ハレの国おかやま

①岡山県立中高一貫校、適性検査に向けた受験対策 ②SDGsの4番目のゴール「質の高い教…

ハレの国おかやま

①岡山県立中高一貫校、適性検査に向けた受験対策 ②SDGsの4番目のゴール「質の高い教育」を岡山で ③岡山の季節の移り変わりを「#エッセイ」に

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最近の記事

東京都同情塔

 今年の芥川賞に九段理江さんの「東京都同情塔」が選ばれた。「トーキョートドージョートー」という言葉の響き、きれいな韻を踏んでいていいね。  芥川賞とは、新進作家による純文学の中から優秀な作品に贈られるものである。純文学のことはよくわからないけれど、素晴らしい作品であることは間違いなさそうだ。ビビッときて発表の翌日には図書館で借りて読んだ。  建築の側面からも読み応えがある小説で、三島由紀夫の「金閣寺」の一節に触れるところも良かった。九段さんの受賞インタビューで、建築小説として

    • 雪花が散る

       「雪花が散る」。岡山に越してきて初めての冬、耳にしたこの言葉が今でも心に残っている。この地域の方言なのかどうか定かではないが、以前住んでいた街では使われることはなかった。  雪の降る様子を花が舞い散る姿にたとえ、先人たちは「ゆきばな」と表現し、長いこと言い伝えられた言葉なのだろう。  天気予報によると、その日は強い寒気が中国地方の上空を覆い、最低気温は氷点下3度、晴れ。青空が広がる冬の朝、肌を刺すような風が吹いている。風の匂い、強さからして、なんとなく雪が降りそうな気配がす

      • 島崎藤村「破戒」

         島崎藤村の代表作「破戒」を鑑賞する機会があった。藤村の生誕150年に当たる昨年、60年ぶりに新たに映画化されたものである。破戒は近代文学の黎明期の作品だと、学生の頃に教わった気がする。  明治維新が起きると、人々は職業選択の自由を得た。身分を超えた恋愛も可能となった。しかし実社会において、差別や偏見はどうだったのか。藤村は文学の手法を用い、青年教師の生きる苦悩を余すところなく描いている。  心に残った映画のシーンは、青年が恋人のお志保と出会う場面。部屋に置き忘れた「みだれ髪

        • クイーンニーナ

           クイーンニーナという品種のブドウに出会ったのは、5年ほど前のこと。「いい香りがして、うまいんだよ」と生産者が太鼓判を押します。一口いただいてみると、ほっぺが落ちそうな感じです。珍しさもあり、その名前と味をすぐに覚えることができました。  仕事の関係で、彼のブドウ畑に足を運ぶ機会がありました。空色のヘルメットをかぶり作業に励み、下草を生やさないよう、丁寧に圃場を管理しているのがとても印象的でした。接ぎ木のこと、種を除くジベレリン処理のこと、そして摘粒のこと。いくつもの行程を熱

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        • 和気町研究室
          5本
        • エッセイ
          7本
        • SDGs(持続可能な開発目標)
          4本

        記事

          ゆきあいの空

          「釣りに行こう」と息子に誘われ、小さな漁港に行きました。小学生の頃、よくハゼ釣りをしていた穴場です。波止場で釣り糸を垂らしていると、海風が潮の香りを運んでくれます。釣り竿からは、ぴくぴくと心地よい振動が伝わります。  海の沖では、もくもくと入道雲が浮かんでいます。トンビの声が聞こえる山の方向を眺めていると、たなびく秋のうろこ雲。季節の違う雲が、同時に現れることがあるのだろうか。不思議に思い、調べてみることにしました。  入道雲とうろこ雲が一緒になって、空に現れていることを「ゆ

          サギソウの開花

           白く美しい花を咲かせることに成功しました。そよ風にたゆたうサギソウの花。それはとても可愛いらしく、飽きることなく眺めていられます。  昨夏の終わりに、偶然この花を頂いたことが育てるきっかけとなりました。「水を切らさないように」というアドバイスをもらい、秋から冬にかけて注意深く水やりを続けたのです。すると、親株から新しい球根を増やすことができました。  春になり、土の中から小さな芽がぴょこぴょこと顔を出しました。やがて葉っぱは成長し、空に向かって両腕を広げます。「僕たちはここ

          筋肉関ヶ原

          休日の午後、テレビを見ながらストレッチをしていると、ある番組が目にとまった。その名も筋肉関ヶ原。「いつの時代も筋肉は裏切らない」と合戦の地で筋トレを紹介するものだ。  知人の勧めで、3月から下半身強化のためスクワットを始めていた。さらに背筋を鍛えるいい運動がないかなあ、と思いあぐねていたところ、期せずしてこの筋トレ番組に出会った。椅子に浅く座り背中を丸めながら前屈し、顔をあげて背中を反らす。さっそくリビングの椅子を使ってやってみた。  番組では背筋のほかにも、腹筋や上半身を鍛

          水防訓練

          5月下旬、吉井川河川敷で総合水防演習が実施され、スタッフの一員として参加しました。2018年7月の西日本豪雨の時には、職場のある吉井川流域でも避難所が開設され、集落に隣接する堤防すれすれのところまで水位が上昇し、危険を感じたのを覚えています。  水害時において、地元消防団には排水作業や復旧作業など、多大なるご尽力をいただいております。水防演習当日も、河川水位が上昇するという想定で、消防団員は河川氾濫を食い止めるため、各種工法訓練を実施しました。  また、今回の演習では、地元の

