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「夫は若くして亡くなったという」メリー

私がお掃除のアルバイトで行くクライアントに104歳のカナダ人女性メリーがいます。彼女は現在シニア向けサービス付き自立型アパートでゆったりと独り暮らしをしています。

アパート内にはリクレーションルーム、スポーツジムやダイニング(レストラン)もあるので入居者は自由に利用することが可能ですが、

メリーの場合、さすがに歩くのは大変そうで、アクティビティに参加したり、ダイニングに行って食事することは珍しく、食事もほとんどルームサービスを利用して自室で食べています。

104歳と聞くとベットに寝ているだけかと思いそうですが、メリーは自分で部屋を片づけていて、朝からちゃんと身支度をして本を読んでいることが多いのです。もちろん会話も普通です。

見た目もフアフアの白髪が上品で表情もとってもかわいい。

紙オムツも使っていないんです。
入れ歯ケースも部屋に見当たらないので

「メリーは入れ歯してないの?」

と聞くと

「してるわよ。」

と答えました。

「だって入れ歯のケースがベットまわりにも洗面所にもないし」

と言うと

「片づけてるから」

ということでした。

メリーのように90代以上でも素敵に年を取っている女性は、部屋が片付いている人が多いです。
自分なりに気持ちよく暮すためと自分のできることは自分でする姿勢なのです。そしてモノが多すぎない。

片づけや身の回りのことは健康で、体力と気力がないとできませんし、必要に応じて他人の助けも借りることができることも条件かもしれません。

ちなみに男性の場合、軍経験のある独身高齢シニアも部屋が片付いている人が多いですよ。部屋がスッキリしてるだけで私の好感度爆上がりです。

さて、そんなメリーにご主人のことを聞いてみました。

「夫はね、若くして亡くなったのよ。」

「えっ、若くしてっていくつで亡くなったの?」

と聞くと

「50歳よ。夫が亡くなってから私はずっと独身。
仕事が忙しかったしね。」

「その後、再婚しなかったの?
今なら離婚してもすぐ再婚したり、ボーイフレンドをすぐ作る人多いけど」

「私は男性は一人で十分よ」

と言って笑ってました。
私も思わず笑ってしまいました。
同感だから。私も新たな男性と親密に付合うのは面倒臭い。

これまで多くの”絶対、精神的に(経済的にも)一人で生きられない。(生きる自信がない)生きたくない。”と言って、離婚したらすぐに次の素敵なパートナー男性を見つける女性を見てきました。カナダでは自然なぐらいですが、私はどっちかというと気分はメリータイプ。

と言っても、実際に離婚や死別をしたらその孤独感や不安感で、焦ってパートナーを見つけようとするのかな?

それにしても夫が50歳で亡くなって、
その後さらに50年を独身で生きてきたメリー。

104歳の重さを感じます。夫の人生を2回生きたのと同じ。

メリーが愛した夫はメリーの人生の半分しか生きられなかったわけだから、
「50歳で若くしてなくなった」のもその通り。平均寿命も延びているしね。

「メリーのように元気で長生きできたら、幸せだよね。」

と言ったらメリーが

「私の人生も up-and-down がいろいろあったのよ。」

と言います。

そりゃ、そうだよね。

それだけ生きるにはどれだけの体力、気力が必要か?と思うよ、メリー。
そして運を味方につけられなかったら、できないよね。

モーツアルトなんて運がなくて35歳で亡くなっちゃったよ。

最近、人生が短いか長いかって、身長が低いか高いかのように個性なんだなぁ、って思う。

私もなんとかここまで生きてこれて感謝しています。
死ぬときに「私の人生もいろいろあったけど案外楽しかった。ここまで生きてこれてよかった」と思って死ねたらいいな。

生きていると面倒臭いこともたくさんあるけど、ささやかな楽しいこともたくさんあるよね。

さて、私も面倒臭い税金の申告をまずやっつけちゃおうかな。


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