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ゆきあいの空

「釣りに行こう」と息子に誘われ、小さな漁港に行きました。小学生の頃、よくハゼ釣りをしていた穴場です。波止場で釣り糸を垂らしていると、海風が潮の香りを運んでくれます。釣り竿からは、ぴくぴくと心地よい振動が伝わります。
 海の沖では、もくもくと入道雲が浮かんでいます。トンビの声が聞こえる山の方向を眺めていると、たなびく秋のうろこ雲。季節の違う雲が、同時に現れることがあるのだろうか。不思議に思い、調べてみることにしました。
 入道雲とうろこ雲が一緒になって、空に現れていることを「ゆきあいの空」というそうです。きれいな響きの言葉であり、美しい日本語ですね。空の上では、夏と秋の季節が行き交っているのでしょう。波止場では焼けるような日差しですが時折、涼風が吹き抜けます。
 その日の釣果は、2人でハゼ30匹とイイダコ2匹。行楽の秋を十分満喫できました。でももっとうれしかったのは、ゆきあいの空に出会えたことでした。

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