湧澄嶺衣
去年の春、私は都心から離れ、小さな町を訪れた。趣味の写真撮影を楽しむために、風光明媚な場所を探していたのだ。 カメラを手に、静かな町を歩いていると、黒装束をまとった一人の男が目に入った。普通の人間にしか見えないが、何かが異質だった。 その男は、日陰を選んで歩いているように見えた。興味をそそられ、私は彼を追うことにした。男は古びた教会の前で立ち止まり、中へと消えていった。私は好奇心に駆られ、後を追って教会の中に入った。 教会の中は薄暗く、静寂に包まれていた。祭壇の
去年の夏、私は旅先で奇妙な出来事に遭遇した。都心の喧騒から離れ、静かな田舎町に足を伸ばしたのだ。カメラ片手に風景を撮影していると、『立入禁止』の看板を見つけた。 その看板の向こうには、荒れ果てた墓地が広がっていた。不思議なことに、そこには誰もいないのに、まるで生き物がいるかのような気配を感じた。私は好奇心に駆られ、看板を無視してその先へと足を進めた。 墓地の奥へ進むと、突如として冷たい風が吹き、鳥肌が立った。ふと足元を見ると、古びた墓石に『屍人』と刻まれていた。それ
去年の、夏の日差しが眩しい午後のことだった。平凡な日常が一変する、あの出来事が始まったのは。都心の自宅から離れ、旅先の静かな村に足を運んだ私は、そこで予想もしなかった不思議な体験に巻き込まれることになる。 村の奥に存在する『制限区域』という看板が立つ場所が私の好奇心を刺激した。幼いころからミステリー小説に魅せられていた私は、その先に何があるのか、知りたくてたまらなくなった。夜が更け、人影の少なくなった頃に、その制限区域へ足を踏み入れた。 そこには、かつて政府が極秘に
共存への道 学会での発表を終えてから数週間が経った。私の報告は大きな反響を呼び、多くの人々がレプタリアンの存在に興味を示した。しかし、同時に懐疑的な声も多く上がり、真実を公にすることの困難さを痛感した。 そんなある日、私は再び手紙を受け取った。今回は『対話の場を設ける』とだけ書かれていた。手紙には指定された日時と場所が記されており、私はその指示に従うことにした。 その夜、指定された場所に到着すると、見知らぬ建物が目の前に現れた。建物の中に入ると、広い会議室があり、
去年の夏、私は旅先で不思議な出来事に遭遇した。舞台は市街地から少し離れた小さな田舎町。写真を撮ることが趣味の私は、カメラを片手にその町の風景を撮影していた。静かで平和な場所だったが、その日は何か特別なことが起きる予感がしていた。 バスを降りて町を歩き始めたとき、私の目に飛び込んできたのは、古びた電信柱の影に隠れるように立っていた小さな存在だった。一瞬、それが何なのか理解できなかった。電信柱の影にぼんやりと見えるその姿は、まるで小さな……おじさん?そんな馬鹿な、と思いつつ
見逃された真実 手紙の一文『あなたは見逃していた』が、私の心にずっと引っかかっていた。学会での発表以来、私の日常は一変した。誰かに見張られているような感覚が付きまとい、常に緊張を感じていた。しかし、それでも私は真実を追求することをやめなかった。 手紙が届いてから数日後、再び遺跡を訪れる決意を固めた。今回もカメラやノートを持ち、さらに懐中電灯や食料も準備した。遺跡にはまだ何かが隠されているに違いない。私はそう確信していた。 あの丘に到着すると、前回と同じように遺跡の
去年の夏、私は不思議な体験をした。その時の記憶は今も鮮明に残っている。 日常の喧騒から逃れるため、私は旅に出ることにした。行き先は、人里離れた山奥の小さな村。都心部の喧騒とは対照的な静寂が広がるその場所で、私は自分の好きな読書をしたり写真の撮影を楽しむつもりだった。 その村には、古くからの伝承がある森があった。地元の人々はその森を『禁じられた森』と呼び、決して近づかないようにしていた。しかし、好奇心旺盛な私にとって、その禁じられた森は魅力的な森でしかなかった。
痕跡を追う、はじまりの旅 去年の夏、考古学研究員をしている私の好奇心が、一つの謎を追い求めるきっかけとなった。その日は特に暑く、都心の喧騒から逃れようと、少し遠出することに決めた。旅先の観光名所らしきものもない田舎町には、古びた遺跡があると聞いていた。好奇心に駆られ、カメラを片手にその地へと向かった。 その遺跡は、田んぼに囲まれた小高い丘の上にあった。遠くから見ると、ただの石の塊のようだったが、近づくにつれその異様さに気づいた。石の表面には見たこともない模様が彫られて