          話し方上達のため

          1年の四半期ごとに訪れる、人前でのスピーチが目下の悩みだ。「聞き手の反応を見ながら、話し方を工夫する」と教則本には書かれている。いざ実践してみると、なかなかもって難しい。 出番の前には、心臓のばくばく音までマイクに拾われるのではないかと不安になる。強調したい大切な部分を大きな声で説明しようとすると、声が裏返る。まさにアドレナリン全開の臨戦態勢だ。 視線を聴衆に向けて語りかけた後、原稿に目を落とすと一瞬ピントが合わない。いよいよ年をとった。次の瞬間、説明していた箇所を見失い、同

          話し方上達のため

          防衛費増額

           防衛費増額については、本国会において大きな課題として議論されています。特に衆議院予算委員会では、野田佳彦元首相や石破茂元防衛相らが、政府の見解を求める姿勢には迫力を感じました。  野田元首相は、防衛費増額の財源を東日本大震災の復興特別所得税の一部転用で賄う岸田政権の方針に対し、直球勝負で詰め寄る姿勢が表れていました。また、石破元防衛相においては、敵基地攻撃能力保有で強化される日本の抑止力について、持論の防衛に対する熱弁からも、並々ならぬ安保外交への思いを感じ取ることができま

          サギソウの新芽楽しみに花育

           サギソウの親株を去年の夏の終わりにもらった。花が咲き終わった後も水やりを続ければ、次の年も球根が増えると聞いたのでやってみた。新芽が出る前の1月の終わり、恐る恐る鉢を掘り返してみた。  「あった!」。土の中をピンセットで丁寧にほじくると、明らかに土の塊とは違う白いちっちゃな球根が出てきた。幼稚園の芋ほりで、シャベルで掘り当てた時と同じワクワク感がよみがえってきた。  サギソウの花が枯れた後、水やりをしていた時期は、本当にうまく球根が育っているのだろうか、と心配だった。でも残

          サギソウの新芽楽しみに花育

          成人式

           娘は来年、成人式を迎えます。節目に着物を着たいと彼女自身で決めました。若葉から青葉へと移り変わる6月に生まれた娘は、深みある緑色の振り袖を選びました。  前撮りは家族で一緒に行きました。普段は面倒くさがり屋の娘ですが、長時間の気着けと写真撮影をずっとニコニコして楽しんでいました。娘にとって着物は、七五三のお宮参り以来です。何重にも重ねて着付けしてもらい、小物や飾りを合わせる度に、鏡に映る自分の姿に驚きと喜びの表情を見せてくれました。  着物は日本人にとっての伝統的な衣装です

          子どもたちに夢を

           今年、サッカーJ2のファジアーノ岡山は、選手たちの躍動が素晴らしかったです。リーグ戦は3位で、最高のシーズンを終えることができました。  私は、息子がサッカースクールに入ったことをきっかけに、ファジアーノのファンになりました。息子は小学1年から5年までサッカーに励んでいました。夏の炎天下も、凍えるような冬の日も練習や試合に付き添い、応援していた日々は、中学生になった息子との大切な思い出です。  昨年はコロナ禍でファジアーノの試合観戦は少なかったけれど、今年はコロナ対策を万全

          子どもたちに夢を

          うろこ雲

           朝の通勤途中、空を見上げると、うろこ雲が浮かんでいた。まるでレースのカーテンのように空一面に広がっている。それも幾何学模様の規則正しい美しさを保ったまま。  よくよく見ると、羊たちが群れをなして前進しているようでもある。羊のお尻のラインを想像すると、なんとも愛らしい雲たちだ。前日まで気持ちのいい秋晴れのもと、雲一つない青空が続いていたので、余計にその日の朝の雲は新鮮な感じがした。  その雲の写真をスマホで撮り、通勤電車の中でネット検索し、うろこ雲であることを確認した。何事も

          サギソウ

           かわいらしい花を思いがけず目にした。鑑賞用の鉢に植えられた小さな花。遠い昔、小学生だった頃、その花が庭先に咲いていたのを、ふと思い出した。「きれいだろう、シラサギが飛んでいるみたいで」と当時父親に教えてもらった。今でもその花の美しさ、その言葉を鮮明に覚えている。  今、わが家の周りには、田んぼや用水路も多く、餌を求めてシラサギが訪れているのを時折見かける。人影に気付くと、サギは大空に悠々と羽ばたいてゆく。美しく羽をのばした姿。それは子どもの頃に見た、風に揺れるその花びらと重

          伊勢物語

           読書感想文の課題に、この夏は中一の息子と一緒に挑戦してみた。彼が選んだのはクールジャパンを題材としたもの。私はどこかへ提出するわけではないが、お互い日本文化がテーマになるよう思い切って「伊勢物語」を選択した。  「からごろも」「几帳ごし」、そして「ちはやぶる」など、みやびな言葉の響きがすごくいい。言葉を追うだけで、平安時代へとタイムスリップさせてくれる。唐衣を着たお姫さまが、几帳ごしに男の人とデートをしている。この美しい挿絵が、古典の教科書に載っていたのが、遠い記憶としてよ