を刺激し、平穏な日常を揺さぶるものだった。

 旅先の近くのビルの建設現場で、大きなクレーンが倒れる事故が発生した。観光客で賑わう街の中で、一瞬にして凄惨な悲鳴とその後の静寂が訪れた。私はその場に居合わせ、思わずシャッターを切った。異様な光景がレンズに映る。何かが、ただの事故ではないと私の直感が告げていた。

 建設現場に残された痕跡を追ううちに、私は謎めいた男性と出会った。彼の名前はヤナギという。話しかけると、彼は不思議な微笑みを浮かべていた。

「この事故の背後には、ある大きな秘密が隠されている」

 彼は言った。その言葉に、私の好奇心はさらに膨らんだ。

 翌日、ヤナギと約束をして共に現場を再訪した。クレーンの倒れた場所には、不可解なシンボルが刻まれていた。それは、まるで異次元の扉を開く鍵のように見えた。ヤナギはそのシンボルを見つめながら、低くつぶやいた。

「これは、私たちの世界と別の世界をつなぐものだ」

 その言葉に、私の心はざわめいた。別の世界。そんなことが本当にあるのだろうか。しかし、ヤナギの真剣な表情を見ていると、彼の言葉をただの幻想とは思えなかった。

 次の日、私は一人で現場に向かった。ヤナギが言っていたシンボルの場所に立つと、不思議な感覚が私を包み込んだ。目の前の景色がゆがみ、意識が遠のいた次の瞬間、私は見知らぬ場所に立っていた。そこには、高層ビルやクレーンが立ち並ぶ風景が広がっていたが、どこか異質な感じがした。

 その世界は、全てが夢のようだった。人々は無表情で、機械のように動いていた。私は恐怖と好奇心に駆られながら、元の世界に戻る方法を探した。再びシンボルの場所に立ち戻ると、ヤナギがそこにいた。彼は驚いた表情を浮かべてとつぶやいた。

「戻って来られたのか」

 私は戻れたことに安堵しながらも、この経験が何を意味するのか理解できなかった。しかし、ヤナギは続けた。

「君が見た世界は、我々の未来かもしれない。クレーンの事故は、その世界への入口を開くためのものだったのだ」

 その言葉に、私は驚愕し足が震えた。この事故は単なる偶然ではなく、計画されたものだった。そして、その背後には、私たちの知らない大きな力が働いているのだと。

 東京に戻った後も、あの出来事は私の頭から離れなかった。私はあの世界のことを考え続け、再びその場所に戻る決意を固めた。なぜなら、あの世界には私たちの未来が隠されているかもしれないからだ。


 この短い旅で、私は一つの決意をした。未来の謎を解くために、もう一度あの世界に足を踏み入れよう。自分に何ができるかは分からないが、真実を突き止めるのだ。

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