あの日、私は普段とは違う旅先で一人、県境の街を歩いていた。都心での平凡な日常から少し離れて、自分の好奇心を満たすための短い旅行だった。私は古い鉄道の無人駅近くの踏切の前に立ち止まり、カメラを構えていた。遮断機が下りて、遠くから汽笛が聞こえてくる。汽笛の音が静かに街を包む中、私はふとその先に何があるのか知りたくなった。 遮断機が上がるのを待ち、列車が去った後の線路を越えると、異世界に迷い込んだような感覚に襲われた。タイヤ痕が続く道をたどり、知らない街の風景に目を奪われた。
私は平凡な日常を愛していた。都内の静かなアパートでの生活は、読書や謎解き、写真撮影に没頭するには最適な場所だった。特に好きだったのはミステリー小説で、ページをめくるたびに謎が解けていく快感がたまらなかった。 そんなある日、私は行きつけの古本屋で一冊の古い本を手に入れた。表紙は擦り切れていたが、その中には未だ見ぬ世界が詰まっているような気がした。その本には、『機械人間・枝・変化』といった不思議に思えたキーワードが散りばめられていた。 好奇心が抑えきれず、本を手に取った
去年の春、私は一人旅に出た。行き先は、東京から少し離れた小さな町。この町には、昔から奇妙な噂が絶えない公園があった。その公園の名前は『静寂の園』と言った。私の好奇心は、その不思議で不気味な名前に引き寄せられ、一人調査を決意した。 町に到着し、早速静寂の園を訪れた。広い芝生が広がり、花々が咲き乱れていた。平日の昼下がり、人影はほとんど見当たらない。空は青く澄み渡り、鳥のさえずりが響いている。だが、その美しさの中にどこか異質なものを感じた。 公園の奥に進むと、古いベンチ
ふと走行中の電車の窓から外の景色に目をやると、いつもの街並みが不気味に歪んで見えた。今日は一段と疲れているのかしら。私はぼんやりとしたまま、通学鞄を膝に乗せて窓の外を眺め続けた。 次の駅に到着し、ドアが開くと同時に乗り込んできたのは、どこか異様な雰囲気を持つ男性だった。スーツ姿だが、明らかにこの世のものではないような気配を漂わせている。彼が私の前の座席に腰を下ろした瞬間、車内の温度が急激に下がったように感じた。 「寒くない?」 隣に座っていたクラスメイトの美奈が、
第一章 忘れられた図書館 去年の夏、私は東京の喧騒を離れて、小さな田舎町に足を運んだ。その町には不思議な噂があった。町外れにある古びた図書館には、『空と空をつなぐ道』と呼ばれる古代の道具が隠されているという。少し変わっているかもしれないが、世界に散らばる古代文字の解読が趣味の私は、遺跡や遺物が大好物だ。さっそく私はその話に興味を引かれ、図書館を訪れることにした。 図書館は静かで、ほこりっぽい空気が漂っていた。そこにいるのは私だけのように思えたが、奥の方から小さな物音が聞
去年の夏、私は東京を離れ、とある温泉地への一人旅を決めた。日常の喧騒から逃れ、静かな時間を過ごすためだった。急行列車に揺られながら、車窓から見える風景は次第に都市の喧騒から緑豊かな山間へと変わっていった。 その温泉地には、秘湯と呼ばれる特別な温泉があり、露天風呂からは壮大な山々が一望できると聞いていた。到着した日は快晴で、澄んだ青空と緑のコントラストが美しかった。宿に荷物を置くと、早速その秘湯へと足を運んだ。 湯船に浸かりながら目を閉じると、日常の喧騒が遠く感じられ
私は普通の少女だ。ミステリー小説を読むのが好きで、休みの日にはカメラを片手に地元の都心部を歩き回る。パン屋の前を通ると、焼きたての香ばしい匂いに引き寄せられる。日常は平穏そのもので、特に変わったことはない。 しかし、去年の夏休み、私は思いがけない冒険に巻き込まれた。 ある日、森の中で一枚の手紙を見つけた。手作りの木製のポストに入っていたその手紙には、古めかしいインクで書かれた招待状が入っていた。『森の奥深くへ来てください』とだけ書かれていた。好奇心旺盛な私は、すぐに
今年の旅先で、私は思いがけない体験をすることとなった。早朝の澄んだ空気の中、誰もいない静かな浜辺を歩いていた。冷たく清々しい風が私の髪を撫で、遠くから聞こえる波の音が心地よいリズムを奏でる。何気なく見下ろした砂浜には、妙な痕跡が続いていた。 その痕跡は、人間の足跡とは異なり、円形の凹みが一定の間隔で続いている。まるで誰かが大きな円柱を転がしたかのような痕跡だった。不思議に思い、その先を追いかけてみることにした。 痕跡を辿っていくと、やがて浜辺から森の中へと続いていっ