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白骨公園

 去年の春、私は一人旅に出た。行き先は、東京から少し離れた小さな町。この町には、昔から奇妙な噂が絶えない公園があった。その公園の名前は『静寂の園』と言った。私の好奇心は、その不思議で不気味な名前に引き寄せられ、一人調査を決意した。

 町に到着し、早速静寂の園を訪れた。広い芝生が広がり、花々が咲き乱れていた。平日の昼下がり、人影はほとんど見当たらない。空は青く澄み渡り、鳥のさえずりが響いている。だが、その美しさの中にどこか異質なものを感じた。

 公園の奥に進むと、古いベンチが見えてきた。その近くには、子供が遊ぶためのボールがぽつんと転がっていた。不意に、背筋に冷たいものが走る。ボールの近くには、乾いた土に残る奇妙な足跡があったのだ。子供の足跡と大人の足跡が混ざり合っている。

 気になって、足跡を辿ることにした。芝生の中を進むと、やがて森の中の木々が密集する場所にたどり着いた。薄暗い森の中で、何かが私を呼んでいるような気がした。心臓が高鳴り、恐怖と興奮が入り混じる。

 そのとき、不意に地面が揺れ、私は何かに足を取られて倒れ込んだ。見ると、地面から白骨が露出しているのだ。驚きと恐怖で体が凍りついた。声も出なかった。だが、その白骨のそばには、小さな鍵が落ちていた。拾い上げ、辺りを見回すと、少し離れたところに古びた小屋が見えた。

 小屋に向かい、その鍵を試してみると、扉は簡単に開いた。中には古い日記が残されており、ページをめくると、一人の少女の手記が記されていた。彼女は、ある日忽然と姿を消した兄を探していたのだ。その日記には、公園の秘密と、その背後に隠された恐ろしい実験の真実が記されていた。

 その実験とは、人間の魂をボール状の玉に封じ込めるというものだった。失敗作は白骨となり、成功した魂は公園のあちこちに隠されている。その事実に、私は身震いした。ふと、日記の最後に、鍵のもう一つの使い道が書かれているのに気づいた。公園の奥深く、芝生の下には秘密の地下室があると。

 私は、恐怖を感じつつも、その地下室へ向かう決意をした。芝生を探し回ると、やがて鉄の扉らしきものが現れた。鍵を差し込むと、扉は重々しく開いた。中へ降りてみると、一つの部屋があった。その部屋には無数のボールが並んでいた。その一つ一つが、かつての人間の魂ご封じ込められているということなのか?

 驚愕と悲しみで胸がいっぱいになったが、そのとき、ふと一つのボールが光を放った。近づいてみると、それは行方不明になっていた少女の兄の魂だった。彼の魂は、私に感謝の意を示し、最後に私にこう告げた。

「真実を明かしてくれ」

 私は、事実を知った今、この町を離れることを決意した。公園の秘密を暴き、これ以上の犠牲者を出さないために。静寂の園は、もう静寂ではない。私の心には、兄妹の絆とその悲しい結末が深く刻まれたのだ。

 旅を終え、再び日常に戻った私は、あの公園での出来事を決して忘れないだろう。全てを語ることはできないが、あのボールの中に封じ込められた魂たちのために、私は真実を明かす使命を果たさねばならないと決意した。

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