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立入禁止区域の秘密

 去年の夏、私は旅先で奇妙な出来事に遭遇した。都心の喧騒から離れ、静かな田舎町に足を伸ばしたのだ。カメラ片手に風景を撮影していると、『立入禁止』の看板を見つけた。

 その看板の向こうには、荒れ果てた墓地が広がっていた。不思議なことに、そこには誰もいないのに、まるで生き物がいるかのような気配を感じた。私は好奇心に駆られ、看板を無視してその先へと足を進めた。

 墓地の奥へ進むと、突如として冷たい風が吹き、鳥肌が立った。ふと足元を見ると、古びた墓石に『屍人』と刻まれていた。それは一体何を意味するのか、私は思案に暮れた。

 そのとき、不意に背後から声が聞こえた。

「なぜここに来たのか?」

 振り返ると、薄暗い影の中に人影が浮かんでいた。驚きながらも、私は答えた。

「ただの好奇心です。あなたは?」

 その人物は答えずに、私に一冊の古びた書物を差し出した。

「この書を読むことで、真実が見えるだろう」

 その瞬間、彼の姿は消え、私は一人残された。書物を手に取ると、それには古代文字で何かが書かれていた。

 書物を開くと、不思議な力が私を包み込み、意識が薄れていった。目を覚ますと、見知らぬ場所に立っていた。そこは非日常的な風景で、空には二つの月が輝いていた。

 私はその異世界を歩き回り、様々な不思議な生物と出会った。彼らは『屍人』と呼ばれる存在で、古代からの秘密を守り続けているという。彼らの一員になれば、永遠に生き続けることができると聞かされたが、私は断った。

 再び現実に戻る方法を探しながら、私は次第にこの世界の謎を解き明かしていった。そして、ついに帰る方法を見つけた。私は書物を再び開き、現実世界に戻ると、そこには変わらぬ日常が待っていた。

 しかし、あの体験が現実だったのか、夢だったのかはわからない。ただ一つ確かなのは、私はもう一度、あの『立入禁止』の場所へ戻ることを誓った。なぜなら、あの異世界で得たものは何かを知りたかったからだ。


 そして、今もその謎を解き明かすために旅を続けている。

